【竹内健登】危ない「就活毒親」3つの典型…こんな親がわが子の内定を阻んでいる 子どもに本当に必要な「援助」とは?

2019年11月28日の読売新聞に、「大学入学式、76%が保護者同伴…出席は当たり前の傾向」という記事が掲載されました。「ついにそこまで……」と驚いた方も多いのではないでしょうか。
しかし、2018年のアイデムの調査によると、就活において保護者からの直接の問い合わせを受けている企業の人材担当者の比率は、なんと56%に上ります。親御さんの関心は、今や大学の入学を超えて、子どもの就職活動にまで及んでいるのです。
『子どもを一流ホワイト企業に内定させる方法』の著者で、就活スクールのホワイトアカデミーを運営する竹内健登氏の元には、数年前から、就活生を持つ親からの問い合わせが急増しているといいます。
「親御さんの就活への参画は、たしかにお子さんの力になりえます。しかし、関わり方を間違えてしまうと、親御さんが関わるほどに、お子さんの就活が迷走し、結果として失敗してしまうことにもなりかねません」
それはいったい、どういうことなのでしょうか?

報道などでも言われている通り、現在の就職活動はかつてない過酷な競争に勝ち抜くことが求められています。事実、メーカーなどを中心に、有名・人気企業は応募倍率が1000倍を超えることも珍しくありません。また、多くの学生がスマホで就活をするようになったことで、就活のプロセスはますます複雑化し、内定までの道のりは険しくなっているといえます。
実際、多くの学生は就活で挫折を経験しており、「7人に1人が就活うつになる」(NPO法人POSSE調べ)という結果も出ています。このように、現代の就活は「たった数席の内定枠を、大勢の学生が奪い合っている」状態なのです。
Photo by Gettyimages
一方で、ホワイトアカデミーに通う学生の中には、
「竹内先生、大手企業10社から内定をもらったんですが、どこを選んだらいいでしょうか。ほかに市役所からも内定をもらってますが、ちょっと自宅から遠いんで、そこは辞退しようかと」
というような、難関企業の内定をいくつも得て、引く手数多状態になる学生も少なくありません。
内定を取れず苦しむ学生と、いくつもの内定を得て選ぶ立場に立てる学生――その違いはどこにあると思いますか?
学歴? 留学経験? 論理的思考力? ボランティア経験? いえ、これらはすべて関係ないとはいいませんが、持っていても内定の決め手にはならない項目です。
実は、これらの項目以上に、親御さんがどう就活に関わるかが、その成否には影響しているのです。
実は今、”就活毒親”と呼ぶべき親御さんが増えています。
”就活毒親”とは、我が子の就活を成功させたいと願うあまりつい余計な手や口を出してしまい、 結果的にお子さんの内定獲得を阻んでしまっている親御さんのこと。
親御さんは”よかれ”と思って行動しているのですが、 それが子供の就活を迷走させたり過度な精神的プレッシャーを与えることになってしまっているので、 ある種悲惨なケースだと言えます。
また、その影響力は、就活中のお子さんだけでなく、 企業の採用担当者の悩みの種にもなっています。
”就活毒親”は、大別すると3つのタイプに分けられます。順を追ってご説明します。

会社説明会などで、目を疑う光景に遭遇することがあります。どう見ても企業の採用担当者でも学生でもない中年の女性が、採用の現場にいるのです。いったい誰だろうと見ていると、多くは就活生の母親です。
その会社の門の目の前まで自家用車で送る親となれば、もはや珍しくもありません。そのほか、採用試験の成否を親が電話で問い合わせたり、内定辞退の連絡を親が入れたり、不採用に対して親がクレームを入れたり……親の就活プロセスへの介入は、そのお子さんの可能性の芽を摘むことになりこそすれ、プラスに働くことはまずありません。
なぜ、親御さんの過保護や過干渉が、就活にはマイナスになるのでしょうか。
それは、企業が採用活動を通して、学生のどんな力を見ようとしているかを考えればわかります。
多くの企業から内定を得ている学生の特徴と、企業が求める人材像を分析したところ、企業が採用活動で学生を見ているポイントは、大きく、次の3点に分けられることがわかりました。
(1)将来、きちんと仕事ができるようになりそうか(=IQ、思考力)(2)周囲の人と協調してやっていけそうか(=EQ、コミュニケーション力)(3)社会人としての基礎能力を身につけているか(=就活力)
です。
今回の「過保護な親」のケースでは、?を親が勝手にやってしまっています。
指定した時間通りに集合できるのか、服装はTPOをわきまえているか、電話やメールの態度はどうか……こうした社会人に必須の基礎能力は、一朝一夕で身につくものではありません。ですから企業としては、入社前からある程度の能力を備えた学生を採用したいわけです。その基礎能力を企業がはかる機会を、親が奪ってしまっては、採用の可能性が下がるのは当然です。
とくに、大学に入るまでにも塾や予備校にたくさんの費用をかけてきた親御さんは、このように過保護になってしまうケースが多いようです。
「今どんな会社受けてるんだ? ITベンチャー? 絶対にやめたほうがいい!」「どこ内定もらったんだ? 調べてやるから言ってみろ」
私の元には、学生からの悲鳴が数多く届きます。その多くは、上記のようなことを親に言われた、という相談です。
そのほか、
「メーカーに行きたいって言うと、親がやめろって言って聞かないです」「やりたいことをやるよりも、とにかく安定した会社を選べってうるさくて」
など、お子さんが自分で考えたことを頭ごなしに否定する親御さんも多いようです。

このような親御さんは、2つの意味で、子どもの邪魔をしています。
まず1つめは、就活の妨害です。このようにお子さんに介入する親御さんの多くは、自分のお子さんにはよりよい業界・企業に勤めてほしいと願っています。それゆえのアドバイスなのですが、お子さんにとっては就活の軸のブレの原因でしかありません。
実際、親御さんの毒アドバイスによって、就活が迷走し始める学生は少なくありません。
次に2つめは、お子さんの人間的自立を邪魔しています。多くのお子さんにとって、就職は初めて自分で選ぶ、人生の分岐点です。どんなお子さんも少なからず不安を感じ、手探りで就職活動をしているはずです。
そのような状態のときに親御さん――特に社会人の先輩である父親から頭ごなしに否定されれば、誰だって堪えます。
親御さんの否定によって自信をなくし、試験の通過率が下がってしまうケースも後を絶ちません。
Photo by iStock
このように、子どもの進路を拘束したり否定して就活生を追い詰めてしまうのは、特にエリートと言われる父親に多い特徴です。自分のこれまでのキャリアの選択や常識に絶対の自信を持っている父親ほど、子どもにもその価値観を当てはめようとしてしまうのでしょう。
この背景には、子供を自分のコントロール下に置きたいという心理があり、子離れできていない親の典型例だともいえます。
子どもが志望している業界や内定先が気がかりな場合には、子どもの適性とキャリアを子どもと一緒に考えるプロセスを踏むといいでしょう。
具体的には、なぜお子さんがその業界を選んだのか、その企業からの内定についてどう思っているのかの考えを聞き、お互いに納得できるまで話し合うことです。

もう1つ、親御さんによってお子さんの就活が邪魔されるケースは、やたらと比較して、お子さんを焦らせる場合です。
「幼馴染のAちゃんは超大手に就職が決まったんですって」「お姉ちゃんは東京海上に受かったのに、あんたはだめねぇ」
といったことをついつい口にしてしまうことで、2人以上の子供や従兄弟がいたり、ママ友ネットワークでの体裁を重視したりしている母親に多く見られます。
このような親の言動は、子どもの就活を迷走させるどころか、その後の家族関係のこじれにもつながりやすいものです。
企業は、ミッションも業務内容も規模も様々です。大切なのはお子さんがやりがいを見出せるのか、合うのかどうか、よりよい人生を歩めるのかどうかであって、どの企業に入ったからいいとか、早く就職活動が終わったからすごいとか、そういうことではない、というのはいうまでもありません。
拙著『子どもを一流ホワイト企業に内定させる方法』では、「働いている人からの評価」「3年後離職率」「経営状態」の3方面から、日本の企業の「一流ホワイト度」をランキングして掲載しましたが、それだって、
「一流ホワイト企業に就職したから一生幸せ」「一流ホワイト企業なら、絶対安泰」
ということではありません。あくまでも、働きやすい企業を見る一つの指標です。
そんな、「こうすれば絶対幸せ」のような軸のないなかで、お子さんをむやみに競争させようとすれば、その子は自分のいいところや強み、適性を見失って、とにかく「親御さんのお眼鏡にかなう企業」を選んでしまうことになりがちです。
就職活動を通して幸せな社会人生活をスタートさせるためにも、むやみに競争させたり比べたりするのではなく、どうすればお子さんのいいところや強み、適性を活かせるのかを考えたほうがいいでしょう。
就活において、親御さんに求められるのは、お子さんに対する「精神的援助」「経済的援助」「教育的援助」です。
精神的援助は、お子さんが内定を得られず落ち込んでいたり自信をなくしているときに、陰ながら支えてあげること。
経済的援助は、就活にかかる費用をサポートしてあげること。就活時期はアルバイトをする時間もなかなか取れませんので、意外に重要な役割です。

教育的援助は、お子さんが社会人になるにあたって鍛えておきたい能力をつけるためのサポートをしてあげることです。たとえば企業についての情報を集める方法を教えるとか、入り組んだスケジュールの管理方法を指導するとか、エントリーシートの添削をしてあげるなど。これらはあくまでも、お子さんが自分でやろうとしていることの支援であって、親御さんは就職活動の表舞台に出てはいけません。
この3つをバランスよく行なってあげることが、厳しすぎる就職活動をお子さんが無事に乗り越え、納得感のある社会人キャリアをスタートさせることにつながるのです。
就職活動は、お子さんの独り立ちの場でありまた、親御さんにとっての子育ての総仕上げです。誰にとっても後悔のない就職活動ができることを祈っています。