中国からの入国制限検討を! 邦人帰国、民間チャーター機派遣に遅れ 中国本土で新型肺炎の感染拡大

中国湖北省武漢市で発生した、新型コロナウイルスによる肺炎の感染拡大を受けて、日本政府は28日、新型肺炎を感染症法に基づく「指定感染症」とすることを閣議決定した。指定によって患者を強制的に入院させたり、就業を制限したりする拡大防止策が可能になる。政府は同日朝にも、武漢市などに滞在する邦人を帰国させるため、民間チャーター機2機を派遣する予定だったが、中国側の事情で遅れている。中国本土では感染拡大が続いており、日本では「入国制限」を求める声もある。
「すでに、500万人超が武漢を離れた」
国営中央テレビによると、武漢市の周先旺市長は26日の記者会見で、こう明らかにしたという。人口約1100万人の武漢市は23日から事実上「封鎖」されているが、実効性に深刻な疑問が生じている。
「パンデミック(感染爆発)」の危機が迫るなか、全日空のチャーター機2機は成田空港を出発し、武漢市などの邦人を乗せて、羽田空港に帰国するルートで調整。政府専用機1機の派遣も検討していた。
ところが、チャーター機の出発が遅れている。
永田町関係者によると、武漢市で邦人らのメディカルチェックを行う医師らが不足しているうえ、空港まで来る交通手段もストップしているなど、「武漢側が混乱している」という。
日本政府は、28日中には派遣したい考えだ。
派遣した場合、機内では、厚労省の医務官が帰国者全員を診察し、検体を採取する。発熱やせき込む症状が見られれば、機内で防護服を着せて、ビニールシートを張ったスペースで「隔離」する。
帰国後も、空港施設内では一般客との接触を避けるルートを使う。帰国者には2週間程度、勤務先企業などを通じて自宅待機などの経過観察を求め、感染拡大防止に努めるという。
中国本土では、感染拡大が続いている。
中国メディアによると、新型肺炎の発症者は27日、中国本土で2800人を超え、死者は82人に増えた。武漢市から1000キロ以上離れた首都・北京市でも同日、初めて男性1人が死亡した。感染拡大を食い止めるため、15都市が封鎖されたが、完全な封じ込めは難しい。
こうしたなか、ネット上では「国民の生命を守るため、入国制限を急いでください」といった声が数多く上がっている。
入国制限について、出入国在留管理庁は「現状では、新型肺炎が出入国管理及び難民認定法(入管法)上の規定に抵触することはなく、入国を制限する法律の根拠がない」と回答した。
入管法では、指定された感染症の患者は日本に入国できないが、新型肺炎はこれに含まれない。
ただ、同法第5条(上陸の拒否)14には「法務大臣において日本国の利益又は公安を害する行為を行うおそれがあると認めるに足りる相当の理由がある者」との条文もある。
いざというときには、「伝家の宝刀」に期待したい。