新型肺炎予防で露呈した日本の医療の「盲点」 「かかりつけ医」制度の未整備があだになった

新型コロナウイルスの感染拡大の防止が急務になっている。政府の水際対策がうまくいかなかったことへの批判が高まる中、厚生労働省は感染症でどのような症状のときに相談や受診をすべきかについての目安を公表した。 厚労省が目安を公表したのは、どのような状態になれば病院に行けばよいのかがわからない人が多いからである。 ■相談・受診の目安はまるで「ケースバイケース」 「ちょっとした予兆を感じただけで病院に行かないように」と言われるが、さりとて37.5℃以上の熱が4日以上続くまで、帰国者・接触者相談センターに相談できないというのも困る。「持病を持つ人や妊婦はその限りではない」と厚労省は補足してみたりする。 結局、政府は相談・受診の目安を示したものの、ケースバイケースとさえ言えてしまうような示し方になってしまった。 確かに、ちょっとした予兆を感じただけで感染の検査を受けに病院に行く人が殺到すれば、病院はパンクしてしまう。ただでさえ、風邪や肺炎以外の持病のある患者も受診に訪れているのに、医師も対応しきれない。 しかし、本当は感染しているのに症状がかなり悪化するまで我慢して受診しないというのも問題だ。 なぜ、こうした事態に陥ったのか。 それは、日本にかかりつけ医制度が定着していないからである。 われわれが病気やケガをして「病院に行く」というが、厳密にいえば、軽度の病気やケガなのにいきなり病院に行ってはいけない。というのも、病院とは、20床以上のベッド(病床)を持って入院患者も受け入れられる医療機関と定義されている。19床以下の病床しかない医療機関は、「診療所(クリニック)」である。多くの診療所に入院機能はなく、外来診療のみを行っている。医療機関は、病院と名乗るのか診療所と名乗るのか、この定義に基づき厳格に名称を付けている。 ■かかりつけ医不在のまま感染拡大に直面 その観点から言えば、病院は入院患者を受け入れるが、診療所は外来診療を担う、という役割分担が想定される(もちろん、人口が少ない地域ではこうした役割分担が十分に行えない場合もある)。 したがって、この違いを理解すれば、重篤な自覚症状がなければ、まずは「診療所に行く」と言うべきなのだ。いきなり大病院に駆け込んではいけない。 医学の素人である患者は、自分の病状を的確に判断できない。日ごろから自らの身体状態をよく知っていて、信頼できる身近な医師(いわゆる「かかりつけ医」)がいれば、かかりつけ医に慌てずに相談すればよい。かかりつけ医は、自宅で静養すれば治る程度のものなのか、深刻な病気の予兆なのかを判断してくれる。必要があれば、大病院への紹介もしてくれる。

新型コロナウイルスの感染拡大の防止が急務になっている。政府の水際対策がうまくいかなかったことへの批判が高まる中、厚生労働省は感染症でどのような症状のときに相談や受診をすべきかについての目安を公表した。
厚労省が目安を公表したのは、どのような状態になれば病院に行けばよいのかがわからない人が多いからである。
■相談・受診の目安はまるで「ケースバイケース」
「ちょっとした予兆を感じただけで病院に行かないように」と言われるが、さりとて37.5℃以上の熱が4日以上続くまで、帰国者・接触者相談センターに相談できないというのも困る。「持病を持つ人や妊婦はその限りではない」と厚労省は補足してみたりする。
結局、政府は相談・受診の目安を示したものの、ケースバイケースとさえ言えてしまうような示し方になってしまった。
確かに、ちょっとした予兆を感じただけで感染の検査を受けに病院に行く人が殺到すれば、病院はパンクしてしまう。ただでさえ、風邪や肺炎以外の持病のある患者も受診に訪れているのに、医師も対応しきれない。
しかし、本当は感染しているのに症状がかなり悪化するまで我慢して受診しないというのも問題だ。
なぜ、こうした事態に陥ったのか。
それは、日本にかかりつけ医制度が定着していないからである。
われわれが病気やケガをして「病院に行く」というが、厳密にいえば、軽度の病気やケガなのにいきなり病院に行ってはいけない。というのも、病院とは、20床以上のベッド(病床)を持って入院患者も受け入れられる医療機関と定義されている。19床以下の病床しかない医療機関は、「診療所(クリニック)」である。多くの診療所に入院機能はなく、外来診療のみを行っている。医療機関は、病院と名乗るのか診療所と名乗るのか、この定義に基づき厳格に名称を付けている。
■かかりつけ医不在のまま感染拡大に直面
その観点から言えば、病院は入院患者を受け入れるが、診療所は外来診療を担う、という役割分担が想定される(もちろん、人口が少ない地域ではこうした役割分担が十分に行えない場合もある)。
したがって、この違いを理解すれば、重篤な自覚症状がなければ、まずは「診療所に行く」と言うべきなのだ。いきなり大病院に駆け込んではいけない。
医学の素人である患者は、自分の病状を的確に判断できない。日ごろから自らの身体状態をよく知っていて、信頼できる身近な医師(いわゆる「かかりつけ医」)がいれば、かかりつけ医に慌てずに相談すればよい。かかりつけ医は、自宅で静養すれば治る程度のものなのか、深刻な病気の予兆なのかを判断してくれる。必要があれば、大病院への紹介もしてくれる。