外国人客が、ホテルやゴルフ場の「備品」を持ち帰って困っています テレビや冷蔵庫に枕、便座まで

なんでそんなものまで……。外国人客が増えるにつれ、日本のホテルやゴルフ場からはいろいろなモノがなくなっている。文化の壁か、よほど日本製が好きなのか。でもそれ、日本の常識だと「泥棒」です。発売中の『週刊現代』が特集する。
「うちの旅館の玄関に置いてあった信楽焼のたぬきの置物が、忽然と姿を消していたんですよ。高さ40僉⊇鼎5圓呂△辰燭里法帖帖
近所の旅館が店先に置いといたら『盗まれた』っていうので、うちは玄関に移動させていたんですけど、それでもダメでした。
当日宿泊していたお客さんは全員外国人だったので、そのうちの誰かが持って帰ってしまったんだと思っています」(石川県金沢市の老舗旅館の女将)
’19年に日本を訪れた外国人観光客の数は、およそ3188万人(国土交通省調べ)。東京五輪が開催される’20年には3400万人を超えると言われ、インバウンドによる経済効果は、いまや日本になくてはならないものだ。
ただその一方で、中国などを中心とした外国人観光客と日本人の「文化」や「価値観」の相違は、観光業者にちょっとした悩みをもたらしている。
何しろ彼らは、あらゆるものを気軽に「持ち帰って」しまうのだ。
「インバウンド客の持ち出し被害については、まだ残念ながら大規模な統計調査は行われていません。
ただ、かつて1年間365日、すべてホテルへチェックインするというミッションを自らに課していた私の経験からしても、インバウンドの増加に従い、ホテル関係者から持ち出し被害の話を聞く頻度が増えたのは確かです」(ホテル評論家の瀧澤信秋氏)

いったいどんなものがなくなってしまうのか。
京都府宇治市内の中規模ホテルの支配人がこう語る。
「多いのは、浴衣やドライヤーなどです。ドライヤーは1個3000円くらいでしょうか。これまでに掛け軸や花瓶、掛け布団などがなくなってしまったこともあります。
花瓶は1万円、掛け軸は3万円ほどです。掛け布団の時は、『こんなものまでよく盗むな』と思ったのでよく覚えています。
ただ損害額がそこまでではないので、見て見ぬふりをしています。圧倒的に中国人が多いのですが、あちらの旅行代理店と関係がこじれたら困りますし、『返して』と言って返ってくるわけではないので……」
タオルや化粧品、整髪料などのアメニティグッズに関しては、ある意味で持ち出しやすく、日本人の客でもマナーが悪い人は持ち帰ってしまう場合もあるかもしれない。
しかし外国人客の場合、もっと強烈な、「何が何でもコレを持ち帰る」という、確固たる意志を感じさせるのが特徴だ。
「灰皿やカップ等の持ち帰りは非常に多く、ドライヤーの持ち出しも、以前からよく聞く話でした。そのため、最近はドライヤーのコンセントを壁の中に埋め込んでしまうホテルもあります。
ところが、コードを切断してまで持ち出そうとした外国人客がいて、断線部分から煙が出て、ちょっとしたボヤ騒ぎになったこともあるようです」(前出・瀧澤氏)

