【大久保一彦】深刻な「グルメサイト離れ」のウラでグーグルマップに食通が集うワケ “投稿する楽しさ”を巡って

国内でのグルメサイト離れが止まらない――。飲食店に予約・顧客管理システムの開発・提供等を行う株式会社テーブルチェックが全国の男女588名を対象に実施した「グルメサイトに関する消費者意識調査」が今年1月6日に発表となった。
国内大手のグルメサイトといえば、飲食店の店名や住所、電話番号といった基本情報はもちろん、来店客によるレビューや評価が掲載されているほか、近年では直接お店の予約可能なサービスも増えてきている。
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こう聞くと、年々その利便性が上がっていることから、利用者も増加傾向にあると予想されるが、実情は全く異なっている。
調査結果によれば、グルメサイトの評価や表示順位を「信頼していない」と答えたユーザーの割合は、実に3割近くに達するという。その理由としては、「自分好みのお店が見つからない」などお店選びのミスマッチが挙げられた。
同社は、サイトに掲載されている情報の信頼性低下によって、グルメサイト利用頻度が減少傾向にある、と指摘。いわゆる“グルメサイト離れ”が起きつつあると、結論づけている。

しかしその一方で、「飲食店の検索」において、急速にユーザーの利用頻度を伸ばし、FacebookやInstagramといったSNS以上に勢力を拡大しているサービスがある。それが、Googleが提供する地図サービス「Google Map(グーグルマップ)」だ。
実は今、グルメと呼ばれる“食通”たちの間で、グルメサイトではなく、グーグルマップへの投稿が積極的に行われているという。その理由について、飲食店コンサルタントの大久保一彦氏に解説してもらった。
そもそも、なぜグルメサイト離れが起こったのか。その理由の一つとして、かつてユーザーたちの間にあった「投稿する楽しさ」が失われたことが挙げられます。
以前のグルメサイトでは、自分自身の投稿がお店の点数に反映され、オープンした面白いお店が繁盛して、予約がとれなくなる。そういったプロセスに影響を与えるという楽しさを享受することができました。それこそが、いわゆる食通たちの投稿を駆り立てるモチベーションとなっていたのでしょう。
しかしある時から、そういった心から食を楽しむ食通だけではなく、点数の高い店だけを回って批評する、いわば“スタンプラリー客”のようなユーザーが徐々に増えてきたように思えます。
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さらに、その状況に拍車をかけたのが、成長しそうな店に早く目をつけ、その影響力から予約の取れない店に枠を作ったり、貸し切りにしたりして、スタンプラリー客に「行ってみたい」という動機付けをした、グルメサイト界の“教祖様”たち。これらの教祖様のお眼鏡にかなった店が、より影響力ある投稿を増やすようになってきたのです。
こうしたユーザーの流れに迎合する形で、大手グルメサイトでは“レビュー件数重視”の動きがあったと筆者は考えております。

確かに大衆化されたグルメサイトにとってはある意味仕方ないのかもしれません。しかし、それは同時に食通たちの「誰も知らないうまい店を探す」という醍醐味を消すことにもなりました。
また、口コミの件数を増やすため、大衆迎合の料理が増え、わかりやすく、雲丹やキャビアなどをのせた、“インスタ映え”する料理を提供する店も増えました。それによって、美味しくないのにグルメサイトで評価されるこの状況が作られ、それに辟易した食通たちが離れていったと言えます。
グーグルが本格的にグーグルマップ上の情報充実に動き始めたのは、こうした食通たちが次第にグルメサイトから離れていった、まさにその頃です。
グーグルマップには「ストリートビュー」という3Dのパノラマツアーが用意されていて、ストリートビューでは室内を見せることも可能であり、例えばユーザーがお店を利用する前に室内の感じを確認したり、あるいは気に入った席の予約を取ったりすることが可能になっています。
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一方、目的地検索やナビゲーションという機能は、世界中どこでもできる便利な機能で、従来のグルメサイトにはない利用のきっかけをつくります。そして、グーグルマップを利用して店舗などを検索した人にアクティブに働きかけ、「感想を投稿してみんなに役立てませんか?」と投稿を促します。
既存のグルメサイトでは、新規にレビュアーになった人にとって投稿の容易さに欠ける面もありますし、今から投稿しても既存の古きカリスマ・レビュアー以上の存在にはなれません。一方、口コミを書かず、写真だけでも投稿できるグーグルマップは魅力的な存在と言えます。また、飲食店だけでなく観光資源など様々な投稿もできます。

グーグルマップは自分の今いる場所を起点に店を探す便利さも持っています。情報が充実するにつれ、その便利さは累進的に激増しています。近くの店を探したら、目的地のレビューを見て、良い店を探して、ルート検索したりできてしまうわけです。
また、グーグルマップはユーザーに対し、投稿した口コミや写真の件数や情報の提供に応じて投稿の質にステージと点数をつけ、自分が投稿した口コミや写真を見たユーザーの件数を明確にしています。そのため、かつてのグルメサイトにあった、ユーザーの承認欲求を満たし、投稿のモチベーションを与えてもいます。
これから5Gが普及するようになると、飲食店情報もさらに進化して、多様なニーズに対応することができるようになるでしょう。例えば、コンピューターを利用して、現実の風景に情報を重ね合わせて表示する技術、すなわちAR(拡張現実)はそのひとつかもしれません。
グーグルマップ上に投稿してある牛肉の写真をクリックすると、その牛肉がどんなプロセスで育ったかを見ることができるようになるでしょう。場合によっては持続可能な肉ではないと判明するかもしれません。
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投稿者のウソもすぐにバレるかもしれません。あるいは、あなたの価値観やあなたの信奉する権威あるレビュアーの評価を限りなく尊重し、分析してくれるようになるでしょう。
ブロックチェーンで情報が分散され、あなたのスマホからAI経由でブロックチェーンにある情報にアクセスしてあなたの好みや既知に合わせて、あなたを喜ばせてくれる店選びをしてくれるようになる日もいずれ来るはずです。

そうなると、従来のグルメサイトではなく、ユーザーに合わせて、個々の期待値を超える情報を提供できる、言わば、“コンシェルジュ”のような存在となれる何かが、飲食店情報の覇権を握ると筆者は考えます。
少なくとも今この状況を鑑みるに、そういう仕組みを作るのは、たぶん、グーグルだと思われますが。