のどかな農村に衝撃が広がった。1日午前8時10分ごろ、福島郡山市三穂田町下守屋で県警ヘリコプターが水田に不時着し、乗員7人が重軽傷を負った。強風でバランスを崩した可能性があり、運輸安全委員会が2日、航空事故調査官を現地に派遣。県警は業務上過失傷害容疑も視野に調べる。【渡部直樹、磯貝映奈、寺町六花、高橋隆輔】
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運輸安全委が現地調査
現場は郡山市と須賀川市の市境近くにある水田。近くには集落もある農村地帯だ。
不時着したのは県警の中型ヘリ「あづま」(アグスタ式AW139型)で、イタリア製の14人乗り。2015年1月に配備された。
ヘリには、県警総合運用指令課の小池健貴操縦士(38)や地域企画課の村上祐司課長(59)ら県警所属の計5人と、医師、臨床工学技士計2人が搭乗。
移植用の心臓を運ぶため、ヘリポートのある会津中央病院(会津若松市)を午前8時に出発し、福島空港へ向かう途中だった。心臓移植は東京大医学部付属病院で実施される予定だった。
県警によると、県警ヘリで移植用の臓器を運ぶのは初めて。1日午前6時半に気象状況を確認し、飛行前の点検でも異常は見つかっていなかった。
県警の佐藤実地域部長は1日午後、記者会見し「事故原因の調査を尽くし、再発防止に努める」と陳謝した。
「落ちる場所、少しずれていたら…」
県警ヘリが不時着した現場近くには集落もあり、周囲数百メートルにわたって機体の破片が飛び散った。住民からは「集落に落ちなくてよかった」などと声が上がった。
現場から約1キロ離れたあぜ道で、犬の散歩をしていたという須賀川市守屋の農業、矢部恒幸さん(76)は「『ドーン』という音がして空を見上げると、雲間からヘリコプターが出てきて西から東に風に流されるような感じでゆっくりと旋回しながら、高度を下げていった。家の陰で見えなくなって1~2秒後『バリバリ』という音がした。集落に落ちなくてよかった」と、驚いたような顔で話した。
現場近くの農業、桑名洋一さん(66)は、大きな音を聞いて外へ出ると、周辺はものすごい砂ぼこりに包まれていた。横転したヘリを見てすぐに119番した。「夢かと思った。近くでこんな大きな事故が起こるなんて……」と驚きを隠せない様子だった。
近くの美容院で働く30代男性は「ガタンガタン」と異音を聞いた。外へ出ると、電線のすぐ上でヘリコプターが停止したような状態で、すぐに機体の先端から横回転してゆっくり落ちていった。「落ちる場所が少しずれていたら大変だった。不幸中の幸い」と話した。
現場から100メートルほど離れた場所に住む新聞販売店従業員の菅野雄基さん(29)は「『ゴー』という大きな音がして窓から空を見上げると、機体がぐるぐると水平に回転しながらゆっくり落ちていった。直前で横倒しになって見えなくなり、直後『ガガガガガッ』という音とともに大小の部品が飛び散った」と、驚いた様子で話した。