「桜を見る会」からわかる政治家の三権分立認識の危うさ/金子恵美×宮崎謙介の夫婦放談

19年10月に政界引退を表明した前衆議院議員・金子恵美氏と、金子氏の夫で元衆議院議員の宮崎謙介氏。16年には宮崎氏の不倫問題により注目を集めた二人だが、現在は夫婦の絆を取り戻し、講演や討論番組、情報番組への出演を通してそれぞれに政治活動を続けている。そんな二人に、「桜を見る会」関連の問題について夫婦で忌憚なく放談してもらった。

――お二人は議員時代に桜を見る会に参加したことはあるのでしょうか?

金子:私は17年に参加しました。

宮崎:僕は予定が合わず参加したことはありません。一回くらい行っておけばよかったかな……。正直、国会議員であれば誰でも参加できるので、議員にとっては「予定が合えば行こうかな」という程度の位置づけなんですよね。

金子:新年祝賀の儀や、天皇陛下のお誕生日、園遊会のような格調高い皇室行事に比べて、カジュアルな行事、という印象。もちろん52年から続く行事なので、歴史はあるんですけどね。

宮崎:園遊会の総理版というくらいの認識でいたけど、どういう基準で招待者が選ばているのかな?という疑問は国会議員の間でも前々からありました。

金子:特に芸能人の方は……「今年活躍した人」が対象のはずなのに、失礼だけど、この人、今年活躍されたっけ……?という方も中にはいらっしゃったような……。

宮崎:これはご本人にも言ったんだけど、デーブ・スペクターさんなんて、20年くらい参加しているそうですけど、そんなに毎年ブレイクしてませんよねって(笑)。

金子:これは既に多くのメディアでも言われていますが、ももクロさんたちはずっと総理のそばにいるな……という印象はありました。「いったい何だろうこの会は」というのは、多くの議員は感じていたと思います。

◆二階派は二人まで、麻生派は四人まで連れていけた

宮崎:疑問に思いつつも、芸能人に会えるから、予定が合うなら行こうかな、とミーハーな気持ちで参加している議員も多かったんじゃないかな……。

金子:推薦枠についても、議員には案内状があるんですが、さらに連れて行きたい人がいれば二人一組まで連れて行っていいというルールでした。といっても、帯同していい人数も派閥によって決まっているんです。私たちは二階派に属していたんですが、二階派は二人一組まで。麻生派はもっと多かったらしく、四人二組までだったと聞いたことがあります。こんなところにもパワーバランスが出ている(笑)。それで、参加した17年は、自分は母と叔母を連れて行きました。

――母親を連れて参加したことで三原じゅん子さんは非難されていましたが……。

金子:それはもう……「何であなたの母親と叔母が参加できたの? 何か功労があったの?」と言われたら言い訳のしようがありませんし、それこそ「母に対する侮辱だ」なんて思えるわけがありません。「帯同していいなら連れて行こうかな」くらいの気持ちでした。そもそも税金を使って催されている行事だということに対してあまりに無自覚だったな、といまさらながら思います。

宮崎:三原さんも、「母に対する侮辱だ!」なんて反論しないで素直に「無自覚でした」って言っておけばよかったのにね。

金子:ぼんやりと「総理大臣主催の行事」という認識で、「自民党総裁ではなく行政府の長として主催している」という意識すらなかったなと反省しています。

宮崎:恣意的に招待者を選んでいることもわかっていたけど、それが問題だという意識も自民党内にはなかったですね。

金子:安倍総理だけでなく、時の行政府がやってきたことなので、民主党政権のときのことも明らかにすべきとは思いますが、「税金を使って行われている行事なのにおかしい」という国民の声に真摯に耳を傾けるべきタイミングだったんだなと思いますね。「たかだか数千万円の予算の行事に目くじら立てなくても」と考えている議員は多いし、予算規模から考えるとそう思ってしまう議員の気持ちもわからなくはないんですが、規模ではなく税金が財源であるということが一番の問題なんですよね。

宮崎:蓋を開けてみたら総理枠が1000人以上というのはさすがにびっくりしました。せいぜい100人くらいかと思ってた……。

金子:本当に功績がある方が参加して桜を愛でるのなら素晴らしい行事だし、説明もせずに逃げ回って簡単にやめちゃうのは一番ダメですよね。杜撰な運営と不明瞭な招待基準を見直して、素直に反省をすればここまで問題が大きくなることはなかったはずなのに……。野党が招待者名簿資料の公開を要求したその日にシュレッダーにかけていたとか、「障害者雇用の職員が作業を担当していた」とか、言い訳としても本当に酷い。

