「司法と行政の両面で市民を支える」弁護士職員が活躍する明石市で起きた変化

法律事務所の職員ではなく、地方公務員として働く弁護士が増えている。日本弁護士連合会の統計によると、2019年6月時点で、全国120自治体で184人が職員として働く。兵庫県明石市では現在、10人が在籍し、市民や市職員への法律相談や犯罪被害者等支援、離婚前後における子どもの養育支援、学校現場でのいじめ対応など、幅広い業務にあたる。自治体内に、一般職員と同じ立場で働く弁護士がいることは、様々なメリットがあるようだ。(ライター・南文枝) ●法務だけでなく、政策立案にもかかわる 兵庫県南部に位置し、大阪からは電車で約40分かかる明石市は人口約30万人。2012年度から弁護士資格を持つ職員の採用を始めた。11年に市長に就任し、自らも弁護士資格を持つ泉房穂市長が、市民相談への対応や、庁内のコンプライアンス(法令順守)制度などを強化しようと考えたのがきっかけだ。 2012年度は、5年の任期付職員として5人を採用。2017年度以降は専門性を継続的に発揮してもらうため正規職員で募集するようになった。任期付から正規職員として採用されるケースを含め、現在在籍する10人のうち7人が正規職員として働く。2020年度からは、さらに2人が加わる予定だ。内定者を除いても、これまでに採用した職員はのべ15人に上る。 書類選考と面接で採用し、実務経験年数や実績、資格などに応じて次長級ないし主任級の役職に格付けする。一例を挙げると、次長級の場合、月給約41万円(年収約860万円)だ。弁護士会の会費などは自己負担となる。 一般的に、自治体職員の弁護士は、総務・法務部門に配属されることが多いが、明石市の場合は、市民相談室や市長室、あかし保健所、生活支援室、あかしこどもセンター、教育委員会、総務管理室と配属先は多岐にわたる。市民や職員向けの法律相談や訴訟対応など一般の弁護士業務に近いものだけではなく、政策立案などにも取り組んでいるのが特徴だ。 ●市民の自宅を訪れて、病気で寝ている枕元で相談を受けることも 市民相談室長(次長級)の能登啓元さんは、大阪の法律事務所勤務を経て2012年、任期付職員として入庁。2017年度からは正規職員として採用された。応募のきっかけは、法律事務所時代、市民向けの法律相談で生活保護や離婚、児童扶養手当など行政手続きが絡む相談を受け、「行政の内部に入ってこれらの手続きについて詳しく知ることができれば、より丁寧に相談に対応できるのではないか」と考えたことだった。
法律事務所の職員ではなく、地方公務員として働く弁護士が増えている。日本弁護士連合会の統計によると、2019年6月時点で、全国120自治体で184人が職員として働く。兵庫県明石市では現在、10人が在籍し、市民や市職員への法律相談や犯罪被害者等支援、離婚前後における子どもの養育支援、学校現場でのいじめ対応など、幅広い業務にあたる。自治体内に、一般職員と同じ立場で働く弁護士がいることは、様々なメリットがあるようだ。(ライター・南文枝)
兵庫県南部に位置し、大阪からは電車で約40分かかる明石市は人口約30万人。2012年度から弁護士資格を持つ職員の採用を始めた。11年に市長に就任し、自らも弁護士資格を持つ泉房穂市長が、市民相談への対応や、庁内のコンプライアンス(法令順守)制度などを強化しようと考えたのがきっかけだ。
2012年度は、5年の任期付職員として5人を採用。2017年度以降は専門性を継続的に発揮してもらうため正規職員で募集するようになった。任期付から正規職員として採用されるケースを含め、現在在籍する10人のうち7人が正規職員として働く。2020年度からは、さらに2人が加わる予定だ。内定者を除いても、これまでに採用した職員はのべ15人に上る。
書類選考と面接で採用し、実務経験年数や実績、資格などに応じて次長級ないし主任級の役職に格付けする。一例を挙げると、次長級の場合、月給約41万円(年収約860万円)だ。弁護士会の会費などは自己負担となる。
一般的に、自治体職員の弁護士は、総務・法務部門に配属されることが多いが、明石市の場合は、市民相談室や市長室、あかし保健所、生活支援室、あかしこどもセンター、教育委員会、総務管理室と配属先は多岐にわたる。市民や職員向けの法律相談や訴訟対応など一般の弁護士業務に近いものだけではなく、政策立案などにも取り組んでいるのが特徴だ。

市民相談室長(次長級)の能登啓元さんは、大阪の法律事務所勤務を経て2012年、任期付職員として入庁。2017年度からは正規職員として採用された。応募のきっかけは、法律事務所時代、市民向けの法律相談で生活保護や離婚、児童扶養手当など行政手続きが絡む相談を受け、「行政の内部に入ってこれらの手続きについて詳しく知ることができれば、より丁寧に相談に対応できるのではないか」と考えたことだった。