橋本聖子五輪大臣と高橋はるみ議員が「たこしゃぶ接待」で公選法違反疑惑

違法なギャラで買収しては、日本最北の地でたこしゃぶの歓待……。河井案里参院議員が国会を騒がす中、現職大臣と前北海道知事にも“疑惑のさえずり”が聞こえてきた。ともすれば共犯になりかねないこの一件のカギを握るのは「美貌のベテランウグイス嬢」だ。
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梅に鶯――。
古くは尾形光琳や円山応挙ら、日本美術史に名を残す画家が早春に取り合わせの良い二つとして、その主題を描いてきた。幸運にも作品を入手した者は、春の訪れを告げる「梅に鶯」を見て悦に入り、縁起を担いできたのだ。
翻って現代、魑魅魍魎が跋扈し、権力闘争を繰り広げる早春の国会は“ウグイス嬢”を巡って大荒れの様相である。週刊文春が先んじて報じた河井克行前法相とその妻・案里参院議員の運動員買収問題。法定の日当1万5千円を超える3万円をウグイス嬢に渡したとして広島地検が事務所などを捜索、野党も問題視し、追及は激しさを増すばかりだ。
もっとも、永田町雀たちからは、
「そんなの、どこの事務所もやっているよ。嫌われ者の河井さんだから情報が漏れたんでしょ」
なんて本音も聞こえてくる。当選という花を咲かせるため、鶯のようなきれいな声音を武器に有権者に訴えるウグイス嬢を政治家とどう調和させるか。そのことが選挙結果を左右するからこそ、少しでも優秀なウグイス嬢を抱えたい。買収行為は大なり小なり、どこの事務所でも行われている、というわけだ。中でも、河井前法相の場合、法を司る現職大臣だったからこそ、これほどの大騒動になったともいえる。
では、折しも、梅の蕾が膨らみ、まさに咲かんとするこの季節、今回、本誌(「週刊新潮」)が示す事例はどうか。
もう一人の現職大臣と参院議員に公選法違反の疑いが持ち上がっているのだ。
夏に東京五輪を控え、その旗振り役として期待される橋本聖子五輪相(55)と、北海道知事を4期務め、昨夏の参院選で初当選した高橋はるみ参院議員(66)のことである。
その端緒は一般に公開されている選挙運動費用収支報告書を閲覧することで得られる。昨年の参院選で5選を目指し、全国比例で出馬した橋本氏は総務省に、北海道選挙区から国政初挑戦となった高橋氏は北海道の選挙管理委員会に、選挙にかかった費用について領収書の写しを含め提出する決まりとなっている。そこには当然、ウグイス嬢の人件費も含まれているのだが、両者を比較すると、“疑惑のウグイス嬢”が存在していることに気づかされる。
仮に彼女の名を吉田優子さん、としよう。
歳の頃は50代半ば、年齢を感じさせない美人ウグイス嬢だ。
吉田さんは両者の報告書に名を連ね、その報酬とともに稼働した日数が記載されている。橋本氏の方では、
〈4~7・19日 14・15・18・20日半日〉
とある。昨夏の参院選は公示が7月4日。投開票日が21日だったために、その前日の20日までの17日間がいわゆる選挙運動期間にあたる。この場合は7月4日から7日までと19日、さらに残りの日付は半日働いたということを指している。つまり、一日中働いたのは5日、半日働いたのは4日というわけだ。
他方、高橋氏の報告書を見ると、吉田さんは14日間働いた、という主旨の記載をしている。
すると、両陣営の稼働日数を足すと、17日を優に超えてしまう。すなわち、体が二つなければできない仕事量を吉田さんはこなしていることになるのだ。
元東京地検検事の郷原信郎弁護士は、
「明らかにおかしいですね。ウグイス嬢を共有したことによって実態とかけ離れてしまったのか。解明しなくてはならない問題です」
さる橋本陣営のウグイス嬢はこう言う。
「初心者もベテランも同じ給料だと聞いていました。それでも、吉田さんはすごく働いているので、奉仕精神のある人だなと思っていたんです」
道理が通らない奇妙な記載の理由は何なのか。その謎には(2)で分け入っていくとして、まずは2人の関係について解説せねばなるまい。
まずは、半年ほど時間を遡ることとする。
参院選の選挙戦最終日の昨年7月20日、橋本聖子候補と高橋はるみ候補は札幌市内にあるJR琴似駅前で顔を揃えた。厳しい選挙戦を乗り切ろうとガンバローコールで必勝を期していたのだ。
「この選挙で橋本さんと高橋さんはべったりでした」
と、地元記者が解説する。
「橋本さんは昨年7月まで自民党の参議院会長を務めていました。自身の選挙とはいえ、この参院選で他の候補者の応援に奔走することはあまりなかった一方で、高橋さんと街頭演説を一緒に行ったり“選挙区は高橋さんに!”と演説するなど、蜜月ぶりが目立っていたんです」
その背景に、官邸が暗躍し、自民党内で激しい鞘当てが演じられた昨年4月の北海道知事選があった、と続ける。
「知事選には菅官房長官が同じ法政大の後輩で、前夕張市長の鈴木直道氏を立てるべく調整していました。これに反発したのが、橋本さんや高橋さん、自民党の北海道議たち。一部の国会議員を除き、道議らが“北海道出身ではない”“若すぎる”などの理由で別の候補者を立てるべく模索していたのです」
一時は橋本氏が立候補するという情報も出回るが、二階幹事長が橋本氏と面会して事態を収めるまでに。
「もともと橋本さんと高橋さんの仲は良かったのですが、知事選でさらに距離を縮めたと言われています。また、橋本さんは安倍総理の出身派閥である細田派(清和研)に所属、森喜朗元総理を後見人としています。高橋さんは同じ通産省出身で、清和研前会長の故・町村信孝前衆院議長に可愛がられていた。橋本さんを含めた人間関係があったから、高橋さんも当選後、細田派に入ることになったのです」(同)
そんな大御所の先輩議員と親しくしていながら、高橋氏の選挙戦はずさんそのものだったという。
自民党の道連関係者によれば、
「陣営の仕切り役があまり選挙のわかっている人ではなく、高橋さんのウグイス嬢の集まりも悪かった。そこで、橋本さんのところでやることが決まっていた吉田さんに白羽の矢が立ったと聞いています。だからなのか、選挙運動費用収支報告書もめちゃくちゃで……」
その一つとして宿泊費の問題がある。
「実は高橋さんの収支報告書には選挙期間中の本人や運動員らの宿泊費が1泊分すっぽり抜け落ちているのです。7月11日に稚内に宿泊した際のものなのですが、法定の宿泊費を超えるホテルに泊まったんです。法令では1泊2食付きで1万2千円までと定められているのに、ひとり2万円を超えてしまった。スタッフ全員の支払いは総額で約41万円だったそうで、夕飯にたこしゃぶが出てきたとか。これでは立派な運動員買収となり、領収書を選管に出すことができなかったのです」(同)
宿泊した高橋陣営のスタッフは、
「普段の食事は千円以下のお弁当なのに、その日はホテルの夕食でした。大変だから、という事務所の計らいでしょう。いつもよりゆっくりできたのではないですか。橋本陣営も一緒のホテルでしたよ」
まさに、「たこしゃぶ接待」。これが疑惑その1である。
(2)へつづく
「週刊新潮」2020年2月6日号 掲載