台風19号の影響で大部分が不通となった第三セクターの三陸鉄道(岩手県宮古市)が、2011年3月の東日本大震災による津波で壊滅的打撃を受けて以来の危機にあえいでいる。三陸鉄道では「釜石と盛の間は通常通りに戻り、洋風こたつ列車などの企画列車も走らせるので、ぜひ足を運んでほしい」と呼びかけている。【米田堅持】
全線不通ではない
「台風被害で、動かないというイメージがあるのか、観光客などがさっぱり……」と冨手淳・旅客営業部副部長は頭を抱える。
台風19号は、ラグビー・ワールドカップ(W杯)日本大会で盛り上がる岩手県釜石市などを直撃。10月13日に釜石鵜住居(うのすまい)復興スタジアムで開催予定だったカナダ―ナミビア戦が中止になり、盛り上がりを期待した地元に文字通り水を差した。
三陸鉄道も3月に旧JR山田線の宮古-釜石間(55.4キロ)が移管されて、全長163キロの日本一長い第三セクターのリアス線として新たな出発をしたばかりで、ラグビーW杯を契機に復興をアピールするはずだった。
しかし、台風19号の影響で77カ所で線路が土砂や岩で埋まったり、レールを支える路盤が流出したりするなど、約7割の区間で運行不能となり、復旧費用は20億円とみられている。ツアーなどの予約キャンセルは10月だけで約1000万円にのぼり、代行バスの費用も1日あたり約70万円かかっており、苦しい状態だ。
11月28日に津軽石―宮古(9.2キロ)が復旧し、現在は田野畑-田老(22.9キロ)と津軽石-陸中山田(17.3キロ)で、年内復旧に向けて工事を進めている。また、被害のひどかった久慈-田野畑(35.4キロ)と陸中山田-釜石(28.9キロ)の工事が行われており、20年3月の全線復旧をめざしている。
旧南リアス線区間では洋風こたつ列車に初日の出号
三陸鉄道も運行できる区間での集客をするため、被害を受けなかった旧南リアス線区間の釜石-盛(36.6キロ)で洋風こたつ列車を14日から週末に走らせる。そのため、台風被災当時は宮古にあったレトロ車両2両を盛岡、花巻を経由する迂回(うかい)ルートで釜石へ回送した。
震災では津波で3両が使用不能となったが、台風19号では車両が無事で、旅客や社員の被害もなかった。
「ありがたいことに義援金もこれまでに2600万円あまりが寄せられた」という冨手さん。ただ、三陸鉄道がいちばん欲しているのは旅客だ。冨手さんは「毎月、被災した区間も順次復旧している。元旦には令和最初の初日の出を見る『三鉄初日の出号』も走らせる。ホームページで時刻表を確認して、ぜひ乗りに来てほしい」と、改めて乗車を呼びかけている。