「2050年までに温室効果ガス排出量実質ゼロ」を目標に掲げる自治体が増加し、17日現在で10都府県と18市町村が表明した。二酸化炭素(CO2)排出量の多い石炭火力発電の全廃を見通せず「50年までに80%減」の達成すら危ぶまれている国を尻目に、なぜ自治体が地球温暖化対策で先行するのか。【鈴木理之、岩崎歩】
「先進都市としてカーボンニュートラル(CO2排出実質ゼロ)の実現に挑戦していく」。10日、国連気候変動枠組み条約第25回締約国会議(COP25)が開催中のスペイン・マドリードで開かれた、国内外の自治体が地域での地球温暖化対策について議論するイベント。登壇した横浜市の薬師寺えり子・温暖化対策統括本部長は、そう強調した。
日本からは同市のほか、「50年実質ゼロ」を宣言した長野県、京都市、富山市も参加。それぞれ取り組みをアピールした。日本政府代表としてCOP25に参加していた小泉進次郎環境相も駆けつけた。
横浜市は今年6月にゼロを目指すと表明。東北地方で再生可能エネルギーで発電した電気を同市で活用する連携協定を、岩手県内などの12市町村と結んだ。
京都市は環境NGOなどに委託し、どんな対策を取ればCO2を削減できるのか、詳細なシミュレーションを実施。再生エネや蓄電池などの活用で、50年に1990年比で約95%削減可能という結果になったという。イベントで市地球環境・エネルギー担当局長の下間健之さんは「京都議定書の誕生の地である京都が成果を具体的に示し、他の自治体や国を後押ししていく覚悟だ」と胸を張った。
世界に目を向けても、国より自治体が先行している。COP25議長を務めたチリのシュミット環境相によると、世界で「50年実質ゼロ」を掲げる自治体は400以上。先月4日、温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」からの離脱を国連に正式に通告した米国でも、協定に沿って対策を進める組織などの連合体に全米50州のうち10州が参加する。
日本でゼロ表明した28自治体の人口は計約4500万人で、国内全体の約35%に相当する。増える背景には、省エネ化や再生エネへの転換により新たな設備投資を呼び込むなど経済効果への期待に加え、温暖化との関連が指摘される豪雨災害などが深刻化していることへの危機感もある。
11月28日に表明した福島県郡山市は、10月の台風19号に伴う大雨で阿武隈川が氾濫し、2万世帯以上に浸水被害が出たことが一つの契機になった。再生エネを活用した電力会社を地元企業と20年度末までに設立し、エネルギーの地産地消による排出削減を目指す。
徳島県は日照時間が長く森林資源が豊富という地域性を生かし、太陽光やバイオマスなどの再生可能エネルギー導入拡大を実現の基本に据える。再生エネ発電設備の稼働予定や伸び率を基に、発電量を積み上げて算出。県内の再生エネによる電力自給率を30年度に50%にする目標を掲げた。県環境首都課は「県民の意識改革を進めるためにも(実質ゼロを)宣言することは重要だ」と話す。
ただ、地域主体の対策には限界もある。「実質ゼロ」を表明したある自治体の担当者は「温暖化対策を強化するための国の補助金などがあっても、いつまで活用できるか分からず、長期的に続けていくのは難しい。小さな自治体では取り組む余裕がないところもあるだろう」と明かした。