「信頼を害し、悪質」 マイニング訴訟逆転有罪判決で東京高裁

他人のパソコンを無断で動かして仮想通貨を獲得する「マイニング(採掘)」をさせるプログラムはコンピューターウイルスに当たるかどうかが争われた刑事裁判の控訴審判決で、東京高裁は7日、不正指令電磁的記録保管罪に問われたウェブデザイナーの男(32)を無罪とした1審・横浜地裁判決(2019年3月)を破棄し、罰金10万円の逆転有罪判決を言い渡した。
栃木力裁判長はプログラムはウイルスに当たると認定し、「プログラムに対する社会一般の信頼を害し、悪質」と述べた。男は上告する方針。
仮想通貨の取引は、インターネット上でユーザーが正当性をチェックする。膨大な計算が必要で、答えを導き出すと報酬として仮想通貨が支払われる。金鉱を掘り当てる作業になぞらえてマイニングと呼ばれる。
判決によると、男は17年、自身が運営するウェブサイト内にマイニング用のプログラム「コインハイブ」を設置。サイト閲覧者のパソコンに無断で指令を送ってマイニングをさせ、仮想通貨「モネロ」を獲得した。
同罪は「他人のパソコンに意図に反する動作をさせる不正な記録」をウイルスと定義する。公判の争点は、①閲覧者のパソコンは意図に反した動きをしたか(反意図性)②不正な指令があったか(不正性)――の2点。1審は反意図性を認めつつ、不正性はなかったとして無罪とした。
これに対し高裁は、コインハイブは、サイトの閲覧に必要なものではなく、閲覧者はマイニングが実行されていることを知ることも、拒絶することもできないと指摘し、反意図性を認めた。さらに、閲覧者は利益が得られるわけではないのに、知らないうちにパソコンの機能を提供させられていると指摘。「プログラムに対する信頼保護の観点から、社会的に許容すべき点は見当たらない」として不正性も認定した。【田中理知】
高裁「閲覧者に一定の不利益」
東京高裁は、コインハイブの性質を詳細に分析した結果、「閲覧者に一定の不利益を与え、社会的に許容されない」と判断して逆転有罪の結論を導いた。
1審は、コインハイブの存在でウェブサービスの質の維持向上が期待できるとして、有益性や必要性を肯定的に評価した。サイトを改ざんするような悪質なプログラムもあることや、捜査当局が事前の注意喚起がないまま検挙したことなども考慮し、無罪を導いた。
一方の高裁は、閲覧者が気が付かないまま行うウェブサービスの質の維持向上は「実現されるべきでない」と指摘。違法性が高いプログラムと比較した手法を批判し、捜査当局の注意喚起の有無で不正性は左右されないと述べた上で、「不正かどうかはプログラムの機能を中心に考えるべきだ」として退けた。
甲南大法科大学院の園田寿教授(刑法)は「自らの利得のために無断で他人のパソコンを使ったことに正当性はない。高裁の判断は妥当」と評価した。一方、情報関連の政策を国や自治体に提言する「情報法制研究所」(東京)の高木浩光理事は「高裁の判断では、新しい技術で利益を得ようとすると、全て罪に問われてしまうのではないか」と危機感を示した。