「兄を亡くした感じだ」「哲ちゃん、本当によく頑張った」。11日、福岡市で営まれた同市のNGO「ペシャワール会」現地代表の中村哲さん(73)の合同葬。各地から駆けつけた参列者は、銃撃され命を落とすまで、我が身を顧みずアフガニスタン支援に取り組んだ人柄をしのんでおえつをもらし、会場周辺には入りきれない市民があふれた。
告別式は午後1時に始まり、参列した1300人以上が全員で黙とうをささげた。祭壇にはアフガニスタンで撮影された、穏やかな表情をたたえる中村さんの遺影が飾られ、会場内には事件で一緒に襲撃され犠牲となった現地の5人の遺影も。献花では、中村さんが好きだったモーツァルトの曲が流された。
同国の復興支援活動をするNPO法人「カレーズの会」(静岡市)理事長で、中村さんと20年以上の親交があるアフガン出身の医師、レシャード・カレッドさん(69)は最後の別れを告げた後に「10月にアフガン政府から名誉市民権をもらい、やっと同じ仲間になったと喜んでいたのが印象的だった。本当にむなしく、兄貴を亡くしたような感じだ」と肩を落とした。
ペシャワール会メンバーとしてアフガンで活動中の2008年、武装集団に殺害された伊藤和也さん(当時31歳)の両親も静岡県掛川市から足を運んだ。父正之さん(72)は「先生が亡くなったことは信じたくない」。母順子さん(67)は「二度と起こってはいけないと思ったことが起こってしまった」とつらい胸の内を語った。中村さんの西南学院中学時代の同級生で、弔辞を読んだ福岡市早良区の和佐野健吾さん(72)は「哲ちゃんはアフガニスタンの人たちのため本当によく頑張った。本当にお疲れさん」とねぎらった。
会場には国内在住のアフガン人も多く、佐賀県多久市の自営業、ハジルジ・ハンさん(46)は「悲しみは日本だけにとどまらず、とてつもなく大きい」と話した。
すすり泣きが聞こえる会場で親族は目を赤くしながら、追悼の言葉に耳を傾けていたという。式後、アフガンの旗がかけられた中村さんのひつぎを乗せた車が会場を出発すると、大きな拍手が鳴り響いた。作家・火野葦平の三男で、中村さんのいとこの玉井史太郎さん(82)=北九州市若松区=は「この場に来られた方たちの思いに触れ、彼の偉大さを改めて知った」と語った。【杣谷健太、飯田憲、一宮俊介】