食品関連会社との金銭トラブルを受け、県の「いばらき大使」を解嘱されたフードアナリストの藤原浩氏(55)が4、5日、毎日新聞の電話取材に応じた。藤原氏は、会社側に金銭を返還する意思を示したが、一部は事業に関わった県中小企業振興公社に請求すべきだと主張した。【鳥井真平】
藤原氏との金銭トラブルを巡っては、県内の食品関連会社4社が近く「被害者の会」を設立する。藤原氏は「私の不徳の致すところは多々ある。このような事態になったことは申し訳ない」と謝罪。「少しずつでも返済する意思はある。弁護士に相談して対応を考えたい」と話した。
藤原氏はまず、書籍で金砂郷食品(常陸太田市)の製品を宣伝する費用として108万円を受け取りながら、書籍の発行が中止となったことについて「製作が長引いたため出版できなかった」と説明。「広告会社と作った本の企画書があった」とし、出版は架空の話ではないと強調した。
受け取った現金は「交通費や宿泊費など取材費として使った」とし、未返金の約60万円は「すぐに返せる状況ではなく、返済が滞った」と釈明した。
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藤原氏に賠償金の支払いを命じた判決によると、備前堀LABの水越建一社長=水戸市=は昨年、藤原氏から電通と共同出資で設立する会社に、幹部として採用すると誘われた。
藤原氏は取材に「会社設立の話は、実際にあった話ではない」と話した。さらに「『一緒に仕事ができたらやりたい』と話しただけ。『できるといいな』と言ったことが、約束したことになっている」と反論した。
水越社長は「資金繰りに窮した」との訴えを受け、120万円を貸し付けている。藤原氏は取材に「資金繰りの窮状を相談した。貸してと言ったわけではなく、好意で貸してくれた。返すべきものだ」と述べ、全額返金する意思を示した。
ただ藤原氏は、水越社長や金砂郷食品が損害賠償を求めた訴訟に出廷しなかった。藤原氏は「裁判所から書類は届いたが、家族が私に渡し忘れて期日が分からなかった」と話した。
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小野瀬水産(筑西市)は県中小企業振興公社から藤原氏を紹介された。商品の包装デザインなどを200万円で委託したが、実行されなかったとして、損害金約190万円の支払いを求めて東京地裁に提訴している。
藤原氏は「デザインの完成は遅れたが、連れて行ったデザイナーと小野瀬さんとのやりとりは何度もあった」と主張。デザイン以外に委託されていた商品開発は「月に1回程度やっていた」とし、「一方的に打ち切られた。私としては仕事をした」と話した。損害金については「(小野瀬水産は)公社と契約しており、公社に請求すべきだ」と主張した。
被害者の会に参加する高橋肉店(龍ケ崎市)は、公社から藤原氏によるブランディングを提案され、店のロゴ作成の費用数十万円を公社に支払った。しかし届いたロゴは、インターネット上で無料配布されているデザインと酷似していた。
藤原氏は「著作物を無断で持ってきたわけではない」と釈明。費用が高すぎるとの批判には「公社の指導を受け、話し合いで決めた値段だ。公社にも責任がある」と主張した。
県によると、藤原氏は2013~17年度に「いばらき食のアドバイザー」に起用され、5年間で2166万円の報酬が支払われた。
藤原氏は住居がある東京都から1年間に100日以上、茨城県に来ていたとし、「県内すべての地域、農家や現地を訪ね歩き、農産物のブランド化に尽力してきた」と強調。「報酬から交通費や宿泊費も支出していたため、ほとんどお金は残らない」と話した。