冬眠中のニホンヤマネを、山梨県北杜市高根町清里の「清泉寮(せいせんりょう)やまねミュージアム」が公開している。日本固有種で国の天然記念物。自然界で目にすることはめったにない貴重な動物だ。すやすや眠っているが、普段暮らしている森林の生息環境が悪化し、安眠が脅かされる事態が深まっている。
ヤマネはネズミの仲間で体長約8センチ、体重約18グラムの大きさ。本州、四国、九州の森林に生息し、主に樹上で生活する。夜行性で花や木の実、昆虫を食べる。冬は落ち葉などがかぶさった浅い地面の穴や、朽ちた倒木の中などで眠る。
野生ヤマネの生態や生息状況を30年来調査してきた同ミュージアムは、冬眠に入ったもののうちから1匹を館内の暗室に入れて温度調整し、展示と観察をしている。
2019年の年末に公開を始め、目覚める3月初旬ごろまで見られるという。
「森林をつくる役割ある」
やまねミュージアムの調査では近年、ニホンヤマネの数が急激に減少している。原因の一つと考えられるのが地球温暖化の影響だ。
地面で冬眠するヤマネにとって、積雪は冬の厳しい寒気を遮る、なくてはならないもの。だが、このごろは雪が少ないためヤマネが過酷な気象にさらされ、死んでいる可能性がある。湊秋作館長によると、積雪がないと、約0度で一定する冬眠中の体温が不安定になることが確かめられている。すると無駄にエネルギーを使い、体力を消耗するという問題もある。
研究員の饗場葉留果(あいばはるか)さんによると、15年ほど前、ヤマネは12月初めから4月末ごろまで冬眠したが、最近は12月末から3月半ばごろに短くなった。気温が高くなっているためと考えられる。早く目覚めても、気温変化に素早く反応できない餌の花や昆虫は少なく、食べ物を探し回るうちにキツネやテンに襲われる危険性が高まる。
天敵といえば、フクロウが増えているのも心配の種だ。人が掛けた巣箱を利用し、繁殖が助けられているのが増加の理由とみられる。同じ夜行性で活動時間が重なるため、ヤマネが狙われやすい。
湊さんによると、最古の先祖の化石はドイツで5000万年前のものが見つかっている。そのころから木の枝を伝わりながら長い時間をかけ、まだ大陸とつながっていた時代の日本にやって来たらしい。湊さんは「小さな体で壮大な移動をしてきたというロマンを持っている」と指摘。生態には謎が多いが、「花を食べる時に授粉を助けるので、森林をつくる役割がある。食物連鎖の上位に位置しており、森林の象徴的な動物でもある」と保護の必要性を訴える。【去石信一】