「話がつまらない人の典型は、自分の話ばかりする人。中でも最悪なのが自慢話ですね。大昔の自分がやった仕事とか、今と何の関係もない。
ほかにも多くの人が無意識でやっているのが店自慢。『あの店、ワインがすごくおいしかったよ』と言われてもね。あなたが奢ってくれるんですかって話ですよ」
のっけから辛口で「話がつまらない人」にダメ出しをするのは『奇跡体験!アンビリバボー』をはじめ、笑いあふれる人気テレビ番組を手掛ける放送作家の野呂エイシロウ氏だ。PRコンサルタントとして、企業の商品やサービスを一般の人に「おもしろそう!」と思ってもらえるような独自の戦略立案も行っている。
そんな野呂氏は、まず「自慢話ではなく、失敗談で相手の心をつかめ」とアドバイスする。
「ただし、謙遜のつもりかもしれませんが、失敗をそのまま垂れ流すだけだと単なるダメな人だと思われてしまう。『それ、“あるある”だよね』と共感されたり、『どんだけ勘違いしてんだよ!』と突っ込まれたり笑い飛ばされたりするような話として伝えられるといいですね」
野呂氏は、「相手がツッコミたくなるような会話の振り方が大事」と強調する。失敗談もその仕掛けの1つだ。
「僕は話題のものやイベントがあったら、とりあえず買ったり行ってみたりします。先日iPhoneの新シリーズが発売されたときも、発売日に新色を購入しました。それを手にしてクライアントのところに行くと、社長さんまで『最新のやつ? 触らせてよ』となるんです。そういうところから大きな仕事につながることも多々あります。ミーハーだとバカにする人もいますが、相手の心をつかむための投資だと思えば安いものですよ。
決して高価なものである必要はありません。『マクドナルドの新商品が出たら必ず食べる』など、数百円でできることだってあります」
野呂氏は「とりあえず話題を振ろうと日経新聞に載っていたニュースの話をしたりする人も全然ダメ」とバッサリ切り捨てる。
「日経新聞に載っている話なんて、ビジネスマンなら誰だって知っています。他者を通じて得た二次情報って、何の意味もないんですよ。話すべきは、自分の直接的な体験から得た一次情報です。『実はうちの会社でこんなトラブルがありまして……』とかね」
天気に関わる話も万能ではない。
「『足下の悪い中、お越しいただきましてありがとうございます』といった相手を気遣うふうの定型文。こんなことを言うくらいなら、『雨、大丈夫でしたか。よかったら使ってください』と、コンビニで買ってきたタオルをさっと手渡すほうがよほど相手の心をつかめますよ」
自己紹介も話のうまい人、下手な人が明確に分かれる。野呂氏は「会社名や職業で自分をアピールしてくる人間は話の中身がない」と言う。
「名刺を見ればわかることは、あえて口にする必要はありません。自己紹介は『自分は何をやっている人間なのか』、つまりアクションを話してほしい。例えば、『○○不動産で部長を務めています』ではなく、『丸の内で飲食店の開発をしています』のほうが聞き手の想像をかきたてる。
僕の場合は、『おもしろいことを考えて、小銭を稼いでいます』と言ったりします。そう言われると具体的に何をしている人なのか、気になりませんか? 思わず質問したくなるような自己紹介をしてほしいと思います」
野呂氏が特に気をつけてほしいと語るのは、“オジサン化”しないことだという。どういうことか。
「やたら声の大きい人とか、大きな咳やくしゃみをする人がいますが、ああいうデリカシーのなさは嫌われます。オジサン化とは人が不快に思うかもしれないということに対する気遣いが一切ない状態のことを指すと、私は考えています。私も50過ぎのいいおじさんですが、オジサン化だけはしないように日々気をつけています」
若い人たちの話に「俺だって、知ってるよ」と割り込む人がいるが、これも「つまらないオジサン化の典型」と野呂氏は断じる。
※webアンケート調査を実施。20歳以上の男女200人から回答を得た。調査日は2019年11月1日。
「マウント、上からの押しつけが、一番嫌われます。『知ってる』はNGワードと言ってもいい。知らないふりして『へえー』と全部聞いて、『じゃあ今度みんなで行こうか。奢るよ』くらいでないと。話題のタピオカの話をするにしても、『タピオカってあれだろ、南の島でヤシの実みたいに木になってるやつだろ』と1度ボケてみる。そうしたら『違いますよ』と突っ込んでもらえるでしょう? 会話をできるだけボケとツッコミのキャッチボールにしていくことが話し上手への第一歩です」
自慢やマウントに加えて、野呂氏がやめてもらいたいと語るのが「デリカシーのかけらもない質問」だ。オジサンはずけずけとプライバシーに踏み込む質問をしてしまいがちだという。
