40代男性のリアルな婚活とは?(イラスト:堀江篤史)
同い年ぐらいの普通の男性と出会って結婚したいのだけれど、相手が見当たらない――。筆者は43歳で、同世代であるアラフォーの独身女性からこんな相談を受けることが少なくない。
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ここでの「普通」は、ちゃんと働いて自活している、心身ともに健康で清潔感がある、口下手でもいいので思いやりのあるコミュニケーションができる、などの要素で構成されている。
該当するアラフォー独身男性が皆無なわけではない。しかし、この世代の男性が婚活をする場合、例えば10歳ぐらい年下の女性とお見合いして結婚することも十分に可能だ。
だからこそ、同世代との結婚を望む「普通のアラフォー男性」は希少価値で、婚活の場に出て数カ月以内にいなくなってしまうことも少なくない。結婚相談所で言う成婚退会だ。今回、そのうちの1人と接触することができた。都内でシステムエンジニアをしている横山博明さん(仮名、39歳)だ。
博明さんは関東地方の国立大学を卒業し、28歳のときに同じ業種で転職をして、現在は大企業のシステム子会社で働いている。年収は約500万円。残業は多くない。あるマイナースポーツで体を鍛えており、いわゆる細マッチョな体型でスーツがよく似合う。とりわけハンサムというわけではないが優しそうな顔立ちだ。実家も東京にあり、70代の両親は健在で、未婚の姉がいる。
インタビュー場所に使わせてもらったのは門前仲町にある燻製バル「KoO」。2階席を予約しておいたところ、「いい雰囲気の店ですね。ワインも楽しみです」と博明さんは口に出して喜んでくれた。筆者が東京滞在中に愛用している店なので褒められるとうれしい。
博明さんがある結婚相談所に入会したのは2019年の6月だった。約30人の女性からお見合いの申し込みを受け、土日を使って1日に2、3人ペースで計10人とお見合いをした。そのうちの1人である看護師の加奈さん(仮名、39歳)との交際を決め、11月には婚姻届を提出したという。明らかに成功事例だが、本人は婚活に苦労したと振り返る。
「自分からお見合いを申し込んだ3人の女性からは返事が来ませんでした。ショックでしたね。婚活は疲れるので仕事が忙しいときは無理です。やるならば短期集中型でやるべきだと思いました」
訥々とした口調で語ってくれる博明さん。謙虚さがにじみ出ていて好感が持てる人物だが、積極的に会話を盛り上げるほうではなさそうだ。聞けば、女性と交際した経験は「ないと言っていい」とのこと。20代半ばで会社の後輩女性に好意を持ち、何度かデートはしたけれど、恋が実ることはなかった。その後、恋愛や結婚を求めてはいなかったのか。
「中学時代からつるんでいる友達が3人いて、彼らはまだ1人も結婚していません。その影響が強かったのかもしれません。先ほどお話ししたスポーツは地方大会に参加するほどハマっていて、週末はそれに打ち込んできました」
そんな博明さんが婚活に興味を持ったきっかけは、一緒にスポーツをしている同い年の友人に恋人ができたことだった。女性と付き合っている姿が想像できない友人だっただけに、博明さんは初めて焦りを覚えた。
「結婚願望自体は今でも高くありません。でも、5年後10年後に活動を始めても、時すでに遅しで後悔すると思ったんです。今のうちに(婚活を)ちょっとやってみようかな、と」
引っ込み思案な性格を自認している博明さんは、大勢の男女が総当たり方式で交流する婚活パーティーに参加する気にはなれなかった。母親から結婚相談所を勧められたが、今度は費用面が気になった。
「私は昔から株などの投資をやっていて、お金には敏感に反応してしまうのです。ネット記事などを見て、複数の女性スタッフで運営していて雰囲気がよさそうで、入会金も月会費も安いところを見つけました」
入会後、自分からお見合いを申し込んだ3人からは返事がなかったのは先述のとおりである。ただし、条件のいい博明さんは女性からお見合いを希望されることが多かったため、受け身の立場でも問題はなかった。申し込んでくれた約30人の中から10人とお見合いし、加奈さんとの交際を決めた判断基準は何だったのか。
「土日にしかお見合いをしていなかったので、全員と会うことはできません。少しだけ選ばせてもらっていました。見た目が好みであるか否かはやっぱり重要です。それから婿養子に入ってほしいという希望は私にはかなえられません。私は子どもは欲しくないし、共働きがいいので専業主婦になりたい人も遠慮しました」
博明さんの場合、実際にお見合いしたのは3人に1人だった。より条件がいい男女には申し込みがさらに集中する。選ばれてお見合いにこぎつけるためには、うそのない範囲で自分をアピールしなければならない。つまり、プロフィールに何を書くか、写真をどうするかは最重要なのだ。文章が短すぎたり、写真がいい加減なものだったりすると、まだ会ってもいない相手から「真剣度が低い」と判断され、自らの可能性を狭めてしまう。
当然のことだが、交際に進むか否かは顔を合わせてからの相性次第である。2人の場合、会話上手とは言えない博明さんに対して、加奈さんのほうがいろいろと話しかけてくれた。
「私も緊張せずに話せました。会話が途切れても悪い雰囲気ではなかったと思います」
6月にお見合いした後、1カ月ほどのうちに3回ほどデートをして、8月には本交際(ほかの人とのお見合いや交際をやめること)に進んだ。3カ月後に入籍。このテンポのよさも、加奈さんのリードによるものだった。「長く付き合ってから判断したいほうですか?」と遠回しにプロポーズを急かしたのだ。おそらく加奈さん側のカウンセラーがアドバイスしたのだろう。
結婚相談所を利用してお見合いや交際をする場合、当事者の2人に加えて、双方のカウンセラーが交際を見守るという形が理想である。相手に聞きたいことや言いたいことなどを波風立てずに伝えやすくなり、誤解や気持ちのすれ違いが生じにくいからだ。もちろん、交際終了もカウンセラーを通じて行われる。
この原稿を書いている2020年1月末現在、博明さんと加奈さんはそれぞれ一人暮らしをしている。博明さんが住んでいる分譲マンションをできるだけ高値で売り、そのお金で2人の家を買い直す予定だからだ。3月までには本格的な新婚生活を始めたいと博明さんは考えている。ただし、生活や気持ちにはすでに大きな変化を感じているらしい。
「独身時代は仕事以外では好き勝手にやっていました。今は、週末ごとに妻と鎌倉などに出かけています。決まった話し相手がいるのはいいものですね。テレビ番組で美味しそうな店が紹介されていると、妻と一緒に行くために記憶にとどめておこうとします。以前にはなかったことです」
今まで打ち込んできたスポーツに関しては回数が減ってしまったものの、縁遠くなったわけではない。加奈さんと別行動する時間もある。結婚したからといって、自由に使えるお金や時間がなくなるわけではないのだ。
むしろ、家族だからこそ行きたい場所やコースを発見したりする。博明さんの場合は鎌倉小旅行だ。同じく晩婚さんの筆者は、旅というより長距離移動が好きではなかったが、頼もしい妻とならばドライブも海外旅行も楽しめている。
何かすばらしいものに出会ったとき、自分1人だけではなく、あの人と分かち合って喜ぶ顔が見たいと思う。そんな気持ちを家族愛と言うのかもしれない。