「パフォーマンスにしか見えなかった」…相模原殺傷初公判で被害者家族ら憤り

相模原市の知的障害者福祉施設「津久井やまゆり園」で入所者ら45人が殺傷された事件から3年半。
8日に横浜地裁で始まった裁判員裁判で、殺人罪などに問われた元職員植松聖(さとし)被告(29)が法廷に立ち、起訴事実を認め、謝罪の言葉を述べた。だがその直後、奇声をあげて刑務官らに取り押さえられ、初公判は10分余りで休廷。再開後の法廷に被告の姿はなく、凶行の動機や背景の解明を願う被害者家族らは憤りをあらわにした。
初公判は予定より25分遅れの午前11時25分頃から始まり、植松被告は腰の辺りまで伸びた髪を束ね、黒いスーツに紺色ネクタイ姿で現れ、一礼した。
青沼潔裁判長から起訴状と違うところがあるかを尋ねられた植松被告は、淡々とした口調で「ありません」。弁護側は責任能力を争う意見を述べた後、青沼裁判長に被告からの追加発言の許可を求めた。「簡潔にであれば」と裁判長が認めると、植松被告は証言台の前で「皆さまに深くおわびします」と、立ったまま謝罪した。その後突然、口元に手をやり、右手の小指をかみ切るようなしぐさをした。うめき声のような奇声を発した植松被告を、刑務官ら4人が押さえ込んだ。植松被告は床に倒れ、抵抗するように暴れ続けた。
裁判長は即座に休廷を宣言。裁判所職員が「傍聴人は速やかに退廷してください」と繰り返し大声で促したが、被告の様子を見ようと傍聴人が次々と立ち上がり、法廷は騒然となった。
横浜地裁は休廷理由を「被告が小指をかみ切るような動作をしたため」と説明した。退廷を命じられた被告は勾留施設に戻り、午後1時20分頃から再開した審理には出廷しなかった。
事件で長男の一矢さん(46)が重傷を負った尾野剛志さん(76)、チキ子さん(78)夫婦は被害者参加制度を利用し、遺族や家族ら向けに用意された傍聴席にいた。事件直後から実名を公表してきた家族だ。
職員だった頃は好青年に見えた植松被告がなぜ、これほど障害者への憎悪を募らせたのか。少しでもその答えを知りたいと、裁判を待ち続けた剛志さんは前方の席に座り、被告の言動に神経を集中させていた。その姿を記録しようとイラストを描き始めた直後、奇行を目の当たりにした。
閉廷後に報道陣の取材に応じた剛志さんは「心神耗弱、心神喪失の状態なんだとアピールするパフォーマンスにしか見えなかった」と批判。やまゆり園の入倉かおる園長(62)も閉廷後、植松被告について、「何と浅はかで愚かなんだと思った。初公判の場にずっと身を置く度胸もなかったのか。謝罪の言葉はあったが、心を開いて償う態度を示したとは思えない」と語気を強めた。
元東京高裁部総括判事の門野博弁護士は植松被告の不規則な行動について、「今後まともに被告人質問ができない可能性もあり、どうしたら落ち着いて公判ができるのか検討する必要がある。想定より日程が延びることも考えられる」と話した。
植松被告の弁護人の一人は閉廷後、「コメントできない」と取材に応じず、足早に去った。