「学校はタダ」だと思う保護者、その裏側で自腹を切る先生 現役中学教員に聞く「労働時間だけではない教育現場のブラックさ」

ブラックな労働環境、厳し過ぎる部活動、なくならないいじめ………。子どもの成長を支える学校を巡って、ニュースではさまざまな問題が取り上げられています。実際に働いている教員は、どのような思いを抱いているのでしょうか。

本記事は、公立校の中学教員に「一般教員として感じている“学校の問題点”」を語ってもらう連載企画。今回は「学校行事などのために、教員が自腹を切っている実態」について、Aさん、Bさん(仮名)にインタビューしました。

●合唱コンクールはあるのに、練習に使えるキーボードがない

A:ブラック企業の話題でよく上がるのが、労働時間。でも、もう1つ「お金」という要素もあるよね。

―― 残業代が出ないとか、自爆営業をさせられるとか……

教員の世界では「自腹を切って、仕事で必要なものを購入する」というのが非常に多い。例えば、合唱コンクールのためにキーボードを買ったり、CDデッキを買ったり。

―― 学校にあるんじゃないの?

A:あっても壊れてたりするから、私物を貸すという形で補うわけ。

それから、音楽について専門的に勉強してない教員がほとんどだから、機材どころか指導のノウハウもなかったりね。だから、本を買ってきて個人的に勉強するんだけど、その購入代金も自腹。

教員の給与は同年代と比べると少し高いと思うのだけど、残業時間は過労死ラインを突破するくらい長いし、自分のお金を仕事のために使う機会がすごく多い。

教員の世界ではこうやって自腹を切ることを“持ち出し”というのだけど、合唱コンクールに限らず、体育祭、部活なんかも持ち出しでやるのが当たり前になってる。

―― そういうときに使えるお金は用意されてないの?

A:一応、「学級費」というのはあるんだけど、良くて年間5000円とか。1カ月あたりに置き換えたら数百円だから、ティッシュとかビニール袋とか……あとはメラミンスポンジ? そういうのを買ったら終わり。これだって使いきったら、後は持ち出し。

―― 経費で落とすこともできない?

B:「経費という考え方自体がない」と思ってもらっていいと思う。

A:出るのは、出張の交通費くらいかなあ……。

●教員の自腹で「何とかなってしまうから学校のキーボードは壊れたまんま」

―― そもそもの話になっちゃうんだけど、「キーボードは使えないのに、合唱コンクールをやる」っておかしくない?

A:そこは「体育館にピアノがあるから大丈夫」という発想なんだよ。

―― でもあれ、回数少なかったよね。「体育館での練習は、貴重な機会。本番と同じ環境で歌えるんだぞ」と、メインの練習ではなかった覚えがある

A:うん。全学年10~20くらいのクラスで利用時間を割り振って、順番で使うことになるからね。当然、それだと十分に練習できない。だから、自腹でキーボードを購入して、教室に置く教員が現れるわけ。

そうしないと「生徒たちに必要なモノなのに、用意してないとはどういうことだ」と言ってくる保護者もいるし、合唱が完成していかないと「あのクラスの担任は指導が悪いな」みたいに、周囲の風当たりも強くなる。

B:それから、やっぱり「生徒を持ったら、その子たちにいい思いをさせてあげたい」と思うのが、人の心なんじゃないかな。例えば「隣のクラスはキーボードがあって合唱の練習ができるけど、自分のクラスは……」というのは心苦しい。自腹を切るのが良い解決方法だとは思わないけど、手っ取り早い。

A:逆に言うと、それで何とかなってしまうから学校のキーボードは壊れたまんま、というね。

●教員の給与が、教育コストを“見えない形で消化”している

A:行事や部活だけじゃなくて、授業で使う教材も教員の持ち出しだったり。

B:そうそう。最近はデジタル教材を使った授業が求められていて、「やってほしい」と言われるのだけど、機材がない。

だから、自腹で数万円のプロジェクターを買って授業に使ったことがあるよ。自分で言うのもアレだけど、生徒からの反応は良かった。そういうことをする先生が他にいないし、黒板と違ってボタンで切り替わるからテンポもいいし。

まあ、職員室内では全く評価されなかったんだけどね。「学校全体に関わる仕事の方が大事」という考え方が強くて、授業を頑張っても「自分のことをしただけ」みたいな。年功序列で、給与も上がらないし。

A:その反面、生徒から徴収するお金に関してはかなりシビアで、教材費の使い方も難しい。学校の教材って200~300円とかなんだけど、500~600円になると良い教材だとしても「高過ぎる」と言われてしまう。

「学校はタダ」だと思ってる人はいまだにいるみたいで、お金を払うことにかなり抵抗を示すんだよ。その裏側では教員が自腹を切ってる。

―― 教員の給与が、教育にかかるコストを見えない形で消化してるわけか

B:今は教員個人の努力に頼っているというか。サービス精神あり過ぎ、ボランティア精神あり過ぎで、それなりに協調性もあるから、成り立ってるんだと思う。

もしもドライになって「自腹切りたくないです」「報われない努力はしたくないです」と言うようになったら、教育現場は終わると思う。良くも悪くもそうならず、ブラック化することでギリギリ回ってる。

A:でも、それはパンクした自転車で走ってるみたいなものだから。すでに無理やり回してるだけだということに気付いてほしい。

(続く)

※本企画は、現役教員の声をそのまま記事化したものです。実際の労働環境などは自治体、学校などによって異なる可能性があります。