「その日の食事にありつけなかったり寝床に困って路頭に迷うヤクザが必ず出てくるでしょうね。『極道に同情する必要なんてない』と言う人もいますが、彼らだって人間です。警察庁もわざわざこの寒い時季に処分を決めなくてもよかったのでは」
こう語るのは、暴力団に詳しい元兵庫県警の飛松五男氏だ。10月中旬に6代目山口組のナンバー2、高山清司若頭が出所。11月27日には兵庫県尼崎市で神戸山口組の幹部が射殺された。こうした緊迫事態を受け、警察当局は年内にも両組織を「特定抗争指定暴力団」に指定する方向で検討を進めている。
「特定抗争指定暴力団に指定されると『警戒区域』内に5人以上で集まることや、組事務所の使用が禁止されます。違反した組員は直ちに逮捕されます。26日以降に両組織が拠点を置く愛知県名古屋市、岐阜県岐阜市、三重県桑名市、京都府京都市、兵庫県神戸市・尼崎市・淡路市などが『警戒区域』に指定されていくとみられています」(捜査関係者)
尼崎市の商店街付近でM16自動小銃がぶっ放されたことで一般人にも「ヤクザは怖い」という認識が改めて広がった。だからといって、一気に指定に向けて動くことが必ずしも市民にとってプラスに働くとは限らない。
「組事務所に住民票を置いている暴力団組員は少なからずいます。出入りができなくなったら、生活力のないヤクザは車中かネットカフェで寝泊まりするしかありません。兵庫県などには日常的に炊き出しを行っているボランティア団体は少ないので、食い詰めた暴力団員は大阪市の釜ケ崎などに向かうしかないはず。両組織ともそれが分かっていますから、ヤクザであふれ返った釜ケ崎が次の“血戦地”になる恐れがあります。あるいは、それこそ一般人がトラブルに巻き込まれる危険も十分にあります。普通、ヤクザは堅気を襲いません。ただ、本当に日々の生活に困窮して強盗などに手を染める組員が出てくるかもしれません。何しろ、彼らは銃器という強力な凶器を所持している可能性があるのです」(飛松五男氏)
特定抗争指定暴力団の指定期限は3カ月以内だが、警察のサジ加減で延長することができる。サジ加減を間違えたらそれこそ一般人が犠牲になりかねない。