検挙1件で被害激減も 捜査員は今日も街に 埼玉県警「街頭窃盗犯係」発足10年

ひったくりやナンバー盗といった屋外で発生する窃盗事件を専門に捜査する「街頭窃盗犯係」が埼玉県警捜査3課に発足して10年を迎えた。窃盗の常習犯は手口が巧妙で、犯行は広域にわたり、被害は数百件に上ることも多い。「検挙に勝る抑止なし」と、捜査員らは今日も街に繰り出す。【中川友希】
街頭窃盗犯は屋外が現場となる窃盗犯のことで、ひったくりや自転車盗、車上狙い、ナンバー盗などがある。誰もが被害に遭う可能性がある身近な犯罪で、県民の「体感治安」に直結している。
県警の街頭窃盗犯係は2009年10月、当時多発していたひったくりの捜査を強化するために発足した。現在は10人が配置されている。関東地方の警察ではひったくり専門の係はあるが、街頭窃盗犯係を設置しているのは埼玉のみだという。
係員の堀越俊史(よしふみ)警部補(42)と宇佐美綾香巡査部長(34)の朝は前日発生した事件の分析から始まる。県内各署の当直からの報告などをもとに、手口や発生地域を分析。係として捜査に乗り出す場合は現場に向かい、証拠品を集める。
重要な手がかりとなる防犯カメラ映像は保存期間が2週間ほどの場合もあり、時間との勝負だ。犯人の逃走方向へ「リレー」するように1軒ずつ訪ね、数日間にわたって捜し歩くこともある。入手した映像に怪しい人物が映っていないか、一つの防犯カメラにつき数時間の映像を見るという。宇佐美巡査部長は「犯人を絶対見つけるという執念で取り組んでいる」と話す。
証拠に捜査員の勘が結びつき、検挙につながった事例もある。昨年さいたま市内で連続発生したひったくり事件だ。犯人とみられる男が盗んだキャッシュカードを使い、ATM(現金自動受払機)で現金を引き出している防犯カメラ映像があった。顔は不鮮明だったが、堀越警部補は過去の事件関係者の顔写真と1枚ずつ照らし合わせた。「似ている」。ピンとくる顔があった。
浮上した男の家を1人で張り込んだ。勘が裏付けられた。男は犯人のものと似た自転車に乗り、似た服装で出かけた。さらに張り込み中にひったくりを現認し、逮捕につながった。堀越警部補は「会心の一撃だった。標的を絞り、慎重に犯人かどうかを確かめて検挙に至った」と振り返る。
街頭の窃盗事件は、1件の検挙で、数十件もの被害を食い止めることができるケースが多い。4~8月に県内や東日本で多発した「ご当地ナンバー」盗難事件では、県内の被害認知件数は4月29件▽5月138件▽6月38件▽7月18件――だったが、県警が容疑者2人を逮捕したことを境に8月4件▽9月5件――と激減した。
堀越警部補は「被害が増えていくと、県民に顔向けできない。『捕まえて当然』という気持ちで臨んでいる」。宇佐美巡査部長は「先輩の捜査手法を盗みながらレベルアップしたい」と話した。