大津市で園児ら16人が死傷した事故の刑事裁判で、被告人の女性がテレビインタビューに対し、法廷で話したこととは違う主張をしたために、判決言い渡しの前に弁論が再開される異例の事態になりました。 京都新聞(1月16日)によると、被告人は全ての審理が終わった後、テレビインタビューで「不運が不運を呼んだ」などと発言。16日には判決言い渡しが予定されていましたが、大津地検は法廷での主張と食い違っているとして弁論再開を申し立て、裁判所も認めました。 刑事裁判の被告人が、外で裁判とは違う主張をしたら、どんな問題になるのでしょうか。本間久雄弁護士に聞きました。 ●被告人は偽りのことを述べても偽証罪には問われない --今回、弁論再開が認められたことは異例なのでしょうか。 検察官・弁護人双方の立証が終了し、論告・弁論が終われば事件は結審し、判決を待つのみとなります。示談が成立した、新証拠が発見されたなどの事情がなければ弁論が再開されることは通常ありません。 法廷外のテレビインタビューが公判での被告人の主張と食い違うという理由で弁論が再開されるのは確かに異例だと思います。 --刑事裁判では、証人の場合、尋問に先立って「良心に従って真実を述べ、何事も隠さず、偽りを述べないことを誓います」と宣誓をします。被告人は嘘をついても良いのでしょうか。 証人の場合、宣誓をしているので、嘘をつくと偽証罪に問われます。被告人の場合、黙秘権が保障されていることとの兼ね合いから、宣誓義務はなく、偽りのことを述べたとしても偽証罪には問われません。ただ、嘘をついても良いかと言われると、罪に問われないというだけであって、たとえ被告人であったとしても好ましくないでしょう。 ●裁判外の報道・発言について質問されることがある --テレビインタビューをきっかけに、検察側が弁論再開を申し立てました。裁判外での発言は、裁判の行方に影響するのでしょうか。 事実認定及び量刑については、公判に現れた証拠に基づきなされます。裁判外の報道・発言に基づいて事実認定及び量刑がなされることはありません。 ただ、証人尋問ないし被告人質問のときに、裁判外で行われた事件関係者の発言を持ち出されて質問がなされる場合があります。その意味で法廷外の発言は法廷での証言、ひいては判決に影響することになります。 ●思うところがあれば、公判で述べるのが筋 --弁護人としては、法廷外での言動について、何か留意すべきことを伝えることはあるのでしょうか。
大津市で園児ら16人が死傷した事故の刑事裁判で、被告人の女性がテレビインタビューに対し、法廷で話したこととは違う主張をしたために、判決言い渡しの前に弁論が再開される異例の事態になりました。
京都新聞(1月16日)によると、被告人は全ての審理が終わった後、テレビインタビューで「不運が不運を呼んだ」などと発言。16日には判決言い渡しが予定されていましたが、大津地検は法廷での主張と食い違っているとして弁論再開を申し立て、裁判所も認めました。
刑事裁判の被告人が、外で裁判とは違う主張をしたら、どんな問題になるのでしょうか。本間久雄弁護士に聞きました。
--今回、弁論再開が認められたことは異例なのでしょうか。
検察官・弁護人双方の立証が終了し、論告・弁論が終われば事件は結審し、判決を待つのみとなります。示談が成立した、新証拠が発見されたなどの事情がなければ弁論が再開されることは通常ありません。
法廷外のテレビインタビューが公判での被告人の主張と食い違うという理由で弁論が再開されるのは確かに異例だと思います。
--刑事裁判では、証人の場合、尋問に先立って「良心に従って真実を述べ、何事も隠さず、偽りを述べないことを誓います」と宣誓をします。被告人は嘘をついても良いのでしょうか。
証人の場合、宣誓をしているので、嘘をつくと偽証罪に問われます。被告人の場合、黙秘権が保障されていることとの兼ね合いから、宣誓義務はなく、偽りのことを述べたとしても偽証罪には問われません。ただ、嘘をついても良いかと言われると、罪に問われないというだけであって、たとえ被告人であったとしても好ましくないでしょう。
--テレビインタビューをきっかけに、検察側が弁論再開を申し立てました。裁判外での発言は、裁判の行方に影響するのでしょうか。
事実認定及び量刑については、公判に現れた証拠に基づきなされます。裁判外の報道・発言に基づいて事実認定及び量刑がなされることはありません。
ただ、証人尋問ないし被告人質問のときに、裁判外で行われた事件関係者の発言を持ち出されて質問がなされる場合があります。その意味で法廷外の発言は法廷での証言、ひいては判決に影響することになります。
--弁護人としては、法廷外での言動について、何か留意すべきことを伝えることはあるのでしょうか。