コメ価格急騰? 全国で種子条例急増の裏側

全国で「種子条例」を制定する動きが進んでいる。コメ、麦、大豆といった主要農作物について、県などが品質の確保に努め、安定的な供給を行うために取り組む内容を定めるなどした条例だ。すでに13道県が制定済みで、今後も増える見通しという。なぜいま種子条例なのか。そこには法律の廃止と、農家ら関係者の危機感があった。
規制緩和きっかけ
もともとわが国にはコメ、麦、大豆などの優良種子の生産、農家への安定供給を都道府県に義務づけた主要農産物種子法(種子法)があった。同法は戦後の食糧難を経て、国民の食の安定供給を目指し、昭和27年に制定。都道府県に対してコメ、麦、大豆の主要農作物の種子の生産、普及を義務づける内容が盛り込まれていたが、品種開発や種子生産を行う県立の「農業試験場」に予算をつけるための法的根拠だった。
これにより、農業試験場で生産された優良な品種の種子は指定の生産者(種苗農家)が増やし、一般の農家で栽培する流れが形成された。
だが、この種子法が昨年4月に廃止されたのだ。
種子の生産コストが税金でまかなわれていては競争条件の不平等を招き、民間の品種開発意欲を阻害する-。こうした考えからの規制改革の一環で、主に品種開発の分野に民間の新規参入をうながすことがねらいだった。
地域色豊かな条例
しかし、行政の関与が薄まることによる種子の供給不安の懸念が生じ、農家を中心に条例制定を求める声が上がった。
そこで種子法廃止直前の昨年3月、全国で先駆けて埼玉、新潟、兵庫の3県が独自に種子条例を制定し、種子法廃止と同時の4月に施行された。今年は長野、北海道などが続き、制定済みの道県は13に上る。
こうした条例は都道府県が制定するものだけに、各地の色合いが出る。たとえば長野県の条例では対象の農作物として、コメ、麦、大豆に加え、特産品のソバと「信州の伝統野菜」76種類を加えた。同じように北海道は小豆、エンドウ、インゲン、ソバを追加した。条例は地域ごとに育ちやすい作物を取り入れた、独自色のあるものとなった。
一方、条例化に慎重な自治体もある。
江戸時代以来、各地に用水路が広がる中国地方最大の“農業県”岡山。独自の「要綱」を制定して対応しており、「関連予算は種子法廃止前と同じ水準で確保できている。条例を作る予定はない」(同県農産課)と言い切る。また、条例をつくるとせっかく種子法を廃止して目指した民間参入が滞る可能性を懸念する声もある。
「農作物が高騰」懸念
ただ、関係者の心配はつきない。同県瀬戸内市議会、吉備中央町議会は今年、相次いで条例制定を求める意見書を県知事あてに提出した。瀬戸内市議会は「種子を民間に委ねた場合、改良された新品種に特許が利用され、農家が高い種子を買わされる。農産物の価格にも跳ね返る」などと、将来のトラブルへの懸念を指摘する。
岡山県の販売農家の数は5年間に1万戸のペースで減少しており、平成27年現在で3万6千弱。従事者の8割が65%を超え、休耕田は増加している。
条例制定を求めている地元議員らの団体は「食に関わる重大な影響が今後出てくる恐れがある。種子法廃止や種子条例の認知度はまだ低く、関心を深めていきたい」としている。