北海道・神田日勝記念美術館 朝ドラ『なつぞら』効果で来館者4倍に

北海道鹿追町の開拓農民で画家だった神田日勝(1937~70年)の遺作「馬(絶筆・未完)」をモデルにした段ボールの立体アート作品の展示が、同町の神田日勝記念美術館で始まった。NHK連続テレビ小説「なつぞら」で俳優の吉沢亮さんが演じる青年画家「山田天陽」のモチーフとされる神田日勝。遺作の半身の馬を再現した立体アートが、ドラマ効果で激増する来館者の注目を集めている。【鈴木斉】
立体アートは遠軽町出身で神奈川県在住の造形作家、吉田傑さん(32)が3月から制作に取り組んだ。骨組みから肉付け、毛並みまですべて段ボール。色合いの違う段ボールを組み合わせ、絵画を忠実に再現した。
来年の没後50年のプレイベントとして同美術館が制作を依頼。吉田さんは「日勝の独特の筆跡や色遣いを分析し、段ボールに反映させることに集中した」と振り返った。
農耕馬らしい厚みのある馬体(高さ約160センチ)で、馬の息づかいも伝わるような作品は、神田日勝の遺作に対峙(たいじ)する形で置かれている。展示を企画した同美術館の川岸真由子学芸員は「絵画の状態では見えないものが立体化で見える。比較することで、日勝作品の新しい発見や感じ方が生まれる」と話した。
神田日勝は東京で生まれ、戦時下に一家で鹿追町に入植。農民として生きながら油絵に没頭し、敗血症で亡くなるまで精力的に作品を制作した。ベニヤ板にコテやペインティングナイフなどで描く作風が特徴で、農耕馬の半身までで制作が途絶えた未完の遺作が特に知られている。
「なつぞら」の主人公の幼なじみ「天陽くん」として登場した山田天陽の人気もあり、美術館の来館者数はここ2カ月で1万人を超え、前年同期の4倍に激増。美術館がネット販売している神田日勝に関する書籍の注文も急増しているという。
立体アートの展示は11月4日まで。同館の入館料は一般520円、高校生310円、小中学生210円(消費税率引き上げに伴う改定料金は未定)。