「35歳の壁」という言葉は、転職しづらくなる年齢の指標として使われている。35歳は、新卒で就職すれば浪人などの事情があっても職歴10年を超える時期。職務にも専門性が出てくることから、他業界や異なる職種への転職が難しくなるとされている。
しかし、35歳の壁はキャリアにのみ襲い掛かるのではない。35歳を超えた男性は、子供を持てる可能性、そして結婚できる可能性がガクンと下がっていく。今回は特に男性が見逃しがちな「男性不妊」「生涯未婚」のリスクを深く掘り下げていこう。
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2月18日に、産経新聞社主催「夫婦で妊活セミナー」が開催された。そこで順天堂大学の辻村晃医師が登壇し、男性不妊の3大リスク要因を提示した。そのうちのひとつに「加齢」が明記されていたのだ。
あまり知られていないことだが、男性も加齢とともに「妊娠させる力」が低下する。具体的には精子の数が減り、動きも鈍くなる。さらに日本生殖医学会によると、妊娠できたのちも男性の年齢によって流産のリスクが上昇するとわかっている。45歳以上の男性は、25歳の男性より約2倍の確率で子が流産しやすくなるという。
現在、夫婦の35%が子を作れずに悩んでおり、18%は不妊治療へ踏み出している。不妊治療には「女性がするもの」というイメージがあるが、男性由来の不妊も約半数を占める。NHKによると、精子の質において下り坂が始まるのが、35歳ごろだという。
男性は女性と比較して妊娠のタイムリミットを意識しない傾向にある。だが、男性も加齢とともに妊娠させる力は衰えていくのだ。芸能界で40代以上の男性が子をなすニュースがあると「俺もまだまだ」と勘違いしそうになるが、自然妊娠の確率は確実に下がっていく。
「不妊治療をしていても、芸能人でオープンにする人は少ない」ことや「芸能人なら不妊治療にお金を使える可能性が高い」ことも無視してはならない。
子どもがいなくてもいいや、という男性も安心はできない。「35歳の壁」は結婚にも襲い掛かるからだ。
2015年と2010年の国勢調査を比べると、当時35~44歳だった男性で、5年後に結婚できたのはわずか8%。35歳を超えた男性は13人に1人しか結婚しないのだ。
といっても、この数字には「結婚したくない人」「性的マイノリティで結婚制度が使えない人」が入っている。そこでこれらの人を割り引いても、およそ10人に1人の男性は「35歳を超え、結婚したいのに結婚できなかった人」になる可能性がある。
ではなぜ、このような事態が起こるのか。答えは女性が考える「結婚適齢期」である。
女性は、年上男性を結婚相手に好む。これは長年信じられてきた「神話」だった。しかし、7割の女性は年齢差±3歳の相手と結婚する。7歳以上年上の男性と結婚する女性は11%しかおらず、しかもこれはお見合い結婚の減少と比例して下がっている。
つまり、これまでも年上男性は「モテる」から結婚できたのではなく、お見合いで結婚できていただけだったのだ。恋愛結婚、あるいは自分で相手を選ぶ婚活が主流になれば、年上男性が一切モテなくなる日も近い。シンプルに「年上男性は結婚対象外」なのである。
ただし、この前提にある「年上男性と年下女性の結婚」を壊せば、話は別だ。男性が同年代の女性とマッチングすれば、結婚できる可能性は上がっていく。
しかし、データを見ると35歳以上の男性も多くは25~33歳の女性を求める傾向にある。35歳ぴったりに婚活を始めればギリギリ女性の±3歳差で32~33歳の女性と結婚できるが、加齢とともに可能性はどんどん下がっていくのだ。
32~33歳の女性は同年代・年下男性と出会うチャンスも多い。「年収2,000万円以上」のような経済力がないと、太刀打ちできないのである。テレビなどではよく、無謀な年収を男性へ求める婚活女性が笑いものになっている。だが、男性も無謀な年齢差を求めがちという意味では同じ立場だ。
ここからは筆者の主観だが、特にモテてきた男性ほど、年下女性を求める傾向が強い。というのも、彼らは年下女性と恋人関連にはなれるからだ。
「恋愛で相手にしてもらえる、つまりモテるから結婚相手にもなるだろう」ととらえても、結婚相手としては範疇外にされてしまう。女性はあまりに年上の男性との結婚は親の介護や男性不妊リスクを踏まえて考えるからだ。
男性不妊については、当事者の男性よりも女性のほうがずっと詳しい。男性が出産をふまえて35歳以上の女性を避ける傾向があるように、女性も35歳以上の男性を結婚相手とはみなしにくいのだ。
いますでに35歳を超えているのなら、あるいは35歳を目前にしているのなら――。結婚したい方は、すぐに婚活を始めることだ。今日が人生で一番若い。頭を抱えて「どうせ無理だ、でも、結婚したい」と悩んでいるだけでさらに年を取るなら、元も子もない。
そして、男性も妊娠力チェックをしておきたい。結婚する前に自分の現状を知っておくほうが、「結婚するか否か」「子供を作る前提で婚活するか」など、将来設計もしやすくなる。
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さらに、精子の状態は加齢とともに悪くなっていくが、それでも運動習慣や食生活で改善できる。仮に精子が1つもなくとも、精巣から精子を取り出すことも状態によっては可能だという。子を作れるかどうかは「1か0か」ではない。今からをスタートラインとしてまずは検査をしていただきたい。
男性不妊の検査ができるのは一部の泌尿器科、婦人科(通いづらいだろうから、ここでは割愛する)、そしてSeem(シーム)などの自宅検査キットになる。ぜひネットで検索して、お近くの男性不妊検査ができる外来を探してみてほしい。
自分の現状を知るのは、絶望するためではない。与えられたカードを理解し、自分にとってベストな人生を作るためだ。妊娠力も、婚活もせず「いつか結婚したい、いつか子がほしい」とだけ願うのは、目隠しをしながらババ抜きするようなものだ。
35歳の壁を理解したうえで、自分が幸せになる道を切り開いていただきたい。