【溝口敦】神戸山口組幹部「ライフル惨殺事件」で見えた高山若頭「3つの戦略」 「カネより暴力」の論理

神戸山口組の幹部だった古川組・古川恵一組長が、六代目山口組の若頭補佐、竹中組・安東美樹組長系の元組員に自動小銃で射殺された事件で、六代目山口組・高山清司若頭が今後、分裂抗争にどう臨むか、おおよそ方向性を掴めた気がする。
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すなわち高山若頭は、自分が服役してすぐ蠢き始めた神戸山口組の分裂劇は、自分が若頭として続けた恐怖政治のせい、などとまるで考えていない。自己責任などあり得ないのだ。
そうではなく、むしろ神戸山口組の策動を事前に見抜けなかった若頭補佐クラスの情報収集の甘さや愚かさ、分裂後の対処の生ぬるさを責めたい。それが今日の混乱をもたらしたのだ–。
こうした考えで、まず11月、橋本弘文統括委員長を引退に追い込み、極心連合会を解散させた。また江口健治・若頭補佐を大阪北ブロック長から外し、自らの舎弟とした。格下げである。
二人とももとをただせば山健組の出身であり、阪神地域を地盤にしている。にもかかわらず、自分が服役している間の働きが悪かったからというのがホンネの理由だろう。
しかるべき役職にある者は高山若頭の在、不在に関わらず、必死になって職責を果たさなければならない。安東美樹組長は自分の出所後にはなったが、とにかく敵幹部のタマを挙げた。合格である。
安東組長と同じ理由で、これから早急に活躍しなければならない若頭補佐は倉本組・津田力組長、清水一家・高木康男総長あたりだろう。彼らは今後「経済」もそうだが、とりわけ「荒事」で働きを見せなければならない。
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また今回、直参に抜擢した兼一会・植野雄仁会長、杉本組・山田一組長は高山若頭にかけられた恩義に報いるため、身を犠牲にしても神戸山口組、任侠山口組を攻撃、しかるべき幹部のタマを取らなければならない。
敵の陣営から寝返った者は、かつての仲間を殺すことで働きを見せなければならない。ヤクザの宿命だろう。

高山若頭の敵に対する態度は、次に述べる3つのうち1つの選択を迫るものだ。
(1)中堅層以下については六代目山口組に戻ることも可。だから一刻も早く戻れ。(2)首脳部については、引退、率いる組は解散。組員は六代目山口組が引き取る。(3)神戸山口組については、井上邦雄組長など、分裂に主導的に関わった者は殺すか、引退、所払い。
おおよそ高山若頭はこんな考えでいるはずだが、神戸山口組の入江禎副組長に対しては、すでに人を介して「会えないか」という打診があったとされる。入江副組長は「会えない」と即、拒否の回答をしたようだが、当然だろう。死をチラつかされても、この期に及んで命乞いするわけにいかない。
任侠山口組に対しては打診がないようだが、組内はすでに六代目山口組には戻らず、このまま独立自前の組織で行くと機関決定しているらしい。なぜなら高山若頭には従前通り、山口組を変える気がないからだ。山口組改革を掲げる任侠山口組が戻れる道理はない。

大阪の山口組関係者が言う。
「出所のとき、高山はグリーン車全席を借り切って名古屋に帰ったが、他方、ガードの若い衆はいい歳をしてキセル乗車でパクられ、マスコミを賑わせた。一時が万事、これです。上だけカネを使い放題、下は今日食う飯にも困っている。
高山はこういう山口組を変える必要はない、と。昔から若い衆は貧乏なんだ、歳をとればカネも入るわ、という考えなんだろうけど、今は歳をとってもカネは入らない。一生、貧乏のしっぱなしだ。
結局、高山は賢そうでいて、目配りが足りない。全国の警察は年内にも『特定抗争指定団体』に山口組各派を持っていく。指定されたら、今以上に組員はしのぎに困る。山口組は他団体とのつき合いが派手だが、その他団体だって山口組と一緒に沈没する。
山口組が暴力団の盟主なら、もう少し暴力団全体のことを考えていい。高山のやっていることは自分が服役する前の山口組に戻すってことだけ。だけど3派とも勢力はガタ減りだから、合わせたってやっぱりガタ減りだ。昔の山口組になれる道理がない」
碁にたとえられるかもしれない。高山若頭は局地戦ばかりに熱を入れ、大局を見ようとしない。そうとしたら、リーダー失格とされるかもしれない。
しかしながら神戸山口組は12月3日の山健組中田浩司組長の突然の逮捕で自壊の様相。高山若頭からすれば、敵の失着で、神戸山口組が投了する可能性さえでてきた。