新型肺炎で当惑する在日中国人。「中国に長く帰ってないのに避けられる………」

◆「中国人経営」というだけで増えるキャンセル

「新型肺炎が話題になってから、お客さんのキャンセルが増えた気がします……」

こう語るのは都内で整体院を運営している中国吉林省出身の蘇さん(仮名)だ。蘇さんは来日12年。日本語も堪能ですでに永住ビザも取得して子供も日本の学校に通っている。本国に帰国したのは去年の春節のときで、ここ一年帰国していない。

「新型肺炎が話題になってからは当然中国に帰国していませんし、スタッフも同様です。しかも中国でも東北部出身で武漢とは何も関係ないのですが、やっぱりお客さんは不安なんでしょうね」

浮かない顔の蘇さんだが、こうしたことが起きているのは日本だけではないようだ。

時事通信が報じたところによれば、フランスで、アジア系住民に対する人種差別が問題となっているという。この場合、「武漢じゃない中国人」どころではない、中国人ではない日本人や韓国人もベトナム人も、つまりアジア人であれば忌避されるという状況になっているのだという。

日本でも、表立ってのヘイトクライムは起きていないものの、観光地の店で「中国人観光客お断り」というビラを貼る店などが出て物議を醸しているほか、TikTokやYou Tubeで排斥感情を煽るようなフェイクニュース動画がアップされており(参照:「BuzzFeed」)、次第に何らかのヘイトクライムに繋がってもおかしくない空気が醸成されつつあるのもまた事実だ。

◆当の在日中国人たちも不安

当の在日中国人はこうした状況をどう見ているのだろうか?

「実際、ワタシたちも新型肺炎のニュースを観ると怖いと思いますので、日本人がそう思うのも悲しいけど仕方ないとも思います。例えば、武漢からの観光客を防疫のためという理由で受け入れ拒否することなどをはやめに対応していたならば、他の中国人への風評被害も防げたかなとも思いますが、そうでないかもしれないし……」というのは、来日9年目で不動産業を営む呉さん(仮名)。

彼が言う通り、実は在日中国人コミュニティでも、いやむしろ在日中国人コミュニティのほうが、SNSを通じて本国の「噂」も含めてさまざまな情報がインプットされているからか、不安を抱く人が少なくないのだ。

「私は銀座で働いていますが、武漢訛りの中国語だとすぐわかりますので、その時は不安になります。マスクしている方もいるし、そうでない方もいるし」(来日8年目・陽さん・仮名)

「故郷に残してきた家族が心配で、マスクを買って中国に送ろうかと思いましたが、もうEMSが受け入れ不可能になっていました」(来日6年目・李さん・仮名)

「ワタシが参加している月1回の清掃ボランティアも、2月は見送ることになりました。中国人の仲間内でも不安の声を聞きます」(来日5年目・唐さん・仮名)

さらに、お客の減少や観光客なのかどうかの区別も付かない状態で「お断り」と言われるようなことが増え、ますます不安を募らせている。

◆「中国人だというだけで避けないでほしい」

こうした、具体的な根拠に欠ける忌避が増えることについて、子供を日本の学校に通わせている中国人親はさらに不安を抱えている。

「幸い、うちの子が通う学校では、子供が中国人だからといじめられたことはいままでありませんでした。言葉も親以上に覚えて、学校にも馴染んでいます。それがもし、今回のことで中国人全員が新型肺炎ウイルスと結び付けられて、いじめられでもしたらどうしようと思うととても不安です」(来日12年目・于さん・仮名)

冒頭の蘇さんはこう語る。

「日本で商売をしているワタシたちは、飲食店もそうですし、ワタシのような整体院とかも、みな日本のルールで商売をしています。特にワタシのようなお客様に接する仕事では、インフルエンザのシーズンはワクチン接種も欠かしませんし、麻疹が流行ったと聞いたらそれも予防接種しました。お客様に不安を与えないようにマスクも着用します。日本で商売をしている以上は、日本人のお店と同様に気を配っています。もし不安なら、『最近中国に帰国したか』聞いてもらっても構いません。だから、不安かもしれませんが、中国人だというだけで避けないでほしいです」

<取材・文/HBO編集部>