内閣府が発表した2019年10-12月期の国内総生産(GDP)速報値は、物価変動を除く実質で前期比1・6%減、年率換算で6・3%の大幅減になった。
昨年10月の消費増税や、台風19号で多くの店舗が休業を余儀なくされた負の効果が大きかった、という。
これには、中国発の新型コロナウイルスによる肺炎(COVID19)の影響は含まれていない。相次いだ中国人観光客の宿泊キャンセルや、対中輸出の減少、国内製造業の操業停止などを加えると、どれほどの悪影響が及ぶのか、想像もできないほどだ。20年1-3月期は、またマイナス成長になるのは確実だろう。
そうなったら「2四半期連続の前期比マイナス」という定義により景気後退である。
しかも、本当の試練はこれからやってくる。国内でも、未確認のまま無数の感染者が街に出ている、とみて間違いないが、関連ニュースが報じられるたびに、消費者心理は冷え込む。各種イベントも中止になるだろう。
最大の焦点は、東京五輪・パラリンピックである。
私は結局、「中止せざるを得ない」とみる。それは、横浜港に停泊したクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」の米国人乗客たちを帰国させるために、米国がチャーター機を派遣した件で実感した。カナダや香港、イタリア、オーストラリアなども後に続いた。
各国は「自国民の保護を日本に任せておけない」と判断したのだ。ずばり言えば、日本に対する「不信の表明」にほかならない。
それも無理はない。
クルーズ船では、検疫官や厚生労働省の職員、救急搬送した隊員、和歌山県の病院では、医師までが感染した。感染力の強さを物語るが、本来なら「あってはならない事態」である。他国には「日本の防疫、医療体制はそれほど甘かったのか」と映ったに違いない。私もあぜんとした。「これじゃ、中国並みじゃないか」と思われても仕方がない。
一連の事態は、米マスコミから批判的に報じられた。この先、「日本に東京五輪を開かせて大丈夫か?」となるのは、当然の成り行きである。クルーズ船対応で四苦八苦しているくらいだから、強引に開催して、もしも感染者が大量に出たら、収容先も十分に確保できないだろう。
一言で言えば、日本は危機感と対応が甘すぎるのだ。それは、最初に入国制限の対象を湖北省由来に絞った点や、感染症指定の発動が遅れた点に示されていた。
新型肺炎の感染拡大に加えて、東京五輪も中止となったら、日本経済への打撃は計り知れない。1970年代の石油ショックを上回る悲惨な状況に陥る可能性もあるだろう。
危機的状況は日を追うごとに深刻化しているのに、国会は何をしているのか。野党や左派マスコミは首相主催の「桜を見る会」に続いて、先週は東京高検検事長の定年延長問題も取り上げ始めた。
彼らが何を追及しようと勝手だが、いま国民が抱いている最大の心配事は新型肺炎問題である。それこそ与野党は集中審議し、政府の対応をただすべきではないのか。
■長谷川幸洋(はせがわ・ゆきひろ) ジャーナリスト。1953年、千葉県生まれ。慶大経済卒、ジョンズホプキンス大学大学院(SAIS)修了。政治や経済、外交・安全保障の問題について、独自情報に基づく解説に定評がある。政府の規制改革会議委員などの公職も務める。著書『日本国の正体 政治家・官僚・メディア-本当の権力者は誰か』(講談社)で山本七平賞受賞。最新刊に『明日の日本を予測する技術』(講談社+α新書)がある。