10月の台風19号で、長野市の千曲川の堤防が決壊し、浸水被害を受けたJR東日本の長野新幹線車両センター(同市赤沼)。北陸新幹線が泥水につかった光景は、衝撃をもたらした。それだけに、水没した新幹線を見ようと大勢の人が訪れている。被害を調査する学術関係者や写真愛好家、家族連れなどさまざま。そんな中に鉄道愛好家の姿もあった。【島袋太輔】
「これだけの新幹線が水没するのは、鉄道の歴史の重大な一ページ。前代未聞の出来事を記録に残そうと思い、訪れました」
そう語るのは、鉄道系ユーチューバーの「スーツ」さん(22)だ。ユーチューブで「スーツ交通」というチャンネルを開設し、JRを中心とした鉄道の動画を配信している横浜国立大の4年生だ。
JR東は、浸水被害で脱線した車両を元に戻すなど復旧作業を進めている。11月には部品を外すなどの作業を始め、それを知ったスーツさんはすぐに新幹線を予約。11月12日に東京から駆け付け、ユーチューブに投稿する動画を撮影した。
スーツさんは物心がついた頃から鉄道が好きな、生粋の「乗り鉄」だ。東京から飛行機を使わずに、鳥取経由でロシアのウラジオストクまで渡り、シベリア鉄道など列車を乗り継いでロンドンまで行ったほど。そんなスーツさんが水没した北陸新幹線で注目したのは、先頭車両の先端部分の連結器カバーが外されていることだ。
通常、連結器カバーは異なる種類の車両をつなげる際に使用する。ただ、北陸新幹線の「E7系」「W7系」は単体で運行するため連結器カバーが外されるのは珍しいという。運行目的以外で連結器カバーが外されるのは廃車や解体する時だけ。E7系、W7系は2015年の北陸新幹線金沢延伸に伴い導入された新しい車両のため、廃車は今回の台風19号被害が初となる。
スーツさんは「10編成が連結器カバーを外して並んだ光景を見る機会は、まずない。水没した映像を見ると『まだ使えそうだ』と思ったけど、古くなり、ボロボロになったような印象に変わった」と話す。E7系、W7系の先端部分の特徴も「のっぺり」だったというが、カバーが外れると「おちょぼ口」のようだと指摘する。
センターは長野市穂保の堤防決壊地点から北西1・5キロに位置する。国土地理院の推計によると、センター付近は最も深く浸水し約4・5メートルに達した。建設時、地盤から約2メートルかさ上げしたが、北陸新幹線の車両10編成120両が水没した。
国道18号近くの陸橋「アップルブリッジ赤沼」は、フェンス越しにセンターが一望できる。もともと新幹線が横一列に並んで撮影できることから、鉄道愛好家の間では有名なスポットだったという。
スーツさんは「以前からこの場所は知っていたが、まさかこんな機会で来るとは……。実際見てみると、他の車両の部品として使えるのではないか。保管しておいて予備にするか、新しく製造する車両の部品として再利用するなどの方法があると思う」と指摘する。一方、JR東広報部は「検討中」としている。