東京都青梅市は、3月に閉館した「吉川英治記念館」(同市柚木町)を、来年9月7日の命日「英治忌」に、市の施設として再開を目指すことを明らかにした。
小説家、吉川英治(1892~1962年)は、「宮本武蔵」や「新・平家物語」で知られる。生まれは横浜市だが、戦時中の44年に同市に疎開し、約10年生活した。死去後の77年、住居や庭などが「記念館」となり、90年代には年間17万人が訪れた。しかし、ファンの高齢化などで入場者が減少し、今年3月に閉館した。
記念館の約5000平方メートルの土地・建物と約1万1400点の展示資料について、館を所有・運営する公益財団法人「吉川英治国民文化振興会」(文京区)が17年に市に寄付を申し出て、市が取り扱いを検討してきた。
市は、資料を第三者に譲渡しないことなどを条件とする「負担付き寄付」を受け入れる議案を今月の市議会に提出。記念館全体を市の財産とした後、来年3月の議会に「記念館設置条例」を提出する方針だ。
浜中啓一市長は「記念館周囲にはかんざし美術館などの観光施設があり、(観光客回遊の)ネットワークを構築したい。従来は学術的位置付けだったが、観光施設として入館者を増やす努力をする」と話している。【黒川将光】