秋田弁護士刺殺 妻「夫は戻ってこない。複雑」 最高裁上告棄却、県警の過失確定

秋田市の津谷裕貴弁護士(当時55歳)が2010年に刺殺された事件を巡り、遺族が現場に駆け付けた警察官らの過失を訴えて県などに損害賠償を求めた訴訟は、最高裁が県側の上告を受理せず、県などに計約1億6480万円の支払いを命じた仙台高裁秋田支部判決が確定した。原告遺族と弁護団は20日、記者会見を開き、県警が司法の判断を厳粛に受け止めるよう求めた。
最高裁の19日付の上告不受理決定を受け、津谷弁護士の妻の良子さん(62)と弁護団は20日午後、秋田市内で記者会見した。
良子さんは「これまで支援を頂いた方々に心からお礼を申し上げたい」と感謝の言葉を述べ、「警察が適切に対応していれば今も夫が生きていたはずと切なくなるが、夫は戻ってこない。複雑な気持ち」と心境を語った。
最高裁の決定は20日昼過ぎに弁護団を通じて知ったといい、「すぐに仏壇に線香を上げ、『決定が出たよ』と夫に報告しました」と声を詰まらせた。また、法廷などに出る際、いつも身に着けてきた夫の遺影が収められた胸のペンダントに目をやり「今日が最後だと思い、夫に一緒に来てもらった」と話した。
その上で「刑事裁判を含め、長い9年間だったが、裁判が夫の供養になると信じ取り組んできた」と明かし、県警に対して「(市民が)危険にさらされた場合、110番に頼らざるを得ない。市民の期待に応えるような対応をお願いしたい」と述べた。
弁護団の吉岡和弘代表は「今後の警察活動に影響を与える極めて意義深い決定。秋田県警にとどまらず、全国の警察がこの決定を真摯(しんし)に受け止めて、日々の警察活動にまい進してほしい」と述べた。
【高野裕士、中村聡也、下河辺果歩】
県警対応の再検証、焦点
明確に県警の過失を認定した仙台高裁秋田支部判決が確定する。遺族側は今も、現場に駆け付けた警官の対応の是非などについて詳細な再検証を県警側に求めており、県警の対応に焦点が移る。
17年10月の秋田地裁判決は「秋田県には凶悪事件が少なく、突発的な事案に対応できるだけの訓練や意識の涵養(かんよう)が十分でなかった」と県警の事件対応能力不足を批判しつつも県への賠償請求は退ける内容だった。
一方、今年2月の仙台高裁秋田支部判決は、現場に駆け付けた警官の対応を詳細に検討した上で、侵入者を識別しないまま、いきなり津谷弁護士を取り押さえようとした判断などを誤りと認定。
警官には津谷弁護士をパトカーの中など安全な場所に避難させる時間もあったなどとした上で、「警察官は逮捕よりも国民の生命身体の保護を優先すべきだ」と判示し、「客観的に見て失態を重ね、最悪の事態を招いた」と県にも約1億6480万円の賠償を命じた。【高野裕士】