宮崎:19年9月に提出された20年度予算の概算要求では、桜を見る会関連の予算は19年度の3倍超。セキュリティ対策のためって説明されていたけど、これもおかしいんだよね。

金子:私が母と叔母と参加したときは、手荷物検査で20分以上待って、入場するまで結構時間がかかったんですよね。ただ、これも既に報道されていますが、安倍総理の後援会の招待客たちは、ツアーバスの中で検査が済んでいるということで、手荷物検査もなくて、待たずに入場していた。

さらに、本来は8時30分に開門のはずなのに、それより先に入場して安倍総理と記念撮影をしているという。セキュリティ強化のために予算を増やすと言っておきながら、セキュリティガバガバじゃん!って思っちゃいますよね(笑)。

あとは、会場ではテントに食べ物が用意されているんですが、母と叔母が入場したときには食べ物ももう一切なくなっていたんですよね。「毎年参加していてルートがわかっている常連さんが食べてるのね~」なんて話してたんですけど、もしかしたら、安倍総理の後援会の人たちが1000人以上先に入って食べ尽くしちゃってたんですかね(笑)。本当に、無自覚に参加していた私と母、叔母がそんなことに文句を言う権利がないのはわかっているんですけど……。

――公職選挙法に抵触する恐れがある前夜祭の問題についてはどう考えていますか?

金子:政治家のパーティって、主に秘書が企画してホテルと交渉するんですが、基本的には政治資金を集めるために開催するので、1万円のプランしかなくても、人数が多いから、とか、食べ物は減らしていいから……と、値切ってなるべく安くしてお金を浮かせるのが普通のやり方なんです。

宮崎:それは野党の議員もやっていることだと思います。前夜祭については、そこで利益を出そうとは考えていなかっただろうから、トントンにしてなるべくいい食べ物を出してあげたい……くらいの気持ちで秘書が計画したのかな、と思います。なるべく節約してパーティを開催するのは、政治家なら多くの人がやっていること。

金子:蓮舫さんが「私は政治資金パーティを開いたことがない」とTwitterで書いていたようですが、え、本当に!?と思ってしまいました。与党は野党より政治活動にどうしてもお金がかかってしまうというのもありますが……。政治資金が潤沢な議員ばかりではありませんから、合法の寄付や政治資金パーティでみんな必死にお金を集めている。政治資金パーティ=悪というわけではないんですよね。

個人的には、前夜祭についても、安倍事務所がホテルに差額を払ったとも、ホテル側が差額を負担したとも考えがたいと思っています。でも、ホテル側が「明細書は7年間保管しているし依頼があれば再発行は可能」と言っているのに「明細書の発行はなかった」と、お金の流れを明らかにせずに逃げ回っているのだから、それはもう公職選挙法違反や贈収賄罪を疑われてしまいますよね。

何でちゃんと説明できないのか……それは自民党議員も多くが思っているのではないでしょうか。説明が下手すぎるからどんどんドツボにはまっているなと。「前夜祭参加者の多くがオータニに宿泊するから割引してもらった」といういいわけも、結局オータニに泊まってない人のほうが多かったと明らかになっていましたし、調べれば後でわかってしまうような言い訳を、なぜしてしまったのか……と驚きました。

◆説明する側が「もっと議論すべきことがある」は通らない

宮崎:まあでも、桜を見る会についても前夜祭にしても、「こんな小さな問題でいつまでも騒いでないで、もっと議論すべきことがあるでしょ」と思っている人は多いんじゃないですかね。

金子:国民のみなさんのなかでそう思う人がいるのはわかるし、私もいまや外から見ている立場としてはそう思います。でも、やましい点がないならきちんと説明すれば終わる話なんだから、説明責任を果たすべき立場の与党が「もっと議論すべきことがある」っていうのは通らないですよね。

宮崎:長期政権の驕りって言われてしまうよね……。

金子:追及している野党も、予算規模としては小さい話だということは十分わかっている。でも、問題の構図がわかりやすいから、一番責めやすい。ある意味「左翼ポピュリズム」というか……「長期政権の驕り」を象徴する出来事として、日ごろ政治に関心がなくて、何となく安倍さんを支持していたような層にも共感を得られるから、大きなチャンスだと考えているんでしょうね。

