消える戦争遺跡 全数調査6県のみ 全体像把握進まず 毎日新聞調査

太平洋戦争中の旧日本軍施設や戦災跡など各地に残る戦争遺跡について、47都道府県のうち、自治体内のすべての遺跡の所在地や概要を把握する全数調査をしたのは6県にとどまることが、毎日新聞のアンケートで判明した。太平洋戦争開戦から8日で78年。戦争体験者が少なくなる中、戦時中の歴史を伝える戦争遺跡の重要性は増しているが、その全体像の把握が進んでいない現状が浮かんだ。
戦争遺跡を巡っては、歴史的建造物や原爆による被災といった個別の価値で文化財に指定されたものがある。しかし、保護対象となっていない戦争遺跡は老朽化や開発に伴い取り壊されるケースが多く、保護の検討に向けてどこにどのような遺跡があるかを把握する自治体の調査が鍵となる。
毎日新聞は11、12月、全都道府県にアンケートを実施し、すべての都道府県から回答を得た。そのうち戦争遺跡の全数調査をしたと答えたのは、埼玉▽滋賀▽奈良▽高知▽福岡▽沖縄――の6県だった。この他、山梨県は「調査を検討している」、和歌山県は「今後調査対象とする予定」と回答した。全数調査をしたことがないと答えたのは41都道府県に上った。
戦争遺跡の調査や保存を巡る課題を複数回答で聞いたところ、回答した46都道府県のうち24府県が「戦争遺跡の定義付けが難しい」を選択。「指針を示してほしい」と国にリーダーシップを求める意見もあった。
文化庁は1996年に近代遺跡の全国調査を始め、対象分野の一つに「軍事」を盛り込んだ。しかし、調査しているのは都道府県から聞き取った全国約500件の中から抽出した50件。20年以上が過ぎた現在も報告書はまとまっていない。
戦争遺跡を調査する戦争遺跡保存全国ネットワーク(事務局・長野市)は、戦争遺跡は全国に約5万件あると推計する。同ネットの出原(ではら)恵三共同代表は「全体像を把握しなければ、どんな遺跡が消滅したのか分からない。まずは全数調査で戦争遺跡をリスト化し、保護の検討を進めるべきだ」と話している。【平川昌範】