◆93匹の猫を飼育し、多頭飼育崩壊を起こしてしまった
多頭飼育崩壊という言葉を聞いたことがあるでしょうか。ペットの猫に不妊手術や去勢手術を施さなかったばかりに、どんどん子猫が増えてしまい、飼育ができなくなることを言います。
猫を保護する活動を続ける「たんぽぽの里」の石丸雅代代表から「神奈川県で93匹の猫を飼い、多頭飼育崩壊してしまった現場がある」と聞いた筆者は、早速現場に向かうことにしました。
◆土砂と見まがうような糞尿の山
神奈川県のとある住宅街にその家はありました。一見すると何の変哲もない古びた一軒家なのですが……。
扉を開けるとそこには異様な光景が広がっていました。猫の糞尿が何十センチもの厚さになり、床を覆い尽くしているのです。ゴミも散乱しています。ここで飼育されていた猫の中には、ノミがたかって貧血になってしまった猫もいたそうです。
とても生活ができるような状況ではありませんが、猫の飼い主だった50代の女性は数か月前までここに住んでいたといいます。飼い主のご家族が「ホームレスの人の方が清潔な生活をしているのではないでしょうか」と話していたのが印象に残りました。
なぜこのようなことになってしまったのでしょう。飼い主の女性は、元々猫が好きで、一人暮らしを始めてから猫の飼育を開始。不妊・去勢手術をしなかったことで、頭数が増えてしまったようです。
次第に匂いや鳴き声が迷惑だと近隣から苦情が入るようになり、神奈川県内の動物愛護センターがご家族に連絡を入れたのが去年のことです。ご家族は、行政と連携し、弁護士や精神科医にも相談。今年の秋には、飼い主の女性を病院に連れていくことを決意します。現在は、病院に入院しており、飼育されていた猫は無事に保護されました。
◆家族が猫を預かるも「このままでは生活が崩壊してしまう」
保護された93匹の猫は、動物愛護センターとご兄弟の自宅、たんぽぽの里の計3か所で預かっています。
愛護センターでは、およそ30匹の猫がゲージの中で保護されています。全国から送られてきた支援物資も活用されています。
しかしいつまでもセンターで預かるわけにもいきません。センターの所長は「本来は12月末までということでお預かりしましたが、里親が見つかっていません。2月末までには何とかしたいという気持ちでいます」と話していました。
残りの40匹はご兄弟が神奈川県内の自宅で預かっています。中には、神経の病気に罹患し、体の揺れが止まらなくなってしまった猫も。
「独立した娘が使っていた部屋で40匹の猫を飼っています。とてもかわいいのですが、朝はエサやりと掃除に3時間かかります。昼も様子を見に行く必要がありますし、夕方にもご飯や水をあげるのに2時間はかかります。家族にお弁当を作ってあげる余裕がなくなってしまいました。
引き取った当初は、下痢や栄養失調で入院する子も多く、不妊手術も必要でしたから、合わせて200万円以上の出費になってしまいました。現在でも、エサやトイレの砂にお金がかかっていますし、とてもこの生活は続けられません。しかし殺処分になりかねないと思うと、手放すこともできません。早くきちんとした里親を見つけて、引き取っていただきたいと思っています」
◆「飼えないのに抱え込まないで」
たんぽぽの里が運営する病院「たんぽぽあだぷしょんぱぁく」でも、およそ10匹が保護されています。
たんぽぽの里の石丸代表は、毎年何件もこのような現場に出くわすといいます。
「猫が好きでかわいそうだと思って、ついつい拾ってきてしまい、頭数が増えてしまう人が多いようです。きちんと飼えないのであれば、抱え込まないことが大切です。
最初はきちんと世話をしていても、何かをきっかけに調子を崩していってしまうことがあります。例えば、飼い主が体調を崩して1~2回世話を休んだだけで、掃除が大変になってしまいます。子猫の世話も大変ですしね。猫に振り回されて、調子を崩し、どうしたらいいのかわからなくなって世話ができなくなってしまうというケースがほとんどです。
現在は私を含め多くのボランティアが無償で活動していますが、もっと行政に積極的に動いてほしいと思います」
<取材・文/HBO編集部>