そしゃく音を分析 モスバーガー新作は“音までうまい” マーケティング施策を強化

ハンバーガーチェーン「モスバーガー」を展開するモスフードサービス(東京都品川区)は9月12日から期間限定で、「MOS JAPAN PRIDE(モスジャパンプライド)」シリーズの第1弾として「海老天七味マヨ」(税別445円、以下同)と「ジャンボメンチ」(334円)を全国店舗で販売する。同シリーズはモスが2019年から取り組んでいるテーマ「CHANGE」の一環として展開。日本生まれのハンバーガーチェーンであることを生かし、日本食のエッセンスなどを取り入れた商品を投入していく。

音まで、うまい
2つの新作は共通するキーワードを「音まで、うまい」とし、味とともに食べた際の音にもこだわっているという。

海老天七味マヨは、代表的な和食である「エビの天ぷら」とハンバーガーの和洋折衷メニュー。エビは工場で1本1本を手作業で揚げた後、急速冷凍。店舗で注文が入ってから「二度揚げ」することで“ざくりざくり”とした食感と音を味わえるように工夫した。企画担当者によれば、揚げ加減はあえて硬めにしている。増税後にテークアウトが増えることを見越し、持ち帰って食べても食感をしっかり楽しめるようにした。

ハンバーガーにはトマトも入っており、天ぷらと酸味のあるトマトとをうまくブレンドするのに苦労したという。また、ソースにも日本ならではの食材を使用。“日本のスパイス”ともいえる七味唐辛子を使い、キレのある味に仕上げた。

ジャンボメンチは、「モスバーガーのメニュー史上で1、2を争うほどのボリューム感」(担当者)。360度どこから食べてもメンチカツがバンズ(パン)からはみ出るほど食べ応えのある1品。牛バラ肉やモモ肉など複数部位をブレンドすることで、肉の味わいや食感を強調した。

食べたときの「声紋」を分析
担当者は今回の商品について「本当に『音までうまい』という絶大な自信がある」と胸を張る。自信には根拠がある。モスは発売に先立ち、音響などを研究する日本音響研究所(東京都渋谷区)と共同で海老天七味マヨを食べた際の音を分析。市販されているエビの天ぷらと比較すると、海老天七味マヨの方が迫力のある音を発生させることが分かった。

これについて日本音響研究所の鈴木創所長は「ボリューム感を感じさせ、味覚だけでなく満腹感まで刺激してくれるような音の構成になっている」とコメント。迫力のある音や食感は記憶との結び付きが強く「おいしい味の記憶と音が連動し、体全体で海老天の味わいを楽しむことができる」とも述べている。

「食事と音」については、徐々に注目が集まり始めている。YouTubeでは、「ASMR(Autonomous Sensory Meridian Responseの略称。聴覚などへの刺激により感じる反応や感覚)」と称して揚げ物などのそしゃく音をアップする動画も増えているという。

外食分野でも、「音」への注目が高まり始めている。ソラノイロ(東京都千代田区)の展開するラーメン店「ソラノイロ食堂」が耳栓を着用して食べるラーメンを期間限定で提供中(9月13日まで)。日本ケンタッキー・フライド・チキン(神奈川県横浜市)は、同社の新商品を食べたときの脳血液量と唾液量を分析。食べたときのぱりぱりとした音が、脳の前頭葉を活発にさせ、食欲を増進させるとの報告を発表している。

マーケティング施策を強化
モスは、マーケティング施策を強化する動きを見せている。

これまで「商品本部」と「ブランド戦略室」に分かれていたチームを「マーケティング本部」として一本化。「これまではおいしいものさえ作っていれば必ずお客さまに来てもらえていた。しかし、今世の中にはおいしいものや新しいものがあふれている」(担当者)。従来のやり方ではうまくいかなくなっている中で、商品開発とマーケティングを一気通貫で行うことを決断した。

今期掲げるテーマ「CHANGE」では、「既存戦略と新たな戦い方の組み合わせ」を図る。19年度上半期には定番商品のてこ入れなど既存戦略面に注力。下期からは新たにモスジャパンプライドとして、キャンペーンを仕掛ける。新たな戦い方として、今回の新商品では、初めてペルソナ分析を用いた。海老天七味マヨでは「量は少なくてもいいので、よりおいしいものを求めるリピーター層」を、ジャンボメンチでは「ボリューミーなものを求める若年層」を狙う。広告戦略でも、「これまではテレビが10、デジタルは0」(担当者)だった比率を、狙ったターゲットに訴求しやすいデジタル広告へ徐々に移行していく。

なお、モスは消費増税に際して一律して価格を据え置く。その上で、現行の税込表示から本体価格表示へと変更。同じ商品でも、店内で食事するかテークアウトするかで、価格が変わることになる。マクドナルドなど一部外食チェーンでは、商品によって価格を変更したり改定したりと対応が統一されていないケースも見られる。今回の対応について担当者は「モスは、各商品にファンが付いている傾向にある。お客さまの中には、メニューを見ずに注文する人も多い。こうした現状で商品ごとに対応がばらつけば、得する人と損する人が出てきてしまう」と説明している。