1998年に岡山県北部を襲った台風10号で、同県津山市の牧場から約90キロ離れた瀬戸内海の島まで流されながら奇跡的に生還し、「奇跡の牛」と親しまれた雄牛の「元気くん」が1月14日、老衰のため天国に旅立った。満21歳は人間の年齢に換算すると105歳程度に相当するという。飼育されていた勝央町の農業公園「おかやまファーマーズマーケット・ノースヴィレッジ」で8日、お別れ会が開かれる。
元気くんは、食肉用として津山市の牧場で育てられていた。生後約半年だった98年10月、台風10号が県北部を襲い、氾濫した吉井川の濁流に牧場がのみ込まれて他の20頭とともに流されてしまった。だが数日後、元気くんは約90キロ離れた瀬戸内市の黄島で漁師に発見された。その生命力の強さが「奇跡の牛」として人気を呼び、飼い主が同園に寄贈。牛舎の隣には「元気くん神社」が設けられ、強運にあやかろうと訪れる人が絶えず、復興のシンボルとして絵本や歌も作られた。
園の担当者によると、元気くんはおとなしい性格でじっとしていることが多かったが、毛のブラッシングが好きで人懐っこい一面もあったという。今年に入ってからは食欲が落ち、餌を湯でふやかすなどして軟らかくしていたが、それも食べられなくなり、今年1月13日には立てなくなってしまったという。翌14日朝、牛舎で死んでいるのが発見された。担当者は「園で一番人気の大きな存在だったので寂しい」としながらも、「“牛生”を全うしてくれたかな」と牛舎を見つめた。
16日から同園の牛舎前に設置された献花台には、多くのファンから花や野菜、絵が供えられた。添えられたノートには「ありがとう。ゆっくり休んで」や「ここに来ると水害のことをいつも思い出した」といったコメントが数多く寄せられている。【戸田紗友莉】