チンパンジーの知性を探る霊長類研究の第一人者として知られる京都大高等研究院の松沢哲郎・特別教授(69)らが、京大霊長類研究所(愛知県犬山市)などの設備工事に絡み、国から交付された研究資金を不正に使用していた疑いがあるとして、京大が内部調査していることが明らかになった。研究費を別の目的に使用し、業者に架空発注を繰り返していたとされる。私的流用はないとみているが、不正額は少なくとも1億数千万円に上るという。
関係者によると、工事は同研究所のチンパンジー用のおりの設置。2010年度から数年間にわたり交付された研究補助金のうち約1億3500万円が余り、別のおりの設置費用に充てることを計画して、付き合いのある業者に落札させた。
しかし、このおりの設置で業者に赤字が出たため、補(ほてん)として、京大野生動物研究センター熊本サンクチュアリ(熊本県)の工事に絡んで架空発注を繰り返し、実際には工事や物品納入がないにもかかわらず、業者に金を支払っていたという。
京大は調査委員会を設置して調査。松沢氏らが特定の業者と独占的な契約を結び、順法意識が欠如して会計制度を軽視した結果、利益供与に発展したとみている。京大は松沢氏ら不正に関わった教員を処分する方針。
松沢氏は毎日新聞の取材に「調査を受けているのは事実だが、コメントできない」としている。
この問題では、京大が18年5月に関係者から通報を受けていた。【菅沼舞、川瀬慎一朗】