どうしても眠っちゃう女の子

屈託のない笑顔の少女…典子さん。実は彼女は…約600人に1人と言われる病と闘っていた。
小学生のころ…友達と遊んでいても頻繁にトイレに行く典子さん。その理由は…トイレの中で寝るためだった!
典子さんは急激な眠気に襲われることが多く、全く我慢できなかったのだ。だが、夜更かしをしているわけではなく…睡眠時間もむしろ多い方。それにもかかわらず、どうしても眠くなってしまう。
学校の先生から授業中居眠りが多いと注意を受け、両親からももっと集中しろと怒られる…。この時、誰も気付いていなかった。この眠気の原因が、ある病によるものとは…。
中学になると、その症状はさらにひどくなっていった。とはいえ朝起きられないということはなく、常に眠いわけでもない。
明るく活発、合唱部では部長を務める優等生。だが、何の前触れもなく急激な眠気が襲ってくる。
眠気が襲い掛かると、音がどんどん遠のき、感覚が鈍る。予測不能な眠気。その原因が分からぬまま、彼女の壮絶な苦しみが始まる。
授業中でも寝てしまい、そのたびに教師に怒られてしまう典子さん。度重なる居眠りに…「寝てはいけない」と思っていても1時間ももたずに眠気に襲われ、いくら耐えようとしても落ちるように寝てしまう。
自分でも不思議でしょうがなかった…なぜ急に眠くなるのか?そして、どうして自分は我慢できないのか?
だらしのない人間…そう思われるのが嫌で無理やり早く寝た。しかし、典子さんは授業中だけでなく、大事なテストでさえその眠気を我慢できなかった。起きて初めて自分が寝ていたことに気づく…その居眠りは1日10回以上にも及んだ。
なぜ、自分だけこれほど寝てしまうのか?彼女が抱えた眠りの正体…それはナルコレプシーといわれるものだった。
『居眠り病』ともいわれる睡眠障害の一つで、日中、本人の意思とは関係なく急激な眠気に何度も襲われてしまう病。 その原因は、脳にある睡眠と覚醒とをコントロールしているオレキシンが不足しているため。
オレキシンは通常、覚醒状態を維持する役目を持っているが、これが不足していることによって、突如、睡魔に襲われてしまう。
その症状は睡眠時間に関わらず現れ、その眠気の強さは2日~3日間寝てない時程ともいわれる。
睡眠障害といえば、高速バスや電車の事故で知られるようになった“睡眠時無呼吸症候群”も同じく睡眠障害の一つだが、睡眠時無呼吸症候群による居眠りの場合、夜の睡眠の質が悪いため起きるのに対し、ナルコレプシーは睡眠が十分でも起こる。
そんな症状を抱えたまま高校生になった典子さん。この頃になると、立ったまま眠るようになり、さらに食事中でも眠るように。
実はナルコレプシーによる居眠りは眠りが浅い。その為、起こされるとすぐに目は覚める。だが典子さんの場合、眠気を感じてから寝るまでの時間が極端に短く、自転車の運転中に眠ってしまうこともあった。

自分でも防ぎようのない居眠り…。すがるような思いで病院へ。まず脳波の検査をすることになった。
実はナルコレプシーは睡眠時の脳波に特徴があることがわかっている。通常、我々は夜眠るとすぐに脳を休める深い眠りが起こり、その後、浅い眠りに脳波が移行するのだが、ナルコレプシーの場合、まず浅い眠りから睡眠が始まるという。
典子さんもその特徴が顕著に出ていた。検査の結果、医師からもこれは病気であると診断され、薬を処方された。
こうして薬の効果もあり症状は改善。そして、大学にも合格した。だが、この後、典子さんにナルコレプシー患者を苦しめるもう1つの症状があらわれる。
その症状が表れたのは大学生になってから。登校中友人を発見し、声をかけようとした時!突然、全身の力が抜けた。
意識はあるが声が出ず、体も動かせない。少しすると起き上がることができた。謎の症状…だがそれは、その後も頻繁に表れるようになる。力が抜けるのは決まって、笑っている時やテンションが上がっている時。その瞬間、急に力が抜けてしまう。
実はこれ、ナルコレプシー患者の一部に起こる『情動脱力発作』突如、体が睡眠状態になることで起きる症状。この時、脳は起きている為、意識はあるが体を全く動かすことができなくなる。
この症状が出てしまった典子さんは再び病院へ。そこで出会った医師に、この症状にも効果のある薬がある、と言われ安堵する典子さん。そしてさらにこう告げられた。
医師『それにしても…今までよく頑張ってきましたね…』
突然の一言に驚く典子さん。
医師『この疾患は自覚するもの遅いですし、みんな自分を責めちゃうんです。1人で抱えて大変でしたよね…でも、今からは大丈夫です。』
この言葉を受け典子さんは涙があふれた。ずっと一人で抱えてきた悩み…『だらしない』と自分を責め続け、誰にも伝わらない苦しみと闘ってきた典子さんはその思いをわかってくれる人がいると知り、救われた気がしたのだ。

その後、医師からこの症状に苦しむ人がたくさんいて、早期の治療が効果を出すと知った典子さんは…ある決断をする!
それは、ナルコレプシーの啓発をする『日本ナルコレプシー協会』のメンバーとして活動すること。この病気の理解を広げ、自分と同じような思いをする人を1人でも減らしたい。その一心だった。
仰天スタッフは、さらにある女性を訪ねた。堀江美沙さん。彼女も日本ナルコレプシー協会のメンバー。彼女も、幼い頃からナルコレプシーの症状に悩まされてきた。
実は、ナルコレプシー患者の中には、脱力発作を伴わない人もいて、美沙さんはそのタイプ。薬を飲んでいれば日常生活には全く問題なく、都内の会社で働いている。眠りの病、ナルコレプシー。少しでも理解が深まることを願う。