クーデター、裏切り、密告……「ぺんてる」の仁義なき戦い

「サインペン」でお馴染みの筆記具のぺんてる株をめぐり、総合文具最大手のコクヨと2位のプラスが争奪戦を繰り広げている。
なぜ、コクヨは、連結売上400億円ほどのぺんてるに触手を伸ばしたのか。
「コクヨは連結売上高3151億円を誇るが、国内市場が縮小する中、海外の売上比率は7%。約120カ国で展開し、海外売上が66%でブランド力や販路を持つぺんてるは、魅力的なのです」(エコノミスト)
ことの発端は、ぺんてるのお家騒動にあった。
2012年5月の取締役会で、当時42歳で創業家出身の堀江圭馬社長は、62歳以上の役員の退任を求めたが、逆に業績不振を理由に緊急解任動議を可決され、代表権を返上した。
「創業家を追放したクーデターを主導したのが、当時常務で社長に昇格した和田優氏です」(メガバンク幹部)
和田氏は1976年に早大理工学部を卒業して入社した。吉川工場でシャーペンの替え芯の製造に携わり、39歳で工場長に、08年に常務取締役生産本部長に就任した。
「和田氏は現場に精通し、人心掌握に長けていると言われる人物。高校時代は剣道部で鳴らし、社長就任後も『心も体も姿勢が大事』と話しています」(同前)
一方、創業家の堀江氏も黙っていなかった。社長復帰を目指し約37%を保有する筆頭株主として活動。だが、支持が集まらず昨年、保有株を投資ファンドのマーキュリアインベストメントに1株2000円で売却した。

非上場のぺんてる株は取締役会の承認なしには譲渡できない。そこで、和田社長らはマーキュリアの保有株を、プラスなどへ分割譲渡することを希望していた。
「和田社長らは6年前からプラスと協議し、商品の共同開発をしてきた。しかし、ぺんてるが示したプラスへの売却価格は堀江氏から買収した価格より低く、マーキュリアがしぶった」(同前)
その間隙を縫ったのがコクヨだった。今年5月、マーキュリアがぺんてる株保有のために設立した投資組合に101億円を出資(1株あたり3000円)し、事実上、筆頭株主に。
コクヨの出資に和田社長は「青天の霹靂だ」と強く反発、水面下でプラスと提携交渉を進めてきた。だが、この動きを密告で知ったコクヨの黒田英邦社長は「裏切り行為だ」と、敵対的TOBによる子会社化を目指す強硬策に打って出た。
対する和田社長は、TOBに対抗する白馬の騎士(ホワイトナイト)としてプラスを引き入れた。
「ぺんてるはコクヨに対抗するため、キングジムなどと組む話も出ています」(同前)
もう一波乱あるだろう。
(森岡 英樹/週刊文春 2019年12月5日号)