枝野さんが「このまま解散まで追い込む」と言っているのには驚きましたけど……。野党共闘の準備も整っていなくて、選挙区の調整も済んでない今、本当に解散しちゃって大丈夫なの!?と。でも、政権交代のきっかけにできるくらい共感を得られて責めやすいと思っているんでしょうね。

宮崎:菅原元経産相、河合元法相夫妻、桜を見る会と不祥事の三連続。でも、仮に解散に追い込んでも、「自民党にお灸は据えたいけど野党に期待しようとは思えない」というのが国民感情なんじゃないかなあとも思う。12月の世論調査では、「『桜を見る会』総理説明に納得できるか」については7割以上が「納得できない」(「まったく納得できない」41%、「あまり納得できない」30%/NHK世論調査)と答えていて、内閣支持率も下がっているけど(11月から2ポイント減で45%[NHK世論調査]、11月から7.9ポイント減で40.6%[時事通信社世論調査])、野党の支持率が大きく増えているわけではない(11月から0.5ポイント減で5.5%[NHK世論調査]、11月から0.7ポイント増で3.8%[時事通信世論調査])もんね。

金子:積極支持ではないけどいまだに安倍内閣を支持する人が4割いるのは、野党のふがいなさもあるなと思ってしまいます。

宮崎:菅原元経産省の秘書給与問題だって、もっと追い込めたはずなのに、メディアに「香典、メロン、カニ」というわかりやすいニュースにされちゃって、飽きられてしまった。秘書給与問題については、辻本清美さんなんかは実刑判決が出ているし、野党議員にも後ろ暗いところがある人はいるから追い込みきれなかったのかもしれないけど。

金子:桜を見る会に話を戻すけど、つくづく「永田町の常識が世間の非常識」というか、国会議員には当たり前のように毎年案内が来ていて、「行けたら行こう」くらいの行事としてしか考えず、本来の会の趣旨を完全に忘れたことが一番の問題ですよね。安倍総理が「行政府の長」として主催していたということ、そしてそれは税金によって開催されていたという当たり前のことを忘れてしまっていた。

行政府の長としての立場、自民党総裁としての立場、イチ国会議員としての立場の線引きがいつのまにか曖昧になっていたのではないでしょうか。安倍総理がご自身のことを「立法府の長」と発言して問題になったことがありましたけど、仕組みとしてはわかっているはずなのにいつのまにか「三権分立」の大原則がおざなりになってしまったんじゃないかとすら思う。安倍総理だけじゃなく、多くの国会議員にそういうところはあるんだけど……。

宮崎:国会議員になったばかりのときにすごくびっくりしたのが、各省庁の官僚が勉強会で議員にレクチャーしにくるとき、議員にペコペコして異常に腰が低かったこと。でも、そういうことをされているうちに国会議員が勘違いしていっちゃうていうのはあるかもしれない。まあ、腹の中では国会議員なんてバカばっかりだと官僚は思ってるだろうけど……実際否定しきれないけどね(苦笑)。

金子:大臣だってそうだよね。行政事務の責任者としての大臣なのに、小泉進次郎さんなんかは、あいかわらずイチ政治家としてパフォーマンスをすればいいと思っている。だから入閣以降逆風が吹いているのに、切り替えができていない……。

宮崎:話が変わってきたので今回はこのへんで。次のテーマは「小泉進次郎」氏にしよう(笑)。

●金子恵美 78年、新潟県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、新潟放送勤務、フリーのライター活動、韓国の梨花女子大学校への留学などを経て、07年に新潟市議会議員選挙に出馬しトップ当選。10年から新潟県議会議員を務めた後、12年に第46回衆議院議員選挙に出馬し当選。14年に再選するも、17年の第48回衆議院議員選挙では落選。19年10月6日に政治家引退を発表

●宮崎謙介 81年、東京都生まれ。早稲田大学商学部卒業後、日本生命保険、インテリジェンス、ドリコム勤務などを経て、11年、自民党京都府第三選挙区支部長に選任。12年に第46回衆議院議員選挙に出馬し当選。14年に再選するも、16年2月に衆議院銀を辞職。現在はテレビコメンテーターなどで活躍する

(取材・文/日刊SPA!編集部 撮影/福本邦洋)