新潟を中心に活動するアイドルグループ「NGT48」の元メンバー、山口真帆さん(24)を襲ったとして、暴行容疑で男性ファン2人が逮捕されてから1年がたった。
2人は昨年末に不起訴処分になったが、運営会社「AKS」(東京)が3千万円の損害賠償を2人に求めて起こした民事裁判は越年する見通しだ。真相は依然分からず、ファンらの信頼を取り戻す道のりはまだ見えてこない。
◆メンバーの関与は?
“事件”が明らかになったのは今年1月。山口さんが会員制交流サイト(SNS)と動画サイトで告白し、他のメンバーが関与していると涙ながらに訴えた。国民的アイドル、AKB48グループの一員に突如浮かび上がった疑惑。AKSが立ち上げた第三者委員会への聴取に男性2人が応じず、調査結果は実態解明とはほど遠い内容になった。
3月に新潟市内で開いた記者会見で、AKSは「メンバーの関与はなかった」としながらも歯切れの悪い説明に終始した。しかも、会見中に山口さんが「なんで嘘ばかりつくんでしょうか」とツイッターで反論し、事態は悪化。NGT48は活動を事実上停止し、イベントや広告に起用してきた自治体やスポンサー企業は離れていった。
メンバーの関与の有無をめぐり、やっていないことを立証する「悪魔の証明」を求められたAKSは4月、「真実を解明するため」として新潟地裁に提訴した。裁判では、争点である男性2人の言動と損害の因果関係よりも、メンバーの関与が注目を集めた。
◆続く「負の連鎖」
山口さんがメンバーの関与を唱えた主な根拠は、男性2人のうちの1人が逮捕間際に問い詰められて口にしたメンバーの名前だ。しかし、2人は地裁に提出した陳述書で「事件に関与したメンバーの名前を挙げたものではない」と反論。山口さんとは以前から「つながり」と呼ばれる私的な交流があり、暴行もしていないと主張した。山口さんは強く否定しており、地裁が陳述書をどのように認定するかが、今後の成り行きを左右するかもしれない。
一方、関与が取り沙汰されたメンバーは真相が分からない状況にもかかわらず、インターネット上で「黒メンバー」などと呼ばれ、激しいバッシングを受けた。彼女らのSNSの一部が引用され、2人とのつながりや山口さんへのいやがらせと結びつけられた。
ネット上でメンバーを誹謗(ひぼう)中傷した人物を特定するため、AKSは発信者情報の開示を請求。メンバーの生命や身体の危険をほのめかした数件について被害届を出した。「常に警察に相談している」(AKS関係者)といい、メンバーを脅した疑いなどで逮捕者が実際に相次いでいる。
さらに、山口さんの主張を支持するファンと、メンバーの潔白を信じるファンがネット上で中傷合戦になるなど「負の連鎖」が続いている。
AKSは山口さんへの出廷要請を検討中で、法廷での証言や陳述書の提出もあり得る。また、山口さんが男性2人の不起訴は不当だとして検察審査会に審査を申し立てることもできるはずだが、いずれにしても彼女が再び傷つくことを考えると、慎重にならざるを得ないだろう。次回裁判の弁論準備手続きは来年1月29日に行われる予定だ。
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【用語解説】NGT48メンバーの暴行問題
昨年12月8日、当時はNGT48のメンバーだった山口真帆さんの新潟市内の自宅マンションで、山口さんに暴行した容疑で男性ファン2人が新潟県警に逮捕された。同月28日に不起訴処分になった後、山口さんがSNSなどで今年1月8日に告白し、明らかになった。
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◆記者の独り言
山口さんがSNSで“事件”を告白したときから、取材を続けている。事態は何度か沈静化へ向かったが、その度にAKS側やメンバーがミスを犯すなどして再燃し、いまに至っている。
山口さんは5月にNGT48を“卒業”し、大手芸能事務所に移った。写真集を発売するなどしたが、活動は限られている。一方、NGT48は8月に通常公演を再開したものの、活動は昨年の半分にも満たない。
NGT48は1期生の平均年齢が20歳。山口さんは24歳。若い彼女たちにこれ以上足踏みをさせるのは、誰にとっても望ましいことではないだろう。 (池田証志)