「『彼氏はいるのか』とか、『子どもはつくらないのか』とか、そもそもセクハラ、パワハラですし、大きなお世話です。さほど関心があるわけではなく、何の気なしに聞いているだけだとしたら、なおタチが悪い。その後の話の展開も考えずに適当に話題を振るのはやめてほしいと思います」
しかし、そう言われると「では何を話せばいいのか」と思ってしまい、気まずい沈黙が続くことになりかねない。そんなときは、「仮説」をぶつけてみると話題が広がりやすいと野呂氏は続ける。
「出身地を聞くにしても、ストレートに聞くのではなくて、『その名字って、もしかして九州出身?』など予想して言ってみる。当たっていてもいなくても、会話の糸口となります。ポイントは『あなたは○○なのでは?』というように、主語を自分ではなく、相手にすること」
こういった仮説や相手を主語にした話し方をする「話のおもしろい人」の代表が、明石家さんま氏なのだという。
「意外に思われるかもしれませんが、さんまさんはたくさんしゃべっているように見えても、自分のことはほとんど話していません。相手の身につけているものなどから、いつも何かきっかけを見つけて『それってあれやろ?』と仮説をぶつけて話を広げていきます。
そして、オーバー気味のリアクションをして笑いを取り、相手を気持ちよくさせる。さらに、気持ちよくなった相手が繰り出してきたネタから、またおもしろそうな話題を見つけて盛り上げていくのです」
野呂氏は、「しゃべりすぎないこと」も話がおもしろい人の条件だという。さんま氏はしゃべり続けているように見えるが、会話の総量をチェックしてみると、相手の半分も話していないのだとか。
「おもしろい人は、実はあまりしゃべっていません。さんまさんは、自分がおもしろい話をする以上に、相手からおもしろい話を引き出すことで『さんまはおもしろい』と思われているのです。だから相手を気持ちよくしゃべらせることが何よりも大事。これがおもしろい人になるための第一条件といっていいでしょう」
コミュニケーションの目的とは、そもそも何だろう。情報交換や共有だけが目的なら、おもしろくする必要性はない。野呂氏は、「相手に心を開いてもらう、心が通じ合うことがコミュニケーション」だと強調する。
「そのために最初にやるべきことが相手にできるだけたくさん話させることなのです。そうするためにボケてみたり、相手に仮説をぶつけてみたり、話題のタネになるようなものを持ってみたりすることが必要になる。
自分の意見や考えを言うべきタイミングというのは、実はかなり限られています。求められていない場でそれをすると、相手は心を閉じてしまうでしょう。普段はできるだけ相手の意見を引き出し、それに反応することに集中するべきなのです」
「しゃべることは、自分のキャラクターをつくるためのひとつの手段」と言う野呂氏は、そのキャラクターを相手に合わせてカスタマイズし、使い分ける。おもしろいかどうかは、自分が決めるのではなく相手が決めること。
であれば、話し方も話す内容も、相手のタイプや趣味嗜好に合わせて変えたほうがおもしろいと思われ、心を開いてもらえる可能性が高まるというのが持論だ。
「相手に合わせて、カメレオンのように自分を使い分けるのです。こう言うと『相手次第で態度を変えるイヤな人間』と思われるかもしれませんが、会社の同僚と話すときのあなたと、家族と話すときのあなたは同じ話し方をしていますか?
多かれ少なかれ、誰もが相手に合わせて自分をカスタマイズしているのです。それをより細分化し、より相手の視点に立って調整するだけ。すべては相手と楽しいコミュニケーションを取るためと思って、意識してやってみてください」
ここまで挙げたなかで、難しいのは「ボケ方」かもしれない。相手に突っ込ませるようなところを持てと言うが、どんなふうにボケれば相手が突っ込んでくれるのかわからないという人は少なくないだろう。野呂氏は「ボケるならわかりやすく、壮大に」とアドバイスする。
「中途半端にボケると相手に伝わらなかったり、頭が悪い人と勘違いされたりする恐れがあります。以前、時代劇で主役級を務める大物俳優を囲む飲み会に大遅刻した人がいました。その人は大物俳優のところに馳せ参じ、『ご尊顔を拝し祝着至極に存じまする』と言ったそうです。そうしたら大物俳優も相好を崩して『苦しゅうない。近う寄れ』と返したとか(笑)」
確かに、そこまでボケれば相手も「そうきたか」と笑うしかないだろう。
「多くの人が勘違いしていますが、ボケるというのは、おもしろいことを言うのが目的ではありません。相手のことを思って、こう言ったら心を許してくれるんじゃないか、言葉を返しやすいんじゃないかと考えることが目的なんです。自分目線ではなく、相手目線で考えて発するのがボケなのです」
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(ライター 衣谷 康 撮影=石橋素幸)