東芝と東北大は、原理的に解読不可能とされる「量子暗号」の通信技術を使い、遺伝情報である全ゲノム配列のデータを7キロ離れた場所へ伝送することに成功したと発表した。データは24人分の全ゲノム配列で合計数百ギガバイトを超えるといい、東芝は「世界最大の容量を世界最速で送った」としている。
原子や電子などミクロな世界に関する理論「量子力学」を活用した量子コンピューターの研究が、世界的に加速している。実現すると現在よりも計算が飛躍的に速くなるため、現在インターネット上で用いられている暗号は簡単に解読されてしまうと考えられている。これを防ぐことができるのが「量子暗号」だ。
量子暗号のデータは、光の粒である「光子」に乗せて送受信する。光子のデータは、第三者が不正に読み取ろうとすると、量子力学に基づいて光子の状態が変化して暗号として使えなくなる。このため確実に解読を防ぐことができ、通信の安全性が保証される。
東芝などは2017年、10キロの距離を当時の世界最速(10Mbps)で伝送する高速量子暗号通信技術を開発した。今回はこの技術を使い、東芝と東北大の施設(いずれも仙台市)の間を結んだ7キロの光ファイバー回線でゲノム情報を伝送した。
ゲノム配列の解析には約3日間かかったが、解析を終えたデータを逐次暗号化して送ることで、解析終了後2分以内に全データの伝送を終えた。大容量データの伝送やゲノム研究に使える実用レベルだと確認できたという。
量子暗号を送るには、データの誤りの訂正処理などが必要なため、インターネットを使った通常の暗号通信と比べて通信速度が遅いのが課題とされている。【信田真由美】