【平井 美穂】住宅ローン「金利の低さ」だけで選ぶと、こんな悲劇が起こります… ローンの借り方・金利の選び方のコツ

住宅ローンは難解複雑です。商品の種類がやたら多く、仕組みはわかりづらい。おまけに「住宅ローンを組む」という行為は、ほとんどの人にとってはじめての経験。「よくわからないから営業マンにすすめられるまま決めた」という人もいるでしょう。

しかし、住宅ローンは借り方を間違えると思わぬ損をすることがあるので注意が必要です。今回は、これまで5000件以上の住宅相談にのってきた元銀行員のファイナンシャルプランナーが、住宅ローン選びにおいてよくある間違いと正しい借り方をお伝えします。
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●住宅ローンの誤解(1)一番低い金利の商品が最もお得……とは限らない
住宅ローン選びにおいて金利は最も重要なポイントです。
最近は、低い金利の商品を見つけたいと思ったら、インターネット上にある住宅ローン比較サイトを確認すれば、最低金利の商品を見つけることができる便利な世の中になりました。
ところが、多くの人がハマりがちなのが、「見た目」の金利が低い商品を選び、結果として損をしてしまうという事態です。実は、金利が低いことで上位にランキングされている商品でも、借り入れからしばらく経つと金利が上がるものもあるので気をつけてください。具体的な商品例でみてみましょう。
例えば、三菱UFJ銀行のネット専用住宅ローンで2019年12月に借り入れした場合、「3年固定金利」は0.39%、「変動金利」は0.525%です。一見すると3年固定金利の方が変動金利よりも金利が低く有利に見えます。しかし、決してそうとは言えません。どういうことでしょうか。
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まず3年固定金利の場合、3年間の固定期間終了後の「金利優遇」が▲1.85%となります。これは、3年後に金利を再び選択する際、その時点の「基準金利」(これは金融機関ごとの住宅ローンの「定価」のようなものです)から1.85%引いてもらえるということです。
一方、変動金利は、最初から最後まで金利優遇が▲1.95%。変動金利の基準金利は半年ごとに見直しされており、現在の基準金利は2.475%なので、基準金利2.475%-金利優遇1.95%=0.525%となり、当初の借入金利が0.525%というわけです。
仮に今後も金利が変わらず変動金利の基準金利が2.475%のままであるという前提で考えてみましょう。3年固定金利を選択した場合は3年後に変動金利を選択するとします。すると、4年目以降の金利は0.625%(基準金利2.475%-金利優遇1.85%)となり、それまでの0.39%から+0.235%もアップしてしまいます。
一方、変動金利を選択した場合は、金利が変わっていない前提ですので3年後も変わらず0.525%です。4年目以降の期間が長いことを考えたら、変動金利の方が有利といえます。
「シミュレーション」がとにかく大事
実際に商品を決める時には、総支払額の試算をして比較してみるのが一番です。先ほどの3年固定金利と変動金利の例で返済額の差を比べてみましょう。5000万円を35年元利均等返済で借ります。
〈3年固定金利〉当初3年間(0.39 %):月々返済額12万7376円4年目以降(0.625%):月々返済額13万2133円35年間の総返済額:5532万円
〈変動金利〉通期(0.525%):月々返済額13万345円35年間の総返済額:5475万円
変動金利の方が当初金利は0.525%と高くても、4年目以降には逆転して低くなり、総返済額を57万円減らすことができます(もちろんこれは、金利が変動しないことが前提ではありますが)。

その他、諸費用にも注意が必要です。金利が少し高くても諸費用が安いために総支払額は安く収まるケースもあります。住宅ローンを選ぶときには、全期間における金利優遇条件やローンに関わる諸費用もすべて含めて考慮し、最終返済までの支払い総額を比較シミュレーションしてみるとベストな商品がみつかるでしょう。
住宅ローンの誤解(2)みんな変動金利で借りている……わけではない
住宅展示場でローンの返済額を試算しようとすると、変動金利で計算されるケースが多くなっています。「みんな変動金利で借りてますよ」とお決まりのトークで積極的に変動金利をすすめる営業マンもいるようです。では、実際に借りている人たちが本当に選んでいる金利が何なのか、客観的なデータをもとに確認してみましょう。
住宅金融支援機構の調査では、2018年10月~2019年3月に住宅ローンを借りてマイホームを購入した人のうち、約6割が変動金利を選び、残りのおよそ4割が固定金利を選んでいます。2016年度には変動金利を選ぶ人が48%、固定金利を選ぶ人が52%で、この頃と比較すると、変動金利を選択する人はたしかに増えています。これは、2016年にマイナス金利が導入され金利先高観が後退した影響でしょう。
しかし、変動金利を選ぶ人が増えたとはいえ、今でも4割の人は固定金利を選択しているのです。みんな変動金利を選んでいるわけではありません。

固定金利か変動金利か、考え方の基準
将来の金利が予測できない以上、どちらが正解かは結果論でしか分かりませんが、今後のライフプランや家計の状況などによって「変動金利向き」か「固定金利向き」か判断することはできます。
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例えば、小ぶりのマンションを購入した新婚夫婦が、10年後には買い替えや実家で同居する予定があるといったケースでは、変動金利や10年固定金利などが向いているでしょう。10年後に売却資金で完済する可能性が高いローンの金利を、10年を超える長期間固定する必要はないからです。
あるいは、40歳で住宅を購入する会社員の人が、20年後には退職金や個人年金などまとまったお金が入り、その資金で完済するといった場合は、20年固定も選択肢の一つです。または、30歳で永住する予定の戸建てを新築した子育て中の夫婦が、敢えて繰り上げ返済はせずに35年かけて返済する計画ならば35年固定が向いているかもしれません。返済期間が長ければ長いほど、変動金利を選択するリスクは高まります(金利が大きく変動する可能性があるため)。今の「固定金利の低さ」と「変動金利のリスク」を天秤にかけた場合、“35年間金利を固定した方が得策”とする考え方です。
このように各家庭によって合う金利はまちまちであり、たとえみんなが変動金利を選んでいたとしても、自分たちにあてはまるかどうかは別問題でしょう。
「ストレス」や「管理能力」も金利選びの決め手に
性格的に固定金利が向いている人もいます。数年前、不動産会社の提携ローンで変動金利のローンを組み新築マンションを購入した人が、入居後1カ月も経たないうちに「金利が上がるのが心配で夜眠れない」と相談にやってきたことがありました。
当時、アメリカで金利が連続して上昇しており、日本にも影響がでるのではと金利上昇ムードが少し高まっていた時だったのです。結局、固定金利に借り換えたのですが、諸費用が100万円以上かかりました。わずか1カ月で借り換えをするくらいならば最初から固定金利で借りておけば100万円が無駄にならずに済んだのに…といった事例でした。

また、13年ほど前、筆者が銀行で融資業務をしていた時に、短期間で金利が0.5%上昇したことがありました。この時、変動金利で借りていた人たちが焦って固定金利に借り換えをしにきたのですが、皮肉なことにその後金利は再び下がったのです。するとまた固定金利から変動金利に「二度目の借り換え」をする人も現れました。
実際、変動金利を選択している時に金利が少しでも上昇局面に向かうと、思いのほか焦るものです。一方で、金利が変動した時には機敏な行動が求められます。常日頃から金利情勢をウォッチし、いざという時には機敏に行動できるかどうかも金利選びの決め手となるでしょう。
住宅ローンの準備は時間に余裕をもって
金利を選ぶ際には、自身のライフプランや家計に対する適合性、それぞれのメリット・デメリットなどを把握した上でシミュレーションを行い、ぴったり合う金利を選ぶことが重要です。返済途中で状況が変わった時には金利を選び直す必要も出てくるでしょう。

住宅ローンはとても複雑で、ぱっと見ただけでは見落としやすいトラップがあります。マイホームを購入するときには大急ぎで決断を迫られるケースもありますが、慌てて決めて失敗するようなことは避けたいものです。金利のほかにも、借入額や返済期間・返済方法をどうするかといった重要なポイントは、前もって勉強をして決めておくようにしてください。