鳴き声消えた 北限の「スズムシ群棲地」指定解除 秋田

スズムシの群生地として日本の北限となっていた秋田県五城目町にある県指定天然記念物「スズムシ群棲(ぐんせい)地」が指定を解除される見通しとなった。該当の山林では平成の初めから鳴き声が聞こえなくなったといい、生活の変化などでスズムシに適した環境が失われたためと考えられている。【川口峻】
1月30日、県庁議会棟で開かれた県文化財保護審議会(冨樫泰時会長)は、1960年に指定された群生地の解除などについて審議した。冨樫会長は「(スズムシが)いないのならしょうがない」とし、県教育委員会に対して解除を妥当とする答申をした。3月にある教育委員会会議で、正式に決まる見通し。
指定されていたのは五城目町役場から北に約1・5キロにある森山の南西斜面約28ヘクタール。登山道へと続く道には、「これより六〇〇米先『すゞ虫群棲地』あり」という色あせた文字が標柱に残るが、今は熊への注意を呼びかける看板の方が目立っている。
県や町によると、山はかつて、スズムシにとって適していた牛の飼い葉の採取地や果樹園などとして利用されていた。現在は杉が植えられており、こうした変化とともに、30年ほど前までは聞こえていた鳴き声が、今はすっかり聞かれなくなったという。周辺では、牛を飼わなくなり、スズムシの声も聞こえなくなったとの話もあるという。
地元で保護活動に取り組んできた一ノ関信伽さん(76)は、「昔はうるさいほど鳴いていた。指定解除もやむを得ない」と肩を落とす。一ノ関さんは毎年、成虫を放してきたが、町と県の調査では2014~19年度に定着を確認できなかった。
県内では由利本荘市西目地区で今も、スズムシが群生している。同市のスズムシ愛好会顧問・河本正徳さん(85)は、「地域の人々の関心も高めつつ、群生地を保護していきたい」と話している。