千葉県野田市の小学4年、栗原心愛(みあ)さん(当時10歳)が虐待を受けて死亡した事件で、県は27日、事件で対応した柏児童相談所の所長(57)と前所長(57)の2人を文書訓告処分とした。懲戒処分に至らない文書訓告にとどめ、処分対象に担当職員を含まず幹部に限定した。
県総務課の城之内聖康副課長は「職員個人の至らない対応はあったが、女児のケースワークの最終責任者として所長の責任を問うた」とする一方、懲戒処分としなかった理由について「過去2年間の全国の虐待死亡事件で、職員の懲戒処分や処分の事例はなかったため」と説明した。
専門家による県の検証委員会は2019年11月、「(女児は)救える命だった」とする報告書を県に提出した。報告書は、柏児相の担当者が父親に虐待の通告元を漏らしたり、女児の一時保護後に一度も判定会議を開かず、性的虐待の情報を十分に評価しないまま保護解除の方向性を決めたりした点などを列挙。「虐待への対応の基本が不徹底で担当者の知識が不足したり、援助方針会議が形骸化するなど組織的な対応が不十分だったりしていることが背景にある」と指摘した。
県総務課によると、報告書の提出後、処分を検討するため、関わった児童福祉司と処分された2人を含む計6人から聞き取り調査を実施した。前所長は判定会議を開かなかった点について「援助方針会議で意見を充実することで、総合的な判定を行っていた」と説明したという。
野田市教委は12人を懲戒処分
一方、野田市と市教委は19年3月、女児が父親からの暴力を訴えた学校アンケートの写しを、父親の要求に屈して渡したなどとして、市教委指導課長を停職6カ月とするなど計12人を懲戒処分した。課長は地方公務員法(守秘義務)や市個人情報保護条例に違反したとして課長職も解かれ、部長ら6人減給10分の1(3カ月)、残る5人は戒告とされている。【宮本翔平】