教育熱心ゆえのげんこつやビンタがまかり通った時代は遠い昔。そんな時世に、宮城県の小学校教師が「足を切るぞ」と注意した。しかも刃渡り26センチのノコギリを握っていたから、騒がれたのもむべなるかな。しかし実際に地元から聞こえてくるのは意外な評判である。
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くだんの発言は、今月3日に仙台放送が報じた。
〈ノコギリ持って「足切ってやるから」…塩釜市の小学校女性教師〉
地元の河北新報も翌日の紙面で、〈児童に不適切指導〉と報じた。これら報道の内容をまとめると、このような具合になる。
先月16日、宮城県塩釜市立第三小学校で、4年生のクラス担任の女性教師が理科の授業中に悪ふざけをした児童3人に注意。3人が態度をあらためなかったので、教師は図工準備室からノコギリを持ち出して問題発言をした。市教育委員会の「大変不適切な事案で遺憾」との談話も載った―。
こりゃ大変と大手紙も追い民放もこぞって取り上げたが、塩釜市教育委員会学校教育課の遠山勝治課長は、
「子どもたちだけでなく、保護者の皆さまにも心配をかけてしまい、本当に申し訳ないと思っております」
としつつ、明かすのだ。
「実は、女性教員と児童側、つまり当事者間ではすでに片づいていた話なのです」
どういうことなのか。
遠山課長の話を続ける。
「理科と図工だけは、女性教員とは別の教員の受け持ちでした。その理科の時間、“3人が近くの子にちょっかいを出したりしていた”。ほかの子からそう聞かされた女性教員は休み時間に呼び出しました。以前、3人が授業中に立っているのを見たことがあったようで、ノコギリを持ち、“何度言ったら分かるの。授業中に歩けないように足を切るぞ”と叱ったのですが、そのときは席を立っていなかった。女性教員はこの勘違いによる指導を3人に謝り、後日、保護者にも理解していただいていたのです」
それが1月20日。市教委は事態を見守る構えだった。
「ですが、誰かが外部に洩らして騒ぎになりました」
4年生の当該クラスの保護者は憤りながらこう話す。
「養護学校での勤務経験もある、ベテランのいい先生です。厳しい面もありつつ、面白おかしい冗談も言って授業を盛り上げてくれる方。呼び出された3人も授業中に走り回ったりしていたことがあったそうなので叱るのは当然じゃないですか。なのにこんな形で報じられてしまい……」
女性教師は担任を外され、職員室で待機となった。
「今回の件が報じられるまで、不調を訴えたりする子は皆無でした。子どもはまったく気にしていなかったわけです。でもいまは、“先生が悪いことをしたわけじゃないのに、なんで先生だけ悪者になってしまうの”と、学校に行きたがらなくなってしまった子もいるほどなんですよ。校長による説明会もありましたが、先生を責めるどころか擁護する声が多かったのに」
情報提供を受けた地元メディアは、実態をもっときちんと取材すべきではなかったか。
「週刊新潮」2020年2月20日号 掲載