ソフトバンクの機密情報漏えい事件で、元社員の荒木豊容疑者(48)=不正競争防止法違反容疑で逮捕=から情報を受け取ったとされる在日ロシア通商代表部幹部の外交官が10日午後、警視庁公安部の出頭要請に応じないまま成田空港から出国した。公安部は、荒木容疑者を唆したとして、同法違反の教唆容疑で書類送検する方針。
捜査関係者によると、出国したのは同代表部のアントン・カリニン幹部(52)。モスクワ行き直行便に搭乗しており、このまま帰国するとみられる。
警察当局は、カリニン幹部が旧ソ連国家保安委員会(KGB)の流れをくむロシア対外情報庁(SVR)の情報機関員とみている。日本の科学技術や情報通信技術を狙う諜報(ちょうほう)活動の一環で荒木容疑者に近づいたスパイ事件とみて、事情聴取を要請していた。
カリニン幹部は、荒木容疑者に連絡先を教えず、会う度に次の会合場所と日時を指定していたという。会合は2~3カ月ごとで、場所は毎回異なっていた。公開資料の要求から始め、徐々に機密性の高い情報を求めていたとみられる。
また、公安部は10日、荒木容疑者が別の通信技術に関する社外秘の情報も2019年3月に不正に入手していたとして、同法違反容疑で追送検した。この情報もロシア側に渡っていた可能性がある。
荒木容疑者は19年2月18日にソフトバンクの通信設備に関する営業秘密2件を不正に取得したとして、1月下旬に警視庁公安部に逮捕された。「ロシアのスパイかもしれないと思ったが深く考えなかった。小遣い稼ぎだった」と供述しているという。受け取った報酬は数十万円に上るとみられている。【金森崇之】