「こんなに長引くとは」 金谷の住民疲労頂点、いら立ちも

台風直撃から6日目の14日、本県の多くの被災地では停電と断水が続いた。
13日夜の東京電力のおおむねの復旧見通しで「1週間」とされた自治体の一つ、富津市の金谷(かなや)地区の住民も疲労はピークに達している。電気の復旧まで、不自由な生活がしばらく続く。
「停電も断水もこんなに長期化するとは誰も思っていなかった」。金谷地区に暮らす会社経営の男性(58)はいら立ちをあらわにした。
「近隣に散乱した大量のがれきの撤去や屋根の修復などに追われながら、何度も給水所に往復してガスで水を沸かし、風呂や炊事に使う生活で、皆が疲れきっている。日が暮れると何もできず、電話が通じないのが困る」
地元美術館の学芸員、芝田尚樹さん(37)は「通信手段を奪われたため、被災状況に関する情報が外に伝わらず、12日になってようやく惨状を知って支援に駆けつけてくれた人もいた。行政の状況把握も後手に回ったのではないか」と話す。
金谷地区には若い世代の移住者も多い。昨年10月に神戸市から移住したという会社員、細山哲平さん(26)は「連日復旧作業に追われているが、被災3日目にフェリーで対岸の神奈川県久里浜に渡ってようやく風呂と食事にありついた。インターネットもつながりにくく、携帯は車で充電する状態」と話す。
海岸線沿いの建造物などは軒並み損壊し、コンビニエンスストアなどの商店は営業再開のめどが立たないまま。ある商店経営者は、「大量のがれきの処理について市役所に相談したところ、個人の住宅のがれきは市が引き取るが、企業のがれきは引き取れないと断られた。大変な費用がかかり目が回る」と不満を漏らした。