石炭火力プラント輸出に反対、原発についても踏み込んだ発言。小泉環境大臣の“変身ぶり”

◆小泉進次郎環境大臣の「変身」!?

「(気候変動問題に関する)セクシー発言は意味不明」「温室効果ガスを大量排出する石炭火力推進政策をなぜ変えようとしないのか」などと国内外で批判が噴出した小泉進次郎環境大臣が一転、今年1月21日の会見で石炭火力プラント輸出に反対する発言をした。日本が国内外の批判を受けていることにも触れ、「国際社会や国民から理解できる政策の形につなげていきたい」と意気込み、関係各省との調整を進める考えも明らかにしたのだ。

この“変身ぶり”を翌22日に大手新聞は一斉に報じた。『朝日新聞』が「石炭火力規制に前向き発言 小泉環境相 海外発電所建設計画 調査の意向」と銘打つと、『毎日新聞』も「小泉氏 石炭火力輸出『おかしい』」と報じ、『東京新聞』も「小泉氏、石炭火力に反対 ベトナムで日本企業計画」という見出しで足並みをそろえたのだ。

筆者も驚いた。大臣就任直後に福島県庁で直撃しても無言だったが、この日の会見では別人のような発言を連発したからだ。冒頭の説明でベトナムへの火力プラント輸出案件「ブンアン2」のプロジェクト名をあげて問題点を列挙、JBICを所管する財務省などの「各省と調整していきたい」と意気込んだのだ。

◆「日本の政策を、よりよい脱炭素化に資する方向に変えていきたい」

自ら耳にした虚偽説明の暴露もした。

「この件の実態は、日本の商社が出資をして『JBIC(国際協力銀行)』が入り、プラントのメーカーとして中国のエナジーチャイナと米国のGEといった形で成っています。今までさんざん聞いてきた一つのロジックは『日本がやらないと中国が席巻する』とも聞いてきました。しかしこの構図は日本がお金を出して、結果、つくっているのは中国とアメリカ。こういう実態を私はやはりおかしいと思います」

筆者はこの時、「原発ゼロ社会」実現を訴えて全国講演行脚を続ける父・小泉純一郎元首相と重なり合うものを感じた。首相時代に専門家から「原発は安全で、コストが安くて、クリーンなエネルギー」と聞いて原発推進政策を進めた純一郎氏だが、総理辞任後、福島原発事故を見て疑問を抱いて猛勉強、「頭のいい人にだまされていた」と気が付いて総理時代の過ちを正すべく、講演活動を本格化。全国各地で「原発は安全じゃない。クリーンでもない。金まみれの、金食い虫の環境汚染産業だ」と熱っぽく語りながら、脱原発(再生可能エネルギーへの転換)を訴え続けている。

講演の“定番ネタ”は、「論語」の「過ちては改むるに憚ることなかれ」の引用。だまされた過ちを告知して改めていく姿勢だが、この「やられたら(騙されたら)やり返す」という父の“戦闘的DNA”を息子が引き継いでいたようにみえたのだ。石炭火力関連の質問が集中した質疑応答でも、小泉氏は反対の根拠を次のように詳しく語っていった。

「『日本がお金を出して中国メーカーが取る』が本当にいいのでしょうか。私は適切だとは思いません」「国際社会からはこれだけ批判を浴びながら、こういった実態があることはどう考えても私はおかしい。日本の政策をよりよい脱炭素化に資する方向に変えていきたい」「(石炭火力の輸出4要件は)『価格の競争力』、『相手国のエネルギー政策のロックイン(脱炭素化の阻害)』、『他国との技術的な優位性低下』、『日本が誇る最先端の超々臨界以上』ということ。普通聞けば、日本の超々臨界の技術だと思いますよね。実態は違うわけです」

国内外の反対世論を受け止めた小泉大臣が、石炭火力推進派に“宣戦布告”をしたようにも聞こえた。父の小泉元首相が、安倍首相を含む原発推進派との対決姿勢を鮮明にしたのと同じように、である。

◆原発事故時の避難計画の実効性のなさについても発言

環境大臣に加えて原子力防災担当大臣も兼務する小泉氏からは、原発問題でも前向きの発言が飛び出した。質疑応答で、小泉氏が述べた「再生可能エネルギー主力電源化」が安倍政権の原発推進政策と矛盾することと原発事故時の避難計画の実効性のなさについて、筆者はこう質問した。

「現場で起こっていることは、送電線の枠が原発再稼働分で埋められて、再生可能エネルギー拡大の阻害要因になっている。こういう問題についても環境大臣として物を申していくのですか?

伊方原発の稼働停止に関連して、放射能汚染の被害を受ける『祝島』(山口県上関町)の方が、『朝日新聞』の記事なのですが、『避難する船が十分にない』と(コメントしています)。避難計画に実効性がないまま(原発が)稼働している現実について、原子力防災担当大臣としての権限もあるわけですから、それについても問題視していくのですか?」

小泉氏はこう答えた。

「環境省としては、まさに再生可能エネルギーを主力電源にしていく閣議決定を阻害する要因は一つでも多く突破をしていく省庁でありたいというふうに考えているので、まさに『隗より始めよ』で再生可能エネルギーの調達を100%していくことを、まずは今年新宿御苑から環境省自身が身をもって示していきたいと考えています」

「(二番目の避難計画について)私も昨年の原子力総合防災訓練で島根原発に関わるような地域の現状を現場で見ました。原子力防災担当大臣として最重要の役割の一つが、地域の皆さんと一緒になって避難計画作りをしっかりと進めていくことだと思います。こういった(伊方原発停止)判決はありましたが、常に、全国の中でまだこの避難計画作りができていない地域もありますので、しっかりとできあがるように継続して支援をしっかりとしていきたい」

◆原発政策でも問題提起していく可能性

環境省内の取り組みだけでなく、原子力ムラの本丸である経産省に異議申立をするのか否かが重要なので「経産省に物を申していくのでしょうか? 原発再稼働はおかしいのではないかということで」と再質問をすると、小泉氏からは「すでに経産省には自らの考えが伝わっている」と言わんばかりの回答が返ってきた。

「(経産省とは)さまざまなコミュニケーションは日ごろからやっているので、私の問題意識は重々承知の上だと思います」

避難計画についての回答も踏み込んだものだった。伊方原発差止仮処分の翌1月18日付の『朝日新聞』が紹介したのは、原発から南東40キロほどのところに位置する祝島の漁師・橋本久男氏の「舩を持っている島民は20人ほど。避難することになっても全員、無事に避難できる保証はない」という発言だった。

原発事故による放射能汚染被害を受ける地域(“被害地元”)の声を聞いていけば、ズサンな避難計画のまま原発が稼働している実態を目の当たりにするのは確実で、「実効性のある避難計画ができるまで原発の稼働は止めるべき」という結論に至ることは容易に想像できる。

石炭火力輸出と同様、原発政策でも問題提起することは十分に考えられるのだ。いつ小泉環境大臣兼原子力防災担当大臣が、「原発ゼロ実現」にプラスとなる具体的行動を始めるのか。今後の言動が注目される。

<文/横田一>

【横田一】

ジャーナリスト。小泉純一郎元首相の「原発ゼロ」に関する発言をまとめた『黙って寝てはいられない』(小泉純一郎/談、吉原毅/編)に編集協力。その他『検証・小池都政』(緑風出版)など著書多数