若者の「投資」事情 ハードルをこえるきっかけは「学びと自信」

2019年は若年層の投資への関心が高まった年だ。メットライフ生命の調査によると、資産運用意向のある人は過半数となっており、特に若年層の意識向上が大きい。20代では、資産運用意向が18年より10.7ポイント増加、30代でも5.3ポイント増加しており、「投資を始めたい」と思う人は着実に増えているようだ。

一方で、実際に投資に踏み出す人は少ない。同調査では「運用中」の人は26%に留まっており、特に若年層の足が止まっている。

その理由は何か? フィデリティがビジネスパーソン向けに行った調査を見ると、トレンドが見えてくる。「投資するだけの資金がない」のは確かに大きな理由だが、トレンドとしては比率は大きく下がってきている。一方で増加してきているのが、「何をすればいいのか分からない」「いろいろ勉強しなくてはならないから」という理由だ。

実際に投資に踏み出した人のきっかけは?
では実際に投資に踏み出した人は、どんなきっかけでハードルを越えたのだろうか? 総合マネースクールファイナンシャルアカデミーの協力を得て、株式投資コースの受講生にアンケートを取り、自身が投資に踏み出したきっかけを聞いてみた。

最も多かったのが「投資商品の選び方を学び自信が持てたから」という回答だった。株式投資に関する授業を受けている生徒の回答だということを差し引いても、投資に関するリテラシーは非常に重要だということが分かる。

日本銀行内に事務局を置く金融広報中央委員が19年春に行った金融リテラシー調査によると、金融リテラシーの高い人ほど株式に投資していることがはっきりと分かる。また年齢が高まるほどリテラシーが上がり、年収が高いほど、また保有金融資産が多いほど上がる傾向がある。リテラシーと投資の因果関係は不明だが、連動しているのは明らかだ。

株式投資コースの講師を務めるファイナンシャルアカデミーの小野原薫氏は、具体的な金融に関する知識が投資につながる点としてリスクコントロールを挙げる。「株式投資なら、例えば損切りの設定機能を使うと、最大損失額を自分で決めることができる。リクスコントロールが分かるとスタートしやすい」

投資未経験者は、資産が減るリスクを過度に恐れる傾向にあるが、こうしたリスクコントロールの手法を知るだけでも、取り組むきっかけになるということだ。

証券口座を作ると投資のスタートに立てる
2位に挙がったのは、「証券口座を作ったから」という回答だった。これは意外なことではなく、何らかのきっかけで証券口座を作ると、それが投資の入り口になる傾向がある。

楽天証券は、口座数で見ればSBI証券に次ぐネット証券第2位だが、口座の増加数が昨今加速している。これは、確定拠出年金口座の用意や、投資信託の残高に応じての楽天スーパーポイント付与、楽天カードでの投信積立機能の提供などの効果だ。そしてこうしたきっかけでいったん口座を開くと、値動きをつい見てしまい自身の資金を投入することにつながるのだと、楽天証券の大嶋弘康IFA事業部長は話した。

同じように勤務先の持株会などで作った口座も、投資に踏み出すきっかけになるようだ。「自社の持ち株を買い、それが上がっていくと、投資は資産が増えるんだと感じて、ほかの投資をしようと思う人もいる」(小野原氏)

知識は書籍で身につけても、実際の行動には人の力も
アンケートでは、投資商品を購入するための知識習得方法のトップに挙がったのは「書籍」だった。インターネットで情報を得るという人も約3割にのぼったが、半数が書籍を重視している。

ところが、実際の投資のきっかけとしては書籍を挙げる人は少ない。代わりに第3位となったのは「友人、同僚に背中を押されたから」だった。匿名で金融の専門家に相談できる「お金の健康相談」に力を入れる400Fの中村仁社長は、「投資の第一歩はものすごく難しい。人に相談したいという声もすごく多い」と、対人によるひと押しの重要性を説く。

口座を開いてみること、誰かにお金のことを相談してみること。いくつか投資の第一歩を踏み出すきっかけはあるが、やはり前提となるのは資産運用に関する知識だろう。小野原氏は、マネーリテラシーの重要性を次のように話した。

「踏み出せない理由は分からないから。なんとなく怖い、不安という人は、自分が分からないことを1つずつ解消していくと投資のきっかけになる。勉強せずに投資をする人は、免許も持たずに高速道路を運転するようなもの。勉強すれば、大きな事故、大きな損を出すことも減る」