「医療費還付」に注意 無人ATMに行かせる手口の詐欺 首都圏で急増

「医療費が還付される」という作り話を持ちかけて現金自動受払機(ATM)に現金を振り込ませる「還付金詐欺」が東京都内を中心に急増している。以前からある手口だが、特に無人のATMが使われているケースが目立つ。オレオレ詐欺などの手口の被害は減っており、詐欺グループが被害者や金融機関職員らと接触しない方法に目を付けて被害が集中している可能性があり、警察が警戒を強めている。
<スーツ→ポロシャツ>特殊詐欺受け子がカジュアルに
警察庁によると、還付金詐欺の統計は2006年からあり、全国の被害は08年が最多で4539件、被害総額は約47億4000万円だった。東京都内も同年が1083件、総額約11億2300万円で過去最多を記録した。
その後の被害は減っていたが、都内の被害が17年ごろから目立つようになり、今年は11月末現在で1145件、被害総額は約16億3400万円に上り、件数、額ともにすでに年間の過去最多を更新している。埼玉、千葉、神奈川と合わせた10月末の4都県の被害額は、全国被害(27億3000万円)の約8割に達する。この影響で、全国の被害額の合計も今年はすでに昨年を上回っている。「還付金」のほか「オレオレ」や「キャッシュカード詐欺盗」を含めた特殊詐欺全体の全国被害額は約249億円(10月末現在)に達する。
還付金詐欺の誘い文句などに大きな変化はないのに、なぜ増えているのか。背景にあると考えられるのが都心部のATMの多さと犯人側の警戒心だ。都内のATMは全国最多の約1万3700カ所に上り、徒歩圏内に複数のATMがある地域が多く、詐欺グループにとっては短時間で金を振り込ませることができる。
さらにだまされていることに気づいていないふりをして、現金やカードを受け取りに来た「受け子」を検挙する警察の手法が浸透。犯人側が被害者や金融機関職員と顔を合わせない手口に注目した可能性がある。捜査関係者は「警察官らと顔を合わせないと捕まるリスクが減るため、ほかの手口から移行している部分があるのではないか」と指摘する。実際、都内の今年上半期の被害件数の76%は無人のATMが使われていた。
ATMは金融機関によって操作方法が異なるが、詐欺グループは電話で普段利用している銀行などを尋ねるケースが多い。警察幹部は「金融機関ごとの対応マニュアルがあるようだ。誘導したATMで残高を確認させることで被害額も増える傾向にある」と話す。
警視庁は、振り込まれた現金は暴力団らに渡っている可能性が高いとみている。今月6日は、還付金詐欺事件の関係先として静岡県にある稲川会系組事務所を家宅捜索するなど捜査を強化しているが、首謀者などの摘発に至っていないのが現状だ。
警視庁幹部は「電話で指示されて医療費などがATMで還付されることは絶対にない。ATMに誘導されたら、すぐに警察に相談してほしい」と呼び掛けている。【佐久間一輝】