高級ホテルなどでは、枕やシーツ、枕カバーなども狙われがちだという。
質にこだわるホテルの場合、枕1つで3万円などというケースがザラ。これらは簡単にスーツケースなどに入れて隠せることもあり、持ち出し被害に遭遇しがちだ。
Photo by iStock
その一方で、とても持ち出せそうもないものまで、敢然と持ち去ってしまう外国人客もいる。
〈6日間の予定で日本を訪れていた中国人カップルが、愛知県常滑市の東横イン中部国際空港本館に宿泊した際、室内ベッドの下に予備として置かれていたトイレのリモコン付き便座を持ち去っていたことがわかった。便座がないことに気づいたホテル側がツアーガイドに連絡、警察にも通報され事件が発覚した〉
これは’16年にネットニュースで報じられた、中部国際空港内にあるホテルで起きた事件だ。リモコン付き便座とは、いわゆるウォシュレット的な便座のこと。
持ち出したのは中国人カップルで、その後、何食わぬ顔で富士山などを観光していたという。騒ぎを受け、2人はホテルに便座を返却し、謝罪。
「前の客が部屋に置き忘れたものだと思った」と釈明した。
日本人からすると、そもそも便座などかさばるものを持ち出すという発想自体がなさそうだが、大陸の感性は、ひとあじ違うのかもしれない。
「あるビジネスホテルの客室から、小型冷蔵庫が持ち出されたという話も聞きました。客が帰った後、清掃の女性が『冷蔵庫がない!』と気付いて騒ぎになった。
他にも、テレビがなくなるケースもよく聞きます。近年、テレビが薄型・軽量化され、持ち出しやすくなったことが原因でしょう。
ホテルでは最近、壁に埋め込まれた形式のテレビが増えてきていますが、見栄えの問題だけでなく、あれは防犯対策の一環なのでは……と、個人的には勘ぐってしまいます」(前出・瀧澤氏)

ホテル・旅館以外に、持ち去り被害がしばしば報告されるのがゴルフ場だ。三重県白山ヴィレッジゴルフコースの担当者がこう語る。
「タオルの被害がけっこうありますね。バスタオルやフェイスタオルです。月に2000~3000枚補充が必要で、多くは消耗ですが、2~3割は持ち去りだと思います。
外国人客は全体の7%くらいで、9割が韓国、残りが台湾や香港、中国本土の方です。感覚的には、日本人の1・5倍くらい、外国人客の持ち去りが多い印象です」
意外にも、ゴルフボールなど、いかにも簡単に持ち出せそうな小さなモノにはそれほど被害はないという。代わりに、狙われているのはもっと高価な品のようだ。
「ゴルフクラブの中で、よく持ち帰り被害に遭うのはパターですね。ドライバーなどの高級モデルは、翌年には最新モデルが出たりして、すぐに6割引きなど値崩れしてしまいます。
しかしパターの場合は、あまり値が下がらず、高値で売れ続けるのです。盗難防止のため、カートに監視カメラを設置していますが、ハーフ終わりには必ずフードを被せるなど対策の必要があると思います」(北海道・新千歳空港近くのゴルフ場、広報担当者)
被害報告が多い中国人客について、ジャーナリストでタレントの周来友氏はこう解説する。
「中国は表面上、共産主義のため、昔から『あらゆるモノはみんなで使っていいのだ』という意識があり、それを都合よく解釈して利己主義になっている中国人がいるのは否めません。
中国国内のホテルでも、持ち帰りはほとんど咎められることはありません。返すように言っても、客が認めず言い争いになるだけなので、それを避けるため有耶無耶になるケースが多いのです」
ただし、最近は「外国で悪評が広がるのは中国人の恥だ」という気運も高まっており、習近平政権の主導により、海外旅行の際のマナー向上が叫ばれているという。
1月末からの春節では、例年通り大勢の観光客が訪日するはずだが、これからは「郷に入っては郷に従え」の日本人の精神に少しでも合わせていってほしいところだ。

また日本側でも、近年あまりに外国人客に頼りすぎたことを見直そうという動きがあるという。
「ホテル業界は、東京五輪後に非常に危機感を持っています。インバウンド特需が終わってしまえば、業績悪化が避けられません。
実際、昨年の紅葉シーズン、京都のホテルの宿泊料は、前年より安くなっていました。今後は外国人客の割合を10~20%に抑え、あらためて日本人客へのおもてなしに力を入れていこうというホテルも出てきています」(前出・瀧澤氏)
日本人も外国人も、互いの常識の壁を乗り越えて、共に快適に過ごしていける──。そんな優しい世界が、いつか実現するといいのだが。
発売中の『週刊現代』ではこのほかにも貸し出し用スマホの持ち去りやスキー場での被害などにもふれつつ、「いろいろ持ち帰る外国人客」について特集している。
「週刊現代」2020年1月25日号より