再非行防止のために…少年院で広がる「子供の保護者」支援

12~20歳が入る矯正施設の少年院で収容者が年々減少する一方、再び非行を犯して再入院する少年の割合は横ばいが続いており、出院後の支援が課題となっている。再非行防止のためには子供を理解する保護者の存在が欠かせないと言われている。そんな中、親の力になりたいと少年院で講演を続ける元非行少年の母親がいる。
「ずっとあきらめずに受け入れようと思いました」。2019年12月、九州で唯一の女子少年院、筑紫少女苑(福岡市東区)であった保護者説明会。能登原裕子さん(70)=同市=が自らの経験を出席者に語りかけた。
約20年前、10代半ばだった長男はバイクの窃盗や暴走、傷害容疑で逮捕され、少年院に2度入った。荒れ始めた当初は母子家庭で、近所から「育て方が悪い」と心ない言葉も浴びせられた。一時は自殺さえ頭をよぎった。
悩みを打ち明けられない日々が続く中、新聞で非行少年の親の会を知った。「今までつらかったね」。受話器の向こうですべてを受け入れてくれる声に肩の力が抜けた。「自分を責めなくてもいいんだ」。いさかいは絶えなかったが、長男との会話は徐々に増えた。
「見捨てないでくれてありがとう」。20代で拘置所を出た後にかけてくれた長男の言葉が忘れられない。それを最後に長男は道をそれることはなく、結婚し、今は子育てと仕事に奮闘している。
同じ境遇で苦しむ親を支えたいと思い、能登原さんは03年に非行に向き合う親の会「ははこぐさの会」(同市)を自ら結成。毎月の例会は聞き役に徹し、これまでに250~300人の保護者が参加した。
活動を知った福岡少年院(同市)から06年に講演を依頼され、その縁で筑紫少女苑にも通うようになった。同施設で出院支援を担当する法務教官の塚田深雪さん(35)は「家族関係で苦しみ抜いた当事者の話だからこそ、伝わる面が大きい」と期待を寄せる。
保護者への働きかけは各地の少年院が独自に取り組んできたが、国は、再非行防止や社会復帰の観点から15年施行の改正少年院法で「保護者の協力を得るよう努める」と明記。子供を理解する手立てやコミュニケーションを図る方法などを話し合う保護者会や講演会などの動きは各少年院で加速し、18年には全国で延べ計992回の保護者会が開かれた。
10年以上、講演を続けている能登原さんは「以前と比べ、今は内にこもりがちな非行少年が増えた」と感じている。「出院後どう接していいかが分からずに悩む親は多い」と訴え、これからも親の声に耳を傾けていく。【飯田憲】
少年院収容者、20年間で3分の1に減少も再入院は10~12%台で推移
犯罪白書によると、少年院の収容者はこの20年間で2000年の6052人をピークに減少し、18年はほぼ3分の1の2108人だった。一方、2年以内に再入院した少年の割合は17年までの20年間で主に10~12%台で推移しており、専門家は出院に向けた保護者支援に加え、NPOなど第三者との連携の必要性も指摘している。
収容者が減少している背景には、かつて社会問題化した暴走族や不良グループが姿を消しているなど事件自体が減少していることが考えられる。実際、収容者のうち、暴走族や地域の不良グループなどは08年に51・6%に上ったが、この10年で38・6%に減った。
一方、収容者の家庭環境では、実母のみが男女とも4割以上で、虐待経験があるのも男子が33・8%、女子が51・4%に上った。更生保護施設「両全会」(東京)の企画室長で元法務教官の鷲野薫さん(65)は「親子関係がこじれ、居場所をなくして非行に走ってしまう少年が少なくない」と明かす。
非行少年の更生支援に取り組む知名健太郎定信弁護士(福岡県弁護士会)は「出院後の立ち直りのためには、親ありきでなく、就労先やNPOとの連携も必要だ」と指